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【心理療法】家族療法、家族って大事だよ

家族療法 心理療法
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家族療法には以下のような様々な学派がありますが、共通している部分をまず学んで、その後、それぞれの学派の家族療法を詳しく見ていきます。

・コミュニケーション学派
・戦略的家族療法
・精神力動的家族療法
・多世代派家族療法
・構造派家族療法
・ミラノ学派
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家族療法とは

一般システム理論(システムズアプローチ)

家族療法では、家族全体を1つの有機体システムとして捉えます。

そこでまずはシステム理論について見ていきます。

生物学者ベルタランフィ(L.v.Bertalanfy)の「一般システム理論」によると、システムとは以下のようなものです。

・システムは小さく分けられるサブシステムで成り立っている
・システムは単なるサブシステムの集まりではなく、統合体である
・システムは外の環境と交換する開放システムと、交換しない閉鎖システムに分けられ、生きた生物体は、本質的に開放システムである
・開放システムでは直線的因果律ではなく、全てが全ての原因であって結果であるという「円環的因果律」が成立する

つまり、システムの特徴は、単なるサブシステムの集まりではない統合体であること、ホメオスタシスのような自己制御性があること、環境の変化に合わせて自身を変化させる働きがあること、の3点であると言えます。

家族療法では、この「一般システム理論」の考え方を援用して家族システムを捉えます。

上記のシステム理論を家族システムに当てはめると、夫婦・親子・兄弟などがそれぞれサブシステムを構成し、家族の問題は皆が互いに影響力を及ぼしあった結果であり、家族内人間関係全体が原因と考えるわけですね。

円環的因果律

このように家族療法では、家族メンバーそれぞれが問題の原因であり結果であるという「円環的因果律」という考え方に基づき、個人単位の心理療法のみでは真の問題解決には至らないということです。

そして、何らかの問題行動や症状を示した特定の個人を「IP (identified patient)」と呼び、そのIPの問題を、家族システムの中で捉えます。

特定の個人に責任はなく、家族システム全体の人間関係のゆがみに由来すると考えるわけですね。

まとめ

このように、システムズ・アプローチの観点からは、問題を「円環的因果律」で捉えるため、IPのいる家族は、ある意味で全員が被害者で全員が加害者であると捉えることができます。

なので家族療法を受けようとすれば、家族全員がその対象となります。

家族システム

家族療法で現在でも有名な技法は「リフレーミング」です。リフレーミングとは、物事の見方や捉え方を変えることです。

家族療法の学派

コミュニケーション学派

コミュニケーション学派では、家族をコミュニケーションの相互作用システムと捉え、家族メンバーの内面の問題は取り扱わず、コミュニケーションの機能不全的な連鎖に介入し、それを修正することを目的としています。

家族療法の発祥地であるアメリカ西海岸のMRI(Mental Research Institute)は、ジャクソン(D.D.Jackson)によって創設されました。

ジャクソンが「家族ホメオスタシス」に関する講演を行い、そこでジャクソンとベイトソン(G.Bateson)が出会い、この両者が協力して「統合失調症のダブルバインド(二重拘束)仮説」を提唱しました。

二重拘束理論(ダブルバインド理論)

1956年、入院している精神分裂病(現在の統合失調症)患者が退院して自宅に帰ると症状が再燃してしまうことに着目したアメリカの精神科医であるベイトソンとヘイリーは、「病気の原因は家族にあるのではないか」と仮説を立て、「ダブルバインド理論」を提唱し、精神分裂病を家族コミュニケーションから説明しようとします。

ダブルバインド(二重拘束)とは「あちらが立てば、こちらが立たず」というような矛盾する命令によって動けなくなることです。

精神分裂病者は、常にメッセージをダブルバインドのパターンで知覚します。

<ダブルバインドの6条件>
・2人以上の複数の人間関係
・二重拘束が繰り返される
・一次的命令
・二次的命令
・三次的命令
・二重拘束の中にいると認知している状態

例えば、
会社の上司から「しっかり仕事をせよ」(一次的命令)
会社の同僚から「上司に気に入られようとするな」(二次的命令)
生活していくために会社を辞められない(三次的命令)

このような状況が繰り返されると、人は精神分裂病になるというのがダブルバインド理論です。

このようなダブルバインドの状態は、メタコミュニケーションが禁止されている場面で起こります。

メタコミュニケーションとは、コミュニケーションのためのコミュニケーションです。

つまり、コミュニケーションを行うに当たって、その進め方の合意がなければうまくいきませんから、そのためにメタコミュニケーションが必要ですが、ダブルバインドが起こりやすい状況は、まさにこのメタコミュニケーションができない状況です。

例えば、職場での上司と部下のコミュニケーション、病院での医者と患者のコミュニケーション、学校での教師と生徒のコミュニケーションなどは、立場の違いがあるのでメタコミュニケーションができず、ダブルバインドに陥りやすいのです。

そして、家族間でも親子や夫婦の関係でメタコミュニケーションが禁止されている場合、ダブルバインドが起こりやすいといえます。

戦略学派

戦略学派は、コミュニケーション学派の延長線上でヘイリー(J.Haley)が築き上げた理論です。

エリクソン(M.H.Erickson)の「逆説的介入法」を取り入れたりしています。

逆説的介入とは逆説的に介入すること。例えば、不眠症の患者に「眠ってはいけない」と指示すると、眠らなければしっかり自己統制ができたことになり、眠れば不眠症が解消され、どちらにころんでも嬉しい結果に。

精神力動的家族療法

ニューヨークではアッカーマン(N.Ackerman)による「精神力動的家族療法」が提唱されました。

アッカーマンは、「精神分析」を家族療法に取り入れました。

アッカーマンの死後には、家族療法家をトレーニングして育成指導するための「アッカーマン家族療法研究所」が創設されています。

多世代派家族療法

多世代派家族療法は、ボーエン(M.Bowen)らにより創始され、ジェノグラムを用いて多世代(3世代以上)の家族を歴史的枠組みの中で理解します。

精神分析の影響を強く受けているため、家族メンバーの中の力動に重点を置いています。

<ボーエンの理論(8基本概念)>
三角関係
・核家族の感情過程
・家族投影過程
・分化の尺度
・多世代伝達過程
・感情的切断
・同胞での位置
・社会的感情過程

「三角関係」とは、2人で構成される感情システムは不安定で、3人以上で安定するということです。
例えば、夫婦2人で関係がギクシャクしていても、子どもが生まれてうまくいくみたいな。

構造派家族療法

構造派家族療法は、ミニューチン(S.Minuchin)によって創始された学派で、家族のシステム構造に重点を置いたアプローチです。

構造派と呼ばれるのは、家族との関係を線で表したり、家族間の境界線を重視することからきています。

家族構造の捉え方として、境界・連合・権力の三つに着目します。

境界

境界には以下の2種類あります。

外的境界:家族システムとそれを取り巻く社会とを区別
世代間境界:夫婦サブシステムと同胞サブシステムの間に介在

家族は、親子・夫婦・兄弟姉妹などのサブシステムから成立し、各システム間に「世代間境界」が存在します。

この世代間境界が明確であれば健全な家族なのですが、不明確であれば不健全な家族ということになります。

例えば、境界の曖昧な家族はあらゆる問題に関して成員が引き込まれて混乱する「もつれ家族」になります。

両親がその息子夫婦に過剰に干渉するなどですね。

逆に境界が極度に固い場合は互いを支え合わない「遊離家族」になります。

両親とその息子夫婦がまったく関わり合いがない等ですね。

このような家族構造に対して、再構築を促すのが構造派家族療法です。

連合

「連合」とは、家族のメンバー同士が目的のために結びつくことで、それによって問題が発生します。

例えば「母子連合」で父親の孤立、「両親連合」で子供がワルモノなどの問題が起こります。

権力

「権力」とは、家族内のヒエラルキーのことです。

ヒエラルキーは、ピラミッド状の階級構造のことですね。

健全な家族には親と子の間に適切なヒエラルキーがあり、問題のある家族はそれが逆転していると考えます。

例えば親よりも子どもが権力を握っているとか、ですね。

ジョイニング

構造派家族療法では、家族システムにセラピストが溶け込むジョイニングが実施されます。

ジョイニングは以下の過程で進められます。

①アコモデーション:クライエント家族のルールにセラピストが合わせる
②トラッキング:クライエント家族の役割行動にセラピストが合わせる
③マイム:クライエント家族の用いるコミュニケーションにセラピストが合わせる

アコモデーションとは宿泊のこと。ホテルに行って「プリーズ、アコモデート」と言えば宿泊させてくれます。

ミラノ派(システミック派)

ミラノ派は、イタリアのパラツォーリ(S.Palazzoli)が中心となり築いた理論で、家族成員間の相互作用を重視します。

IPだけを悪者にするのではないのです。

パラツォーリは「循環的質問法」と呼ばれる臨床的な質問法を開発し、家族面接の中で「自分が他の家族にどんな影響を与えているか」を意識化させようとしました。

ナラティブ・アプローチ

ナラティブアプローチは、ホワイト(M.White)やエプストン(D.Epston)によって創始されました。

クライエントの語るストーリーに着目し、「ドミナント・ストーリー」を「オルタナティブ・ストーリー」に書き換えることを重要視します。

なので、「書き換え療法」とも呼ばれます。

書き換えのための技法として、問題の「外在化」がありましたね。

ストーリーはクライエントとその周囲の人々との相互作用によって生まれ、維持され、書き換えられると考えます。

また、クライエントとセラピストが対等で平等な「社会構成主義」を前提とし、会話を重視します。

社会構成主義なので、上から目線になってはいけません。

過去問

第1回(追試)問86

家族システム論について、最も適切なものを1つ選べ。
① 家族システムには上位システムと下位システムがある。
② 家族成員間の境界があいまいな家族を遊離家族という。
③ G.Bateson の一般システム理論の影響を受けて発展してきている。
④ 家族の中で問題行動や症状を抱える人を FP(Family Patient)という。
⑤ 家族内で、1つの原因から1つの結果が導かれることを円環的因果律という。

① 家族システムには上位システムと下位システムがある。
正しいです。フォン・ベルタランフィの一般システム理論を思い出しましょう。

② 家族成員間の境界があいまいな家族を遊離家族という。
間違いです。構造派では「遊離家族」は境界が極度に固い場合、一方で協会があいまいな場合は「もつれ家族」になります。

③ G.Batesonの一般システム理論の影響を受けて発展してきている。
間違いです。一般システム理論はベルタランフィの理論で、ベイトソンらコミュニケーション学派で援用されています。

④ 家族の中で問題行動や症状を抱える人を FP(Family Patient)という。
間違いです。FPではなくIP(identified patient)です。

⑤ 家族内で、1つの原因から1つの結果が導かれることを円環的因果律という。
間違いです。1つの原因から1つの結果が導かれるという考え方は「直線的因果律」です。
円環的因果律は、「原因と結果がまわりまわって出てきたもの」という考え方です。

第4回 問94

G.Bateson の二重拘束理論に関連する概念として、最も適切なものを1つ選べ
① 三角関係
② 両親連合
③ 世代間境界
④ ホメオスタシス
⑤ メタコミュニケーション

ベイトソン(G.Bateson)の二重拘束理論(ダブルバインド理論)といえば、家族療法の中でも「コミュニケーション学派」です。
家族療法には様々な学派があり、それらを包括的に理解していれば、選択肢の意味がわかります。

① 三角関係
間違いです。三角関係は「多世代派」のボーエンの理論ででてきました。

② 両親連合
間違いです。両親連合といえば「構造派」です。

③ 世代間境界
間違いです。世代間境界といえば「構造派」です。

④ ホメオスタシス
間違いです。ホメオスタシスは、家族療法で家族をシステムとして捉えたときのシステムの「恒常性」「自己制御性」のことです。

⑤ メタコミュニケーション
これが正解です。メタコミュニケーションは、ダブルバインドを解消するために必要でしたね。

第5回 問136

15歳の男子A、中学3年生。Aは、不登校状態のため友人と疎遠になり、話し相手は母親Bのみである。長年単身赴任をしている父親Cは、赴任先からたまに帰宅すると、Aの不登校についてAとBを厳しく叱り、母子は口を揃えてCの無理解をなじる。高校進学を控えるAに対して、Cは全日制高校への進学を勧めるが、AとBは、Cと言い争った末に、通信制高校への出願を決めた。家族システム論の観点から、Aとその家族関係を説明する心理学概念として、最も適切なものを1つ選べ。
① 連合
② 自己分化
③ 遊離家族
④ 親役割代行
⑤ 情緒的遮断

選択肢①が正解です。

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