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【犯罪心理学】RNRモデル vs GLモデル

RNRモデル 司法&犯罪
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RNRモデル

カナダの犯罪心理学者であるアンドリューズ(D.A.Andrews) とボンタ(J.Bonta)らが提唱したRNRモデル(Risk-Need Responsivity model)は、再犯防止や社会復帰支援のためのアセスメントや処遇についての理論です。

アンドリューズらは1980年代から伝統的犯罪学諸理論(社会的緊張理論、下位文化理論、ラベリング理論、社会的統制理論、分化接触理論など)を、心理学的観点から整理しなおしました。

そして、以下の3原則を基盤とするRNRモデルを提唱しました。

<中核3原則>
R:Risk(リスク)
N:Need(ニーズ)
R:Responsivity(応答)

中核3原則:リスク原則

リスク原則とは、対象者の再犯リスク水準に対応した介入密度(時間・頻度・内容)の処遇を実施すると最も再犯防止効果が上がるという、リスク水準と処遇水準とのマッチング最適化の原則です。

再犯リスクが高いと思われる対象者には広範で厳密な処遇が必要で、再犯リスクが低いと思われる対象者には必要最低限の介入が適切とする考え方で、つまり「処遇の密度は再犯リスクの高い者に集中させなければならない」ということです。

当たり前のことを言ってますね。

中核3原則:ニーズ原則

ニーズ原則は、対象者の持つニーズのうち、非行・犯罪誘発に関連性の高いニーズに優先づけた処遇計画の策定・実施が再犯抑止効果を高めるという原則です。

犯罪者は多くの再犯危険要因を持っていますが、それは「犯罪誘発要因」と「非犯罪誘発要因」に分けることができます。

犯罪誘発要因は、例えば「犯罪歴」「犯罪許容的(促進的)態度」「反社会的パーソナリティパターン」「家庭、学業、仕事上の問題」などです。

非犯罪誘発要因は、例えば「自尊心の低さ」「重度の精神疾患」「被害経験」などです。

そして、このニーズ原則に従うと、処遇は犯罪誘発要因に限定して行われなければならないとなります。

中核3原則:応答性原則

応答性原則は、処遇は学習者の特性に最も響く指導法を勘案して実施すると最も効果が上がるという「適性処遇交互作用」の考え方に基づく原則です。

つまり、対象者の特性や学習スタイルに合わせた処遇課題を与えることが重要ということです。

この処遇では認知行動療法が重視されているため「処遇は認知行動療法を中心にその者の応答性を高めるようになされなければならない」ということになっています。

GLモデル

RNRモデルはリスク管理中心で、本人の動機付けや協力を引き出すことが難しいという批判から生まれた理論として、ウォード(T.Ward)らが提唱したGLモデル(Good Lives model)があります。

性犯罪者の処遇がリスクマネジメントに集中し過ぎていることに対するアンチテーゼとして提案され、犯罪者の立ち直りへの動機付けを高めるモデルになっています。

内発的動機づけを高めるために「接近目標」を重視します。

接近目標:実現したいと思うようなポジティブな目標
回避目標:回避したいと思うようなネガティブな目標

このモデルは、人間は生まれながらに何らかの「よさ」(primary human goods)を追求し、犯罪行為はそれを不適切な手段で得ようとした結果である考えます。

人間の尊厳や権利を重視し、ポジティブ心理学的アプローチをとっています。

人間が生きる上で必要なものを「一次的財」、そして一次的財を得るための具体的な手段を「二次的財」と定義します。

一次的財 二次的財
生活:生きることと生き残ること(健康的な生活と機能,基本的ニーズ) 収入を得て基本的なニーズを満たすこと,体を動かすこと,健康に関係する滋養を取ること,健康管理すること,体がちゃんと機能すること
知識:学ぶことと知ること
(知識欲及び自分自身の世界について堪能すること)
学校,研修,職業訓練コースに通うこと,自己学習すること,非公式な活動に従事すること,治療に加わること,自己援助活動に従事すること
遊びや仕事での卓越した技能(仕事やレジャーを習得する) スポーツをすること,他のレジャー/レクリエーション活動に加わること,趣味に従事すること,研修を受けること, 資格を得ること,実習に参加すること
行為主体性
(個人的な選択を自由)
特定の目標を達成するための計画を実行すること,自立できるための活動に従事すること,自分のニーズを他者に伝えること
心の安らぎ
(感情統制)
感情的な苦痛を最小限にする/心の平穏を得ること,特定の活動(身体運動や瞑想)に従事すること
関係性と友情
(親密な関係,愛情関係,家族関係)
新しい人と出会うことや人との関係を維持することを促すような社会的な活動やそれ以外の活動に従事すること
共同体意識
(集団の一部であること)
地域の活動に参加すること,ボランティア活動に従事すること
精神性
(人生に意味を持つこと)
宗教的,精神的行事に公的に参加すること
幸福
(人生において満足した経験である状態)
楽しい活動に従事すること(レジャー活動,スポーツ,セックス)
創造性
(目新しさや革新を求めること)
これまで試みたことがないような,新しい斬新な経験をすること,学術的で創造的な活動に従事すること

過去問

第1回(追試)問22

D.A.Andrews と J.Bonta が主張するRNRモデル(Risk-Need Responsivity model)の内容について、正しいものを1つ選べ。
① 予後評定の際には犯罪歴や処分歴は考慮しない。
② 予後評定の精度は伝統的な非構造的臨床判断より低い。
③ 犯罪を支える態度が変容すれば、再犯リスクは低減する。
④ ニーズ原則は対象者の能力や学習スタイルに適した処遇課題を与えることである。
⑤ 再犯リスクを低減させることに限定せず、良い人生を送ることを目標に掲げている。

① 予後評定の際には犯罪歴や処分歴は考慮しない。
誤りです。犯罪歴や処分歴は犯罪誘発要因として予後評定で重要な因子です。

② 予後評定の精度は伝統的な非構造的臨床判断より低い。
誤りです。予後評定の精度は高いです。

③ 犯罪を支える態度が変容すれば、再犯リスクは低減する。
正しいです。「犯罪を支える態度」とは犯罪誘発要因の1つ「犯罪許容的態度」なので、これが変容すれば再犯リスクは低減します。

④ ニーズ原則は対象者の能力や学習スタイルに適した処遇課題を与えることである。
誤りです。これはニーズ原則ではなく「応答性原則」です。

⑤ 再犯リスクを低減させることに限定せず、良い人生を送ることを目標に掲げている。
誤りです。RNRモデルではこの選択肢の内容ではないことが批判されており、ウォード(T.Ward)らがGLモデル(Good Lives model)を提唱しています。

第5回 問42

T.Wardらが提唱したグッド・ライブス・モデル(Good Lives Model)について、不適切なものを1つ選べ。
① クライエントにとっての接近目標と自己管理を重視している。
② 性犯罪者のリラプス・プリベンション・モデルに基づいたモデルである。
③ 人間の尊厳や権利を重視し、ポジティブ心理学的アプローチをとっている。
④ クライエントを社会の中に包摂し、その立ち直りへの動機づけを高めるものである。
⑤ 一次的財(primary goods)とは人間が生きる上で必要なもので、行為主体性、友情など11の項目が挙げられている。

選択肢②が誤りです。GLモデルでは性犯罪者の処遇がリスクマネジメントに集中し過ぎていることに対するアンチテーゼとして提案されました。

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