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【研究倫理】要求特性、ディセプション、デブリーフィング

研究倫理 心理統計学
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心理学実験を行うに当たって、注意すべき研究倫理を見ていきましょう。

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個人情報保護

公認心理師法第41条には、秘密保持義務が規定されています。

心理学研究においても重要です。

多重関係

心理学実験において、実験者と被験者は、「実験者と被験者」という関係以外に、「個人と友人」とか「夫と妻」などのような別の関係性はあってはなりません。

つまり「多重関係」は禁止されています。

多重関係があると、客観的な実験ができませんから。

インフォームドコンセント

インフォームドコンセントは手術や治療など医療現場で用いられますが、心理学実験においても実験者が被験者に説明し被験者がそれを十分に理解し合意するプロセスとして重要です。

説明する内容は、実験の目的や方法、被験者として選ばれた理由、被験者としての謝礼、研究結果の公表方法などです。

自発性が保証された状況下で、対象者からインフォームドコンセントを取得することが必要です。

要求特性&ディセプション

心理実験において、被験者が実験者の望む姿になろうとすることを「要求特性」と言います。

被験者は通常、社会的に望ましい自分、実験者にとって望ましい自分を演じる傾向があります。

要求特性は、実験者が真実をありのままに見ることを妨げ、実験者が望む通りの現実を都合よく出現させる原因となってしまうので、好ましくありません。多重関係ならなおさらです。

要求特性を強める要因の1つに「研究目的を伝える」ことが挙げられます。

伝えてしまうと、被験者は実験者の望むようにふるまおうとする傾向が強くなってしまいます。

被験者が「要求特性」を強めないように、被験者に偽りの仮説や目的を告げることを「ディセプション」と言います。

ディセプション(deception)とは、「偽り騙す」という意味ですね。

デブリーフィング

実験のためとはいえ、ディセプションによって被験者にウソをついて騙すことは研究倫理的にOKなのでしょうか。

ということで、実験が終了した後に種明かしをして被験者に生じた疑念やストレスを取り除く研究倫理上の行為を「デブリーフィング」と言います。

デブリーフィングは研究倫理上、最低限の行為ですが、それでもウソをつくことが全く問題ないというわけではありません。

デブリーフィングと言えば、災害などつらい経験をした後でそれについて詳しく話し、つらさを克服する手法として覚えましたね。こちらは心理的デブリーフィングですね。

まとめ

上で見てきたように、実験では実験者の恣意的、意図的操作が入ることを避けなければなりません。

そのようなバイアスには以下のようなものがあります。

・選択バイアス:母集団から対象を選ぶときと,実験的研究であれば群を割り付けるときに生じる
・情報バイアス:調査や測定によってデータを収集するときに生じる
・交絡バイアス:原因と結果を検証する際に、その背後に隠れて存在する交絡因子が存在すること

選択バイアス

実験のグループ(群)分けは無作為に行わなければなりません。

そのための方法として単純法や置換ブロック法があります。

情報バイアス

情報バイアスを少なくするためには、被験者、実験者、評価者に研究の情報を伏せる盲検法(ブラインディング)という手法があります。

一重盲検:被験者だけに伏せる
二重盲検:被験者と実験者に伏せる
三重盲検:被験者と実験者と評価者に伏せる
四重盲検:被験者と実験者と評価者と解析者に伏せる

これがディセプションですね。

過去問

第1回(追試)問119

心理学実験について、正しいものを1つ選べ。
① 行動に及ぼす要因を明らかにするために実験者が操作する変数を独立変数という。
② 剰余変数を統制するために、複数の実験者が入れ替わり実験を実施することが望ましい。
③ 実験者の期待や願望が意図せずして振る舞いに表れ、参加者に対して影響を及ぼすことをホーソン効果という。
④ 測定値が最大値に達することにより、説明変数の効果を検出する上で問題が生じることをキャリーオーバー効果という。

① 行動に及ぼす要因を明らかにするために実験者が操作する変数を独立変数という。
正しいです。独立変数&従属変数はしっかり押さえておきましょう。

② 剰余変数を統制するために、複数の実験者が入れ替わり実験を実施することが望ましい。
間違いです。本来であれば剰余変数の影響は限りなく小さくしたいわけで、その目的のためには複数の実験者が入れ替わり立ち代わり実験をしていてはいけません。

③ 実験者の期待や願望が意図せずして振る舞いに表れ、参加者に対して影響を及ぼすことをホーソン効果という。
間違いです。これは「要求特性」の説明です。

④ 測定値が最大値に達することにより、説明変数の効果を検出する上で問題が生じることをキャリーオーバー効果という。
間違いです。これは「天井効果」の説明です。

第1回 問81

研究の目的を偽って実験を行い、実験の終了後に本来の目的を説明することによって、実験の参加者に生じた疑念やストレスを取り除く研究倫理上の行為として、正しいものを1つ選べ。
① 個人情報保護
② ディセプション
③ フィードバック
④ デブリーフィング
⑤ インフォームド・コンセント

設問の「研究の目的を偽って実験を行い」というのは、選択肢②「ディセプション」に該当しますが、実験の参加者に生じた疑念やストレスを取り除く研究倫理上の行為となると、選択肢④「デブリーフィング」となります。

第5回 問116

心理的な支援を行う際のインフォームド・コンセントの説明として、不適切なものを1つ選べ。
① リスクの説明を含む。
② 支援の経過に応じて常に行われる。
③ 他の可能な支援方法の提示は控える。
④ 文書だけではなく、口頭のみによる説明もある。
⑤ クライエントだけではなく、代諾者に対しても行われる。

選択肢③が不適切です。

第4回 問125

人を対象とした心理学研究の倫理に関する説明として 最も適切なものを1つ選べ。
① 効率的に研究を進めるために、協力が得られやすい知人を、研究対象にする。
② 自発性が保証された状況下で、対象者からインフォームドコンセントを取得することが求められる。
③ 研究計画の立案や、研究費の獲得、研究の実行など、個人で複数の役割を担う多重関係は回避すべきである。
④ 研究過程で収集した対象者の情報は、データの捏造ではないことの証明として、研究終了後に全て公表する。

① 効率的に研究を進めるために、協力が得られやすい知人を、研究対象にする。
間違いです。知人を研究対象にしてしまうと、「研究者-被験者」という関係に加えて「個人-知人」という多重関係になってしまい、研究倫理に反します。

② 自発性が保証された状況下で、対象者からインフォームドコンセントを取得することが求められる。
これが正解です。当然です。

③ 研究計画の立案や、研究費の獲得、研究の実行など、個人で複数の役割を担う多重関係は回避すべきである。
間違いです。個人で複数の役割を担うことを多重関係というのではありません。
また、個人で複数の役割を担っても構いません。

④ 研究過程で収集した対象者の情報は、データの捏造ではないことの証明として、研究終了後に全て公表する。
間違いです。データの捏造ではないことの証明に研究対象者の情報を公表するというのはありえません。

第3回 問109

公認心理師の対応として、不適切なものを1つ選べ。
① 親友に頼まれて、その妹の心理療法を開始した。
② カウンセリング中のクライエントに自傷他害のおそれが出現したため、家族に伝えた。
③ 治験審査委員会が承認した第Ⅲ相試験で心理検査を担当し、製薬会社から報酬を得た。
④ カウンセリング終結前に転勤が決まり、クライエントへの配慮をしながら、別の担当者を紹介した。
⑤ 1年前から家庭内暴力(DV)を受けているクライエントの裁判に出廷し、クライエントの同意を得た相談内容を開示した。

① 親友に頼まれて、その妹の心理療法を開始した。
不適切です。これは多重関係になります。

② カウンセリング中のクライエントに自傷他害のおそれが出現したため、家族に伝えた。
適切です。

③ 治験審査委員会が承認した第Ⅲ相試験で心理検査を担当し、製薬会社から報酬を得た。
適切です。
第Ⅰ相試験:少人数に対して薬の安全性を評価
第Ⅱ相試験:少人数に対して薬の有効性、安全性、使い方を評価
第Ⅲ相試験:多数の患者を対象に薬の有効性、安全性、使い方を最終確認

④ カウンセリング終結前に転勤が決まり、クライエントへの配慮をしながら、別の担当者を紹介した。
適切です。

⑤ 1年前から家庭内暴力(DV)を受けているクライエントの裁判に出廷し、クライエントの同意を得た相談内容を開示した。
適切です。

第4回 問63

公認心理師Aが出演者である学会発表において、 実験結果の報告のためのスライドを準備している。
実験の 背景、目的、結果、考察などをまとめた。
Aは他者の先行研究で示された実験結果 の一部を参考論文から抜き出し、出所を明らかにすることなく自分のデータとして図を含めてスライドに記述した。
このまま発表する場合、該当する不正行為を1つ選べ。
① 盗用
② 改ざん
③ ねつ造
④ 多重投稿
⑤ 利益相反

選択肢①が正解です。他者のデータを盗用して自分のデータとして使っています。

第1回(追試)問108

心理的支援活動を概念化、理論化し、体系立てていくために必要となる公認心理師の姿勢として、最も適切なものを1つ選べ。
① 実際のデータよりも、予想と仮説を重視する。
② 想定される結論に合致するようなデータを収集する。
③ 自らが立脚する支援理論と整合するデータを基に理論化する。
④ クライエントの支援に有用でなければ、理論を修正することを検討する。
⑤ 支援の事実を記述する場合は、クライエントの発話に限定して詳細に記載する。

選択肢④が正解です。理論よりもクライエントへの有用性です。

次の記事

ここまでで、心理検査、心理療法、心理統計学という難しい内容が終了しました。

次は、公認心理師を含む専門職について見ていきましょう。

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