面接の形
面接の形として以下の3種類は区別できるようにしましょう。
非構造化面接:事前に面接の内容を全く決めず、面接場面で臨機応変に面接
半構造化面接:構造化面接と非構造化面接の中間的な形です。ある程度事前に面接内容を決めておいて、あとは臨機応変に
面接の種類には、深層面接、生活場面面接、動機付け面接などがあります。
詳細は以下の記事で。
動機づけ面接
動機づけ面接では、クライエントの内発的動機づけを積極的に引き出し、行動変容を促すコミュニケーションスタイルです。
動機づけ面接での4技法(OARS)は以下の通りです。
Affirming:是認
Reflecting:振り返り・反映
Summarizing:要約
面接技法
心理面接の技法としては、アレン・アイビイ(A.E.Ivey)の提唱した基本的傾聴の連鎖や積極技法などを含む「マイクロカウンセリング技法」があります。
詳細は以下の記事で。
セラピストとクライエントとの関係
ラポール
ラポールとはセラピストとクライエントの信頼関係のことです。
心理面接ではラポールの形成が重要です。
初回面接では、情報収集とラポール形成が特に重要です。
転移・逆転移
転移・逆転移はフロイトの精神分析学の概念で、転移はクライエントがセラピストに向ける感情や態度、逆転移はセラピストがクライエントに向ける感情や態度のことです。
逆転移は必ずしもマイナス面ばかりではありません。
作業同盟(治療同盟)
作業同盟とは精神分析の概念で、転移・逆転移に巻き込まれずに治療を続けられるクライエントとセラピストの関係のことです。
作業同盟は「感情的な絆(ラポール)」と「目標と作業に関する合意」に基づいています。
負の相補性
相補性とは、自分にない特徴や資質を他者に求める原理のことです。
「負の相補性」とは、敵意や支配といった負の感情等をクライエントとセラピストが相互に探してしまうことです。
負の相補性によって心理療法が失敗することもあります。
抵抗
クライエントは自らのテーマに気づくことを無意識・無自覚なうちにしないよう「抵抗」しています。
なので、セラピストの働きかけに対してクライエントがその方針に無意識的に逆らおうとします。
行動化
「行動化」は、心理的葛藤を言葉ではなく行動で表現することです。
治療室内で起こる行動化は「アクティングイン」、治療室外で起こる行動化は「アクティングアウト」と呼ばれます。
アクティングインはセラピストに対する暴力など、アクティングアウトは面接のキャンセルなど。
もしアクティングアウトとして面接がキャンセルされたら、その理由をしっかり考察しなければなりません。
どうしても外せない用事が入ったというキャンセル理由を伝えてきたとしても、その裏には何か別の理由があるかもしれません。
過去問
第2回 問38
半構造化面接について、不適切なものを1つ選べ。
① 質問紙型の面接ともいわれる。
② 質問を追加することができる。
③ 面接の前に質問項目を用意する。
④ 構造化の程度による面接区分の一種である。
⑤ 対象者の反応に応じ、質問の順番を変更する。
選択肢①が不適切です。
それ以外の選択肢は、臨機応変に実施する半構造化面接ではありえます。
第1回(追試)問16
初回面接でのクライエントとの関わりにおいて必要な態度として、最も適切なものを1つ選べ。
① ラポール形成のために、早急な助言を控える。
② クライエントの主観的現実よりも客観的事実を重視する。
③ クライエントの言葉に疑義を挟まず、そのままの言葉を返す。
④ 主訴と状況を早く理解するために、できるだけ多くの情報を得る。
⑤ クライエントが主訴とその状況を話しやすいよう、定型の質問を準備しておく。
初回面接では見立てのための情報収集とラポール形成が大切です。
① ラポール形成のために、早急な助言を控える。
適切です。
② クライエントの主観的現実よりも客観的事実を重視する。
間違いです。
③ クライエントの言葉に疑義を挟まず、そのままの言葉を返す。
間違いです。
④ 主訴と状況を早く理解するために、できるだけ多くの情報を得る。
間違いです。情報収集とラポールの形成の両方が重要です。
⑤ クライエントが主訴とその状況を話しやすいよう、定型の質問を準備しておく。
間違いです。初回面接では非構造化面接が適しているので、定型の質問を準備しません。
第2回 問48
① 沈黙の受け取り方は文化によって多様である。
② 沈黙はクライエント自身の内的探索を阻害する。
③ 沈黙はクライエントの不快さを増大させることがある。
④ 沈黙によってクライエントに共感を伝えることもできる。
選択肢②が正解です。沈黙には選択肢④のようなプラス面も、選択肢③のようなマイナス面もあります。
第3回 問80
心理学の研究法において、質問紙法と比較したときの面接法の特徴として、適切なものを1つ選べ。
① 臨機応変な対応が困難である。
② 回答者に与える心理的圧力が弱い。
③ 回答者の個別の反応を収集しにくい。
④ データの収集に手間と時間がかかる。
⑤ 高齢者や幼い子どもには負担が大きい。
選択肢④が正解です。それ以外の選択肢は質問紙法の特徴になっています。
第3回 問116
動機づけ面接の基本的スキルとして、不適切なものを1つ選べ。
① クライエントが今までに話したことを整理し、まとめて聞き返す。
② クライエントの答え方に幅広い自由度を持たせるような質問をする。
③ クライエントの思いを理解しつつ、公認心理師自身の心の動きにも敏感になる。
④ クライエントの気づきをより促すことができるように、言葉を選んで聞き返す。
⑤ クライエントの話の中からポジティブな部分を強調し、クライエントの価値を認める。
動機づけ面接といえば以下の4技法(OARS)があります。
Affirming:是認
Reflecting:振り返り・反映
Summarizing:要約
① クライエントが今までに話したことを整理し、まとめて聞き返す。
正しいです。「要約」です。
② クライエントの答え方に幅広い自由度を持たせるような質問をする。
正しいです。「開かれた質問」です。
③ クライエントの思いを理解しつつ、公認心理師自身の心の動きにも敏感になる。
不適切です。この内容は動機づけ面接の4技法には含まれません。
④ クライエントの気づきをより促すことができるように、言葉を選んで聞き返す。
正しいです。「振り返り・反映」です。
⑤ クライエントの話の中からポジティブな部分を強調し、クライエントの価値を認める。
正しいです。「是認」です。
第5回 問95
動機づけ面接の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① クライエントに自身の抵抗への気づきを促す。
② クライエントのポジティブな面の承認は控える。
③ クライエントの問題についての例外探しをする。
④ ラディカル・アクセプタンスを基本的姿勢とする。
⑤ クライエントの変化に対する両価性に関わる問題を扱う。
選択肢⑤が正解です。
第5回 問112
A.E.Ivey と M.Ivey のマイクロカウンセリングにおける「かかわり行動」の重要な4要素に該当しないものを1つ選べ。
① 声の調子
② 自己開示
③ 言語的追従
④ 視線の位置
⑤ 身体的言語
選択肢②が正解です。「かかわり行動」はヒエラルキーの一番下、自己開示(セラピスト自身の感情を開示すること)はもっと上の階層です。
第4回 問18
心理療法における”負の相補性”の説明として最も適切なものを1つ選べ
① セラピストとクライエントがお互いに過去の誰かに関する感情を相手に向けること。
② セラピストの働きかけに対してクライエントがその方針に無意識的に逆らおうとすること。
③ セラピストがことばで肯定的なことを言いながら態度が否定的な時、クライエントが混乱すること。
④ セラピストが問題の言語化を試み続ける中でクライエントが行動によって問題を表現しようとすること。
⑤ クライエントが敵意を含んだ攻撃的な発言をしてくるのに対して、セラピストが同じ敵意を含んだ発言で応じること。
① セラピストとクライエントがお互いに過去の誰かに関する感情を相手に向けること。
間違いです。これは「転移・逆転移」の説明です。
② セラピストの働きかけに対してクライエントがその方針に無意識的に逆らおうとすること。
間違いです。これは「抵抗」の説明です。
③ セラピストがことばで肯定的なことを言いながら態度が否定的な時、クライエントが混乱すること。
間違いです。これはベイトソンのダブルバインドの説明です。
④ セラピストが問題の言語化を試み続ける中でクライエントが行動によって問題を表現しようとすること。
間違いです。これは「行動化」の説明です。
⑤ クライエントが敵意を含んだ攻撃的な発言をしてくるのに対して、セラピストが同じ敵意を含んだ発言で応じること。
これが正解、「負の相補性」です。
第3回 問127
作業同盟(治療同盟)に関する実証研究について、正しいものを1つ選べ。
① 作業同盟が強固であるほど、介入効果は良好である。
② 作業同盟の概念には、課題に関する合意は含まれない。
③ 作業同盟の効果は、対人プロセス想起法によって測定される。
④ 作業同盟が確立していることは、心理療法の介入効果の必要十分条件である。
① 作業同盟が強固であるほど、介入効果は良好である。
正しいです。作業同盟が強固であるほど介入による効果は高いです。
② 作業同盟の概念には、課題に関する合意は含まれない。
間違いです。作業同盟は「ラポール」と「課題や作業に関する合意」に基づいています。
③ 作業同盟の効果は、対人プロセス想起法によって測定される。
間違いです。対人プロセス想起法は、カウンセリング手技の振返りや効果的質問の選別などに用いられます。
④ 作業同盟が確立していることは、心理療法の介入効果の必要十分条件である。
間違いです。作業同盟が確立していなくても、心理的介入が全く意味がないことはありません。
第1回(追試)問121
クライエントとカウンセラーの作業同盟に問題があると疑われたときのカウンセラーの対処として、最も適切なものを1つ選べ。
① クライエントが表現しにくい不満を言葉にすることを手伝う。
② できるだけ早く抵抗の解釈を行い、問題が恒久化しないようにする。
③ カウンセラーが対人的なスタンスを変えて、クライエントに合わせる。
④ 問題がクライエントの対人関係のパターンにあることをまず指摘する。
① クライエントが表現しにくい不満を言葉にすることを手伝う。
正しいです。例えば面接のキャンセルというアクティングアウトが起こった場合、クライエントの表現しにくい不満を考察してみる必要があります。
② できるだけ早く抵抗の解釈を行い、問題が恒久化しないようにする。
間違いです。そもそも問題に直面することの苦しさが無意識レベルにあるからこそ作業同盟上の問題が生じているので、「できるだけ早く」というのは適切ではありません。
③ カウンセラーが対人的なスタンスを変えて、クライエントに合わせる。
間違いです。スタンスを変えることでうまくいくケースもあるでしょうが、必ずしもうまくいくケースばかりではありませんので最も適切とは言えません。
④ 問題がクライエントの対人関係のパターンにあることをまず指摘する。
間違いです。これは明らかに不適切な対応です。
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次は、ついに「心理療法 総まとめ」です。
これで心理検査と心理療法を制覇しました。
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