心の理論とは
「心の理論」とは、他者のこころを読む能力のことで、およそ3歳頃から成立すると考えられています。
「心の理論」は、当初、霊長類学者のプレマック(D.Premack)とウッドラフ(G.Woodruff)が、チンパンジーの他の個体の心を推測して欺くように見える行動を解釈するための概念として用いました。
標準誤信念課題
標準誤信念課題は他者の信念についての質問に正答することができた場合に、「心の理論」を持っていると結論されます。
一般的に4歳後半から5歳の子どもは、これらの課題を通過できます。
「心の理論」獲得の度合いをはかる有名な標準誤信念課題に「サリーとアン課題」 があります。
サリーとアンの二人が部屋の中で遊んでいます。サリーは自分の人形をカゴの中に入れて部屋を出ます。サリーが出ていった後に、アンはカゴの中の人形を自分の箱の中に隠します。
部屋に戻ってきたサリーは、もう一度人形で遊ぶためにどこを探すでしょう?
①カゴの中
②箱の中
正解は「①カゴの中」ですが、3歳児の多くは「②箱の中」と答えてしまいます。
まさに、ピアジェの自己中心性ですね。
信念−欲求心理学
「心の理論」の研究者であるウェルマン(H.M.Wellman)は「信念−欲求心理学」を提唱し、ある行為を意図的にするということは「欲求を持ち、かつ、その欲求を満たすのに役立つと信じる行為を行うこと」と考えます。
この「信念−欲求心理学」は素朴理論の一種であり、「心の理論」はこの理論に基づいて人々の行動を予測すると考えられています。
素朴理論とは、人は日常生活の中で経験的に自然発生的にある思い込みにより概念形成を行っているという考え方です。
過去問
第3回 問48
「心の理論」について、不適切なものを1つ選べ。
① 自他の心の在りようを理解し把握する能力である。
② 標準誤信念課題によって獲得を確認することができる。
③ D. Premack がヒトの幼児の発達研究を通して初めて提案した。
④ 「信念−欲求心理学」の枠組みに基づき、人々の行動を予測すると考えられている。
選択肢③が誤りです。ヒトではなくチンパンジーです。
次の記事
次は、マーシャの自我同一性地位について。
コメント