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【愛着理論】アタッチメント障害、ストレンジシチュエーション法

愛着理論&愛着障害 発達
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愛着理論と愛着障害(アタッチメント障害)

イギリスの精神科医であるジョン・ボウルビィ(J.Bowlby)が提唱した「愛着理論」について学んでいきましょう。

愛着は英語で「アタッチメント」と呼びます。

アタッチメントは「くっつく」という意味ですね。

以下のキーワードは全て覚えておきましょう。

愛着(アタッチメント):乳幼児と親との関係を中心とした情緒的な結びつき
内的ワーキングモデル:子供の内側に養育者のモデルが形成(愛着形成)

愛着障害(アタッチメント障害:AD)

【抑制タイプ】反応性愛着障害

反応性愛着障害は、誰にも愛着行動を示さず、素直に親に甘えたり頼ったりできません。

【脱抑制タイプ】脱抑制型対人交流障害

脱抑制対人交流障害は、誰にでも愛着行動を示す障害です。

初対面の人にも人見知りせずにべったり抱きつくなど、状況にそぐわないなれなれしい言動が特徴です。

脱抑制とは抑制が効かなくなった状態です。

DSM-5では「心的外傷・ストレス因関連障害群」に分類されています。

詳細は以下の記事で。

【愛着理論】虐待を受けた子供たちの反応性愛着障害とは?
イギリスの精神科医であるジョン・ボウルビィ(Bowlby,J.)が提唱した「愛着理論」を学びましょう。子どもが母親などの養育者に抱く「愛着」に関する理論です。そして、虐待を受けた子供たちの愛着障害という悲しい現実も。愛着とは「愛着」は英語で

愛着障害と発達障害の違い

例えば、多動という行動を示す子どもがいた場合、愛着障害(AD)なのか、自閉スペクトラム症(ASD)なのか、注意欠陥多動性障害(ADHD)なのかわかりません。

  AD(感情) ASD(認知) ADHD(行動)
多動 ムラがある 居場所感の欠如 常に
片付けができない 感情が育っていない 意義・納得次第 実行機能(衝動性)の問題
取り上げない、無視 無効果、逆効果 捉え方次第 効果あり
対人場面 場面の違いが顕著 認識次第 場面の違いが無い

ストレンジ・シチュエーション法

エインズワース(M.D.S.Ainsworth)は、ボウルビィの共同研究者の一人で、生後12~18か月の子どもの愛着の安定性を評価する実験室用の手続きとしてストレンジ・シチュエーション法を考案しました。

以下のように、部屋に子どもが入室し、母親と赤の他人が出たり入ったりして、子どもの反応を見ます。

ストレンジは「奇妙な」という意味です。

奇妙なシチュエーションを作って子どもの反応を見ます。

①子どもと母親が入室
②他人が入室
③母親が退出、他人が子どもに話しかける
④母親が戻り、他人が退出
⑤母親が退出、子どもが一人で残る
⑥他人が入室、子どもをあやす
⑦母親が入室、他人が退出
ストレンジシチュエーション法

評価方法

子どもの行動によって以下の4タイプに分けられます。

Aタイプ(回避型)

子どもは母親がいなくなっても泣いたりせず、母親が戻ってきてもよそよそしくしています。このタイプの母親は、子どもからの働きかけに対して拒否的に振る舞うことが多く、子どもに対し微笑んだり身体接触をすることが少なく子どもが苦痛を示した時には子どもをむしろ遠ざける傾向があります。

Bタイプ(安定型)

子どもは母親がいないと不安になり、母親が戻ってくると喜んだり泣いて寂しさを伝えるという自然な反応タイプです。このタイプの母親は子どもの欲求に敏感で、子どもに対し無理な働きかけをすることが少なく、遊びや身体接触を楽しみます。

Cタイプ(抵抗/アンビバレント型)

母親となかなか離れることができず、母親が戻ってきても喜びの感情だけでなく怒りの感情等を示すこともあります。このタイプの母親は自身の都合に合わせた関わりであることが多いため、子どもからの働きかけに対する反応が子どもの欲求とズレることがあります。

Dタイプ(無秩序・無方向型)

母親に対する態度に一貫性がなく、急に泣いたり怒ったり寂しさを伝えることがあります。このタイプの母親は抑うつ傾向が高く精神的に不安定で、子どもへの虐待がみられることもあります。

母親との密着度が小さい順に、Aタイプ(回避型)→Bタイプ(安定型)→Cタイプ(抵抗/アンビバレント型)→Dタイプ(無秩序・無方向型)というイメージで、安定型が理想的と考えて良いでしょう。

アンビバレントというのは「相反する感情や考え方を同時に心に抱いている」ということなので、アンビバレント型は最初から不安で親から離れることができず、近接と怒りや拒否が入り混じる行動をとります。

もともと無秩序・無方向型というのは無かったのですが、A、B、Cのいずれにも属さない型があるということで、虐待家庭などに多い型です。

過去問

第4回 問48 

ストレンジ・シチュエーション法におけるアタッチメントの類型の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 回避型は、養育者との分離場面で激しく泣きやすい。
② 安定型は、養育者との分離場面で泣きの表出が少ない。
③ 無秩序・無方向型は、養育者との再会場面で激しく泣きやすい。
④ アンビバレント型は、養育者との再会場面でしばしば激しい怒りを表出することがある。

① 回避型は、養育者との分離場面で激しく泣きやすい。
誤りです。回避型は分離場面で泣きません。

② 安定型は、養育者との分離場面で泣きの表出が少ない。
誤りです。これは回避型に近いです。

③ 無秩序・無方向型は、養育者との再会場面で激しく泣きやすい。
誤りです。これは安定型とアンビバレント型に見られがちな反応です。
無秩序・無方向型は、再会場面で激しく泣きやすいというような一定の傾向がありません。

④ アンビバレント型は、養育者との再会場面でしばしば激しい怒りを表出することがある。
これが正解です。

第1回 問90

ストレンジ・シチュエーション法によるアタッチメントのタイプ分類( A:回避型、B:安定型、C:抵抗/アンビバレント型、D:無秩序・無方向型 )について、最も適切なものを1つ選べ。
① Aタイプの養育者は、子どもに対して虐待など不適切な関わりをしていることが多い。
② AタイプとCタイプの子どもは、再会場面で感情が元どおりに回復せずに、怒りの感情を表すことがある。
③ BタイプとCタイプの子どもは、分離場面で強く泣くなどの苦痛を表出する。
④ Cタイプの養育者は、子どもに対して拒絶的にふるまうことが多い。
⑤ Dタイプの養育者は、子どものシグナルに養育者自身の都合で応答するなど一貫性を欠く傾向がある。

① Aタイプの養育者は、子どもに対して虐待など不適切な関わりをしていることが多い。
誤りです。虐待を受けた場合はDタイプです。

② AタイプとCタイプの子どもは、再会場面で感情が元どおりに回復せずに、怒りの感情を表すことがある。
誤りです。Aタイプの子どもは再会場面でもよそよそしく、Cタイプの子どもは怒りの感情を表すことがあります。

③ BタイプとCタイプの子どもは、分離場面で強く泣くなどの苦痛を表出する。
これが正解です。

④ Cタイプの養育者は、子どもに対して拒絶的にふるまうことが多い。
誤りです。子どもに対して拒絶的にふるまうのはAタイプです。

⑤ Dタイプの養育者は、子どものシグナルに養育者自身の都合で応答するなど一貫性を欠く傾向がある。
誤りです。養育者自身の都合で応答するのはCタイプ(またはAタイプ)です。

第1回 問110

反応性アタッチメント障害について、誤っているものを1つ選べ。
① 認知と言語の発達は正常である。
② 乳幼児期のマルトリートメントと関係が深い。
③ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害<ASD>と症状が一部類似する。
④ 常に自分で自分を守る態勢をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。
⑤ 養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効である。

認知と言語の発達は正常である。
間違いです。DSM−5の診断基準には「認知及び言語の遅れとともに現れる」とあります。

② 乳幼児期のマルトリートメントと関係が深い。
正しいです。マルトリートメントとは「不適切な関わりや教育」です。

自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害<ASD>と症状が一部類似する。
正しいです。

常に自分で自分を守る態勢をとらざるを得ないため、ささいなことで興奮しやすい。
正しいです。

⑤ 養育者が微笑みかける、撫でるなど、それまで欠けていた情動体験を補うような関わりが心理療法として有効である。
正しいです。

第5回 問138

7歳の女児A、小学1年生。両親による身体的虐待やネグレクトにより4歳から児童養護施設で生活している。Aは、学業成績に問題はなく、質問への返答も的確である。その一方で、施設入所以来、笑うことがなく、苦痛や不平を一切訴えることがない。また、他人と交流せず孤立しており、Aはそれを苦痛に感じていないようであった。ある日、Aが学校で継続的ないじめを受けていることが発覚した。加害児童は、「Aは話しかけても無視するし、全然笑ってくれない」と話した。施設の担当職員に対しては入所時よりも若干柔らかい表情を示すようになってきている。DSM-5の診断基準から考えられるAの病態として、最も適切なものを1つ選べ。
① 脱抑制型対人交流障害
② 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
③ 反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
④ 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)
⑤ 小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)

選択肢③が正解です。

第3回 問76  

5歳の男児A。
Aは、実父からの身体的虐待が理由で、1か月前に児童養護施設に入所した。
Aは、担当スタッフの勧めで同施設内に勤務する公認心理師 B の面談に訪れた。
担当スタッフによると、Aは、入所時から衝動性・攻撃性ともに高かった。
施設内では、コップの水を他児Cにかけたり、他児Dを椅子で殴ろうとしたりするなど、Aの暴力が問題となっていた。また寝つきが悪く、食欲にむらが見られた。
Bとの面談でAは暴力の理由を「いつも僕が使っているコップを C が勝手に使ったから」「Dが僕の手首を急に掴んだから」と語った。
また、「夜眠れない」と訴えた。Bが初期に行う支援として、適切なものを2つ選べ。
① 遊戯療法を速やかに導入し、A に心的外傷体験への直面化を促す。
② 受容的態度でAの暴力を受け入れるよう、担当スタッフに助言する。
③ コップ等の食器は共用であるというルールを指導するよう、担当スタッフに助言する。
④ Aの様子を観察し、Aが安心して眠れる方法を工夫するよう、担当スタッフに助言する。
⑤ 衝動性や攻撃性が高まる契機となる刺激ができるだけ生じないように、担当スタッフと生活環境の調整を検討する。

事例では、反応性アタッチメント障害により攻撃性が表出されているように読めます。
選択肢④と⑤が正解です。

第5回 問137

20歳の女性A、大学2年生。1か月前から男性Bと交際している。AはBが誰か別の人物と一緒に食事をしたり、自分が知らないうちに出かけた話を聞いたりすると不安が高まり、Bの行動に疑念を抱くという。AはBの行動を常に確認しないと安心できず、Bがソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿する内容を常に確認し、Bの携帯端末の画面に表示される通知を頻繁にのぞき込んでしまう。そのことでAとBは言い争いをし、関係が悪化する状態が繰り返されている。Aの状態として、最も適切なものを1つ選べ。
① 感情の誤帰属
② 恋愛の色彩理論におけるアガベ型
③ 愛の三角理論におけるコミットメント
④ とらわれ型のアタッチメント・スタイル
⑤ 同一性地位(アイデンティティ・ステータス)理論における早期完了

選択肢④が正解です。

次の記事

次は、道徳性の発達理論です。

ピアジェも再登場します。

【道徳心の発達理論】ピアジェ、コールバーグ、セルマン
他律的道徳&自律的道徳 by ピアジェピアジェ(J.Piaget)は、発達の4段階を示しましたが、道徳心にも発達段階があるとし、8~10歳前後に「他律的道徳」の段階から「自律的道徳」の段階に移行すると考えました。他律的道徳...

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