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【犯罪心理学】逸脱行動論(非行理論)

逸脱行動論 司法&犯罪
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人はなぜ罪を犯すのでしょう。

それを解き明かす、様々な理論を見ていきましょう。

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社会的緊張理論

社会的緊張理論は、社会の内部に心理的な緊張をもたらすような圧力が存在し、これが人々の犯罪や非行に走らせるように動機づけていると考える理論です。

アノミー論 by マートン

社会的緊張理論の代表はマートン(R.K.Merton)のアノミー理論です。

アノミーとは「社会的規範の弛緩や崩壊によって生じる混沌状態」のことで、そのような状態が圧力を生み、逸脱行動を起こさせていると考えます。

非行下位文化理論 by コーエン

コーエン(A.K.Cohen)が提唱した非行下位文化理論では、ある文化の中の下位文化(小集団)で生活している者は非行を起こしやすいとする理論です。

文化学習理論

分化的接触理論 by サザーランド

サザーランド(E.H.Sutherland)が提唱した分化的接触理論は、犯罪文化との接触によって犯罪に手を染めてしまうとする理論です。

所属する集団や社会で、犯罪や逸脱行動と接触する機会が多いと、犯罪に手を染めやすいということです。

先ほどの非行下位文化理論のように下位文化で生活している人に限らず、企業の経営者など高い地位がある人も職務上の地位を利用して横領・背任、脱税、贈収賄、インサイダー取引などの犯罪を犯します。

このような犯罪をサザーランドは「ホワイトカラー犯罪」と呼んでいます。

文化的接触理論ではなく分化的接触理論です。「分化」というのは接触する人間関係が人によって異なることを指しています。これによってホワイトカラー犯罪も説明できます。

文化葛藤理論 by セリン

セリン(T.Sellin)は、文化の葛藤が犯罪を生み出すと考えました。

人は第一次集団(家族や近隣集団など)や第二次集団(仕事の関係など)と触れ合い、優先的な規範と他の規範とが相反するとき、そこに葛藤が生じ犯罪の原因になると考えます。

社会的統制理論

これまでの理論は「なぜ非行や犯罪をおこすのか」から出発しましたが、社会的統制理論では「なぜ非行や犯罪をおこさないのか」という問題設定から出発しています。

人間は本来欲望のままに行動する存在なので、人間が罪を犯さないのは心理的な抑制や社会的統制がそれを抑止しているからで、その抑止が弱まったとき、犯罪や非行が生じると考えます。

社会的絆理論 by ハーシ

社会的絆理論は、ハーシ(T.Hirschi)が提唱した「人が犯罪をしないのは社会との絆があるからで、その絆が弱まったときや壊れたときに逸脱した行動が起きる」とする理論です。

ハーシによれば、個人と社会とを結ぶ絆があり、これが弱められ断ち切られた場合に非行が生じるとしています。

この社会的絆には、家族や学校および友人などに対する「愛着」、クラブ活動や勉強などの合法的活動への「コミットメント」、合法的な成功をめざして行う進学などへの「インボルブメント(関与)」、ルールや規範などへの尊敬である「信念」などがあります。

このようなインフォーマルな絆によって社会が統制されているというメカニズムです。

漂流理論(ドリフト理論) by マッツァ

マッツァ(D.Matza)は、少年たちが必然的に成人犯罪者になると考えることに批判的で、非行少年の多くが朝から晩まで非行行動をしているわけでなく、ほとんどの時間は遵法的な行動をとり、ある年齢になると特に外部から強制されなくとも非行から引退することなどから、非行状態は一種の通過儀礼として遵法と違法の境界を漂流していると捉えるべきだと考えました。

この漂流理論の基礎となっているのは、「中和の技術」です。

これによると、非行少年は、①責任の否定、②損害の否定、③被害者の否定、④非難者への非難、⑤より高度な忠誠心への訴え、という5つの技術を用いて、非行へ向かったことを正当化しようとします。

漂流理論においては、これらの技術によって非行の事実を中和することで、合法的な文化に戻ることが可能となると捉えられます。

漂流理論では、非行少年の「自由意思において犯罪・非行を行っている」と捉えるので、その点で社会的緊張理論や文化学習理論への反論として受け入れられました。

ラベリング理論

ラベリング理論は、社会集団が「これを犯せば逸脱となるような規則」を設け、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサイダーのレッテルを張る事で逸脱を生み出します。

つまり、逸脱が先にあるのではなく、レッテル貼りが逸脱を生み出すと考えます。

詳しくは以下の記事で。

【逸脱行動論】アノミー理論、社会統制論、文化学習理論、ラベリング理論、コンフリクト理論
人はなぜ罪を犯すのか、なぜ反社会的行為を行うのか、このような逸脱行動の原因を考察する逸脱行動論は、その理由によってさまざまな理論があります。「行動」と「行為」の違いは、「ウェーバーの4つの社会的行為」で説明しました。今回は「行動」のなかでも

過去問

第3回 問141 

16歳の男子A、高校1年生。
Aは、友達と一緒に原動機付自転車の無免許運転をしていたところを逮捕され、これを契機に、教師に勧められ、スクールカウンセラーBのもとを訪れた。
Aには非行前歴はなく、無免許運転についてしきりに「友達に誘われたからやった」「みんなやっている」「誰にも迷惑をかけていない」などと言い訳をした。
Bは、Aの非行性は進んでいるものではなく、善悪の区別もついているが、口実を見つけることで非行への抵抗を弱くしていると理解した。
BがAの非行を理解するのに適合する非行理論として、最も適切なものを1つ選べ。
① A.K.Cohen の非行下位文化理論
② D.Matza の漂流理論
③ E.H.Sutherland の分化的接触理論
④ T.Hirschi の社会的絆理論
⑤ T.Sellin の文化葛藤理論

選択肢②が正解です。

第2回 問98

非行の要因に関するT.Hirschiの社会的絆理論について、正しいものを1つ選べ。
① 個人に対する社会的絆が弱くなったときに非行が発生すると考える。
② 親による子どもの直接的統制は、社会的絆の重要な源泉の1つである。
③ 社会的絆理論の基本的な問いは、「なぜ人は逸脱行動をするのか」である。
④ 友人への愛着が強い少年が、より非行を起こしやすいと考えられている。
⑤ 社会的絆の1つであるコミットメントとは、既存の社会的枠組みに沿った価値や目標達成に関わる度合いを意味する。

① 個人に対する社会的絆が弱くなったときに非行が発生すると考える。
誤りです。社会に対する個人の絆が弱くなったり失われる時に非行が発生すると考えます。

② 親による子どもの直接的統制は、社会的絆の重要な源泉の1つである。
誤りです。親による統制ではなく親子の親しい関係が重要です。

③ 社会的絆理論の基本的な問いは、「なぜ人は逸脱行動をするのか」である。
誤りです。「なぜ人が逸脱行動をしないのか」です。

④ 友人への愛着が強い少年が、より非行を起こしやすいと考えられている。
誤りです。友人への愛着が強い少年は、非行を起こしにくいです。

⑤ 社会的絆の1つであるコミットメントとは、既存の社会的枠組みに沿った価値や目標達成に関わる度合いを意味する。
正しいです。絆の要素として、コミットメント、インボルブメント、愛着、規範観念があります。

第5回 問71

15歳の男子A、中学3年生。Aは、推薦で高校に進学が決まってから、友人Bとよく遊んでいた。ある日、Bがゲームセンター内の窃盗で逮捕された。Aは直前までBと一緒にいたが、警察で共犯ではないと認められた。動揺していたAは教師の勧めで、スクールカウンセラーCに話を聴いてもらった。AはCに、「その日は、Bが置きっぱなしの財布を見つけ、盗んで遊ぼうと誘ってきた。迷ったが、そうすれば進学できなくなり、親にも迷惑をかけると思い、Bにやめた方がいいと言って帰宅した」と述べた。Bの非行にAが加担しなかった理由を理解する上で、適合する非行理論として、最も適切なものを1つ選べ。
① A.K.Cohen の非行下位文化理論
② E.H.Sutherland の文化的接触理論
③ H.S.Becker のラベリング理論
④ R.K.Merton の緊張理論
⑤ T.Hirschi の社会的絆理論

選択肢⑤が正解です。この社会的絆には、家族や学校および友人などに対する「愛着」があり、この絆によって逸脱しないとする理論です。事例では「親にも迷惑をかけると思い」と非行をしなかった理由を語っています。

次の記事

いろいろと逸脱行動論を見てきましたが、これらを心理学的観点からまとめようとした「RNRモデル」を見てみましょう。

【犯罪心理学】RNRモデル vs GLモデル
RNRモデルカナダの犯罪心理学者であるアンドリューズ(D.A.Andrews) とボンタ(J.Bonta)らが提唱したRNRモデル(Risk-Need Responsivity model)は、再犯防止や社会復帰支援のためのアセス...

コメント

  1. 岩井 より:

    いつも勉強させていただいています。

    見出しの
    「文化的接触理論 by サザーランド」ですが、
    「分化的」の変換ミスではないでしょうか?
    本文では「分化的接触理論」となっています。

    • カリスマ社会福祉士 より:

      ありがとうございます!
      文化的接触理論でした。
      失礼いたしましたm(_ _)m

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