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【心理学の歴史】3大勢力(精神分析学、行動主義心理学、人間性心理学)

【心理学の歴史】三大勢力 心理学
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心理学の三大潮流を学んだら、次は三大勢力です。

そして第三の勢力である「人間性心理学」について詳しく学びましょう。

心理学の三大勢力
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心理学の3大勢力

心理学の3大潮流から生まれた精神分析学と行動主義心理学、これが1960年代には心理学の2大勢力となってきます。

そしてこの時代に第3の勢力として「人間性心理学」が生まれます。

この呼び方は、人間性心理学の代表者マズローの呼び方です。ヴントの要素主義から分離する3大潮流とは区別してください。

人間が無意識に支配されているとする精神分析や、外的環境に支配されているとする行動主義に対して、人間を自由意思のもつ主体的な存在として捉える立場が人間性心理学です。

人間性心理学

コーチン(S.J.Korchin)は人間性心理学の基本的特徴を以下のように述べています。

・人間を全体的に理解する
・人間の直接的経験を重視する
・研究者もその場に共感的に関与する
・個人の独自性を中心におく
・過去や環境より価値や未来を重視する
・人間独自の特質、選択性、創造性、価値判断、自己実現を重視する
・人間の健康的で積極的な側面を強調する

人間性心理学は「人間は主体的に決断し、自らの生き方を決めていく存在である」と捉え、人間の健康的で積極的な側面を強調します。

主な人物を見ていきましょう。

アブラハム・ハロルド・マズロー「欲求階層説」

マズロー(A.H.Maslow)は、生理的欲求、安全欲求、所属と愛の欲求、承認欲求という4つの「欠乏動機」だけでなく、自己実現の欲求という「成長動機」があると人間性心理学では考えます。

この自己実現の欲求という成長動機は、下位の欲求である欠乏動機が満たされてから、という意味で、5段階の階層に図式化されています。

マズローの欲求階層説

まずは、食欲などの「生理的欲求」、次に安全や健康や財産を求める「安全欲求」、そして帰属や愛を求める「所属と愛の欲求」、それから、自尊心(セルフエスティーム)や自信(セルフエフィカシー)を求める「承認欲求」、これら欠乏動機(欠乏していることによる動機)が満たされて、最上位の「自己実現の欲求」という成長動機が生まれます。

このような自己実現に向かっていくための欲求を段階的に表したものが、マズローの欲求の階層説として知られています。

カール・ロジャーズ「クライエント中心療法」

ロジャーズ(C.R.Rogers)はニューヨーク州の児童虐待防止協会に就職し、非行少年や恵まれない環境の子ども達のカウンセリングに携わる中で「クライエント中心療法」と呼ばれるカウンセリング理論を打ち出しました。

ロジャーズは1942年に出版した著作「カウンセリングと心理療法:実践のための新しい概念」において「クライエント中心」という表現をもって非指示的な療法観を明確に著しました。

この「クライエント中心」の非指示的療法が今日の「クライエント中心療法」です。
1957年に発表された論文「セラピーによるパーソナリティ変化の必要にして十分な条件」に以下の6条件が示されています。

<非指示的療法6つの条件>
・2人の人間が心理的な接触を持っていること
・第1の人(クライエント)は不一致の状態、傷つきやすい状態、または不安な状態にあること
・第2の人(セラピスト)はその関係の中で一致している状態、統合している状態であること
・セラピストはクライエントに対して無条件の肯定的配慮を経験していること
・セラピストはクライエントの内的照合枠を共感的に理解しており、その経験をクライエントに伝えようと務めていること
・共感的理解と無条件の肯定的配慮が、最低限クライエントに伝わっていること。

キーワードは「共感的理解」と「無条件の肯定的配慮」で、それらはクライエントに伝わっている必要があります。

共感的理解というのは相手の立場に立って物事を見ることですね。

無条件の肯定的配慮とは、クライエントが訴えている内容や感情、行動をカウンセラーの価値観などを交えず、無条件に受容することです。

ロジャーズの開発した集団心理療法としてエンカウンター・グループがあります。
様々なメンバーをあつめ、それぞれの意見を批判することなく言い合います。

もうひとつ、ロジャーズといえば「自己概念」があります。

「自己概念(self-structure)」とは、「自分が自分のことをどのような人間であると思っているか」という、自己が認知する自己像のことです。

ロジャーズは、自己概念と経験の不一致が「不適応状態」を生み出すと考えました。

図の左側にあるような状態です。

自己概念と経験

図の右側のように、自己概念と経験を一致させて「適応状態」に持っていく必要があります。

図の重なった領域は、自己概念と経験が調和して一致している状態、この領域を大きくしていくことが重要です。

この領域を最大化することが「自己一致(自己受容)」となります。

この自己一致(自己受容)は、経験に開かれた精神状態のことで、自分の経験を自己にとって都合の悪いものも含め、あるがままに受け入れることです。

ロジャーズの来談者中心療法でも、「あるがまま受け入れる」でしたね。「受容」や「共感」はロジャーズの重要なキーワードです。

過去問

第1回(追試)問80

人間性心理学の特徴として、最も適切なものを1つ選べ。
① 科学的であることを強く主張する。
② 人間の健康的で積極的な側面を強調する。
③ 価値や未来よりも過去や環境を重視する。
④ 代表的なものとしてアフォーダンス理論がある。
⑤ 動物と比較して人間らしい性質を系統発生的に明らかにする。

① 科学的であることを強く主張する。
間違いです。これは「行動主義心理学」の立場です。
ヴントの要素主義の内観法などを客観的でないと批判し、観察可能な行動を研究対象とした行動主義は科学的であることを強く主張しました。

② 人間の健康的で積極的な側面を強調する。
これが正解、人間性心理学です。
人間が無意識に支配されているとする精神分析(第1勢力)や、外的環境に支配されているとする行動主義(第2勢力)に対して、人間を自由意思のもつ主体的な存在として捉える立場が人間性心理学(第3勢力)です。

③ 価値や未来よりも過去や環境を重視する。
間違いです。人間性心理学は未来志向なので、過去を重視するのは真逆です。

④ 代表的なものとしてアフォーダンス理論がある。
間違いです。アフォーダンス理論はアメリカの知覚心理学者ジェームズ・J・ギブソンによる造語であり「知覚心理学」の領域です。

⑤ 動物と比較して人間らしい性質を系統発生的に明らかにする。
間違いです。これは「進化心理学」の内容です。

第4回 問87

A.H.Maslow の欲求階層説において、最も下位の欲求として位置づけられるものはどれか、 適切なものを1つ選べ。
① 安全の欲求
② 自尊の欲求
③ 生理的欲求
④ 自己実現の欲求
⑤ 所属と愛の欲求

選択肢③が正解です。
最下位の欲求は、食欲などの生理的欲求です。

第1回 問121

C.R.Rogers によるクライエント中心療法における共感的理解について、誤っているものを1つ選べ。
① 建設的な方向に人格が変容するために必要な条件の1つである。
② セラピストが共感的理解をしていることがクライエントに伝わる必要がある。
③ セラピストの内的照合枠に沿って、クライエントが感じている世界を理解することである。
④ クライエントの内的世界を「あたかもその人であるかのように」という感覚を保ちながら理解することである。

ロジャーズの来談者中心療法の6条件を思い出しましょう。

① 建設的な方向に人格が変容するために必要な条件の1つである。
正しいです。

② セラピストが共感的理解をしていることがクライエントに伝わる必要がある。
正しいです。

③ セラピストの内的照合枠に沿って、クライエントが感じている世界を理解することである。
間違いです。セラピストの内的照合枠ではなく、クライエントの内的照合枠に沿って、です。

④ クライエントの内的世界を「あたかもその人であるかのように」という感覚を保ちながら理解することである。
正しいです。

第5回 問128

C.R.Rogers によるクライエント中心療法における共感的理解の説明として、適切なものを2つ選べ。
① クライエントを知的に理解することではない。
② 進行中のプロセスとして保持すべき姿勢である。
③ セラピストによって、言語的、非言語的に伝えられる。
④ クライエントの建設的な人格変化の必要十分条件ではない。
⑤ クライエントの私的世界と一体化することを最優先とする。

選択肢②と③が正解です。

第4回 問9 

C.R.Rogersのパーソナリティ理論の特徴として、最も適切なものを1つ選べ。
① 自己概念を扱う。
② 精神‐性発達を扱う。
③ パーソナリティ特性を5因子で捉えている。
④ リビドーに向かう方向で内向型と外向型に分類している。
⑤ パーソナリティ特性を外向‐内向と神経症傾向という2軸で捉えている。

① 自己概念を扱う。
これが正解です。自己概念(セルフストラクチャー)を扱います。

② 精神‐性発達を扱う。
間違いです。これは精神分析の内容です。

③ パーソナリティ特性を5因子で捉えている。
間違いです。これはビッグファイブの5因子でしょう。

④ リビドーに向かう方向で内向型と外向型に分類している。
間違いです。これはユングの類型論ですね。

⑤ パーソナリティ特性を外向‐内向と神経症傾向という2軸で捉えている。
間違いです。これはアイゼンクの特性論ですね。
アイゼンクは外向‐内向と神経症傾向という2軸、もしくは精神病傾向を加えた3軸で捉えています。

講義動画

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次は、心理学の三大巨頭と呼ばれる3名の偉人を見ていきましょう。

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