まとめ
DSM-5におけるパーソナリティ障害はA群・B群・C群に分類されています。
B群(演技的で感情的)
C群(不安で内向的)
群 | パーソナリティー障害 | 内容 |
---|---|---|
A群 | 妄想性(猜疑性)パーソナリティー障害 | 他者への疑念や不信があり、危害を加えられたり裏切りを恐れる |
シゾイドパーソナリティ障害/スキゾイドパーソナリティ障害 | 社会への関わりが薄く感情を表すことがあまりない | |
統合失調型パーソナリティー障害 | 思考が曖昧で抽象的 | |
B群 | 境界性パーソナリティー障害 | 感情や対人関係の不安定さ、衝動を制御できない |
自己愛性パーソナリティー障害 | 周囲の人を軽視し周囲の注目と称賛を求めて傲慢、尊大な態度 | |
反社会性パーソナリティー障害 | 倫理観や道徳観が薄く、暴力的な行動 | |
演技性パーソナリティー障害 | 自分が悲劇の主人公と思いたい、他者の注意を引くための行動 | |
C群 | 依存性パーソナリティー障害 | 他者への過度な依存、意思決定に他者の助言や指示を求める |
強迫性パーソナリティー障害 | 一定の秩序を保つことへ固執、融通性に欠け、几帳面、完璧主義、細部への拘泥 | |
回避性パーソナリティー障害 | 周囲からの拒絶や失敗を恐れ、刺激を避ける |
境界性パーソナリティ障害
以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。
理想化と脱価値化との両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる不安定で激しい対人関係様式。
同一性障害:著明で持続的な不安定な自己像や自己観。
自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(浪費、性行為、物質濫用、無謀な運転、むちゃ食いなど)。
自殺の行為、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し。
顕著な気分反応性による感情不安定性(例:通常は 2~3時間持続し、2~3日以上持続することはまれな強い気分変調、いらいら、または不安)。
慢性的な空虚感。
不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いのけんかを繰り返す)。
一過性のストレス関連性の妄想様観念、または重篤な解離性症状。
「境界性」というのは、「統合失調症」と「神経症」という2つの心疾患の境界にあるという意味です。
妄想性(猜疑性)パーソナリティ障害
以下のうち4つ(またはそれ以上)によって示されます。
友人または仲間の誠実さや信頼を不当に疑い、それに心を奪われている。
情報が自分に不利に用いられるという根拠のない恐れのために、他人に秘密を打ち明けたがらない。
悪意のない言葉や出来事の中に、自分をけなす、または脅す意味が隠されていると読む。
恨みを抱き続ける(つまり、侮辱されたこと、傷つけられたこと、または軽蔑されたことを許さない)
自分の性格または評判に対して他人にはわからないような攻撃を感じ取り、すぐに怒って反応する、または逆襲する。
配偶者または性的伴侶の貞節について、繰り返し道理に合わない疑念をもつ。
統合失調症、「双極性障害または抑うつ障害、精神病性の特徴を伴う」、または他の精神病性障害の経過中にのみ起こるものではなく、他の医学的疾患の生理学的作用によるものではない。
スキゾイドパーソナリティ障害
以下のうち4つ(またはそれ以上)によって示されます。
ほとんどいつも孤立した行動を選択する。
他人と性体験をもつことに対する興味が、もしあったとしても、少ししかない。
喜びを感じられるような活動が、もしあったとしても、少ししかない。
第一度親族以外には、親しい友人または信頼できる友人がいない。
他人の賞賛や批判に対して無関心に見える。
情動的冷淡さ、離脱、または平板な感情状態を示す。
統合失調症、「双極性障害または抑うつ障害、精神病性の特徴を伴う」、他の精神病性障害、または自閉スペクトラム症の経過中にのみ起こるものではなく、他の医学的疾患の生理学的作用によるものでもない。
統合失調型パーソナリティ障害
以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。
行動に影響し、下位文化的規範に合わない奇異な信念、または魔術的思考(例:迷信深いこと、千里眼、テレパシー、または“第六感”を信じること:小児および青年では、奇異な空想または思い込み)。
普通でない知覚体験、身体的錯覚も含む。
奇異な考え方と話し方(例:あいまい、まわりくどい、抽象的、細部にこだわりすぎ、紋切り型)。
疑い深さ、または妄想様観念。
不適切な、または限定された感情。
奇異な、奇妙な、または特異な行動または外見。
第1度親族以外には、親しい友人または信頼できる人がいない。
過剰な社会不安があり、それは慣れによって軽減せず、また自己卑下的な判断よりも妄想的恐怖を伴う傾向がある。
統合失調症、「気分障害、精神病性の特徴を伴うもの」、他の精神病性障害、または広汎性発達障害の経過中にのみ起こるものではない。
スキゾイドと統合失調型の違いは関係念慮を有するかなどが診断基準上は見受けられます。
過去問
第1回(追試)問102
境界性パーソナリティ障害(情緒不安定性パーソナリティ障害)の特徴について、最も適切なものを1つ選べ。
① 他人の権利を無視し、侵害する。
② 他人の動機を悪意あるものとして解釈する。
③ 過度な情動性を示し、人の注意を引こうとする。
④ 社会的関係からの離脱と感情表出の範囲の限定が見られる。
⑤ 対人関係、自己像及び感情の不安定と著しい衝動性を示す。
① 他人の権利を無視し、侵害する。
誤りです。これは反社会性パーソナリティー障害です。
② 他人の動機を悪意あるものとして解釈する。
誤りです。これは妄想性パーソナリティー障害です。
③ 過度な情動性を示し、人の注意を引こうとする。
誤りです。これは演技性パーソナリティー障害です。
④ 社会的関係からの離脱と感情表出の範囲の限定が見られる。
誤りです。これはシゾイドパーソナリティ障害です。
⑤ 対人関係、自己像及び感情の不安定と著しい衝動性を示す。
これが正解、境界性パーソナリティー障害です。
第2回 問11
秩序や完全さにとらわれて、柔軟性を欠き、効率性が犠牲にされる
という症状を特徴とするパーソナリティ障害として、最も適切なものを1つ選べ。
① 境界性パーソナリティ障害
② 強迫性パーソナリティ障害
③ 猜疑性パーソナリティ障害
④ スキゾイドパーソナリティ障害
⑤ 統合失調型パーソナリティ障害
選択肢②が正解です。
第2回 問28
DSM-5の反社会性パーソナリティ障害の診断基準として、正しいものを1つ選べ。
① 10歳以前に発症した素行症の証拠がある。
② 他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、14歳以降に起こっている。
③ 反社会的行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中ではない。
④ 他人の権利を無視し侵害する広範な様式には、「自殺のそぶり、脅し」が含まれる。
⑤ 他人の権利を無視し侵害する広範な様式には、「衝動性、または将来の計画を立てられないこと」が含まれる。
① 10歳以前に発症した素行症の証拠がある。
誤りです。10歳以前ではなく「15歳以前」です。
② 他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、14歳以降に起こっている。
誤りです。14歳以降ではなく「15歳以上」です。
③ 反社会的行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中ではない。
DSM-5の基準では「統合失調症や双極性障害の経過中のみではない」とされており、統合失調症や双極性障害の経過中に起こる反社会的行為についても診断の参考にします。
なのでこの選択肢は正しいのですが、これが正しいと不適切問題になります。
④ 他人の権利を無視し侵害する広範な様式には、「自殺のそぶり、脅し」が含まれる。
誤りです。これは境界性パーソナリティー障害です。
⑤ 他人の権利を無視し侵害する広範な様式には、「衝動性、または将来の計画を立てられないこと」が含まれる。
正しいです。
第3回 問149
17歳の女子A、高校2年生。
Aは、自傷行為を主訴に公認心理師Bのもとを訪れ、カウンセリングが開始された。
一度Aの自傷は収束したが、受験期になると再発した。
AはBに「また自傷を始めたから失望しているんでしょう。カウンセリングを辞めたいって思ってるんでしょう」と言うことが増えた。
BはAの自傷の再発に動揺していたが、その都度「そんなことないですよ」と笑顔で答え続けた。
ある日、Aはひどく自傷した腕をBに見せて「カウンセリングを辞める。そう望んでいるんでしょう」と怒鳴った。
この後のBの対応として、最も適切なものを1つ選べ。
① 再発した原因はB自身の力量のなさであることを認め、Aに丁重に謝る。
② 自傷の悪化を防ぐために、Aの望みどおり、カウンセリングを中断する。
③ 再発に対する B の動揺を隠ぺいしたことが A を不穏にさせた可能性について考え、それを A に伝える。
④ 自傷の悪化を防ぐために、Bに責任転嫁をするのは誤りであるとAに伝え、A自身の問題に対する直面化を行う。
選択肢③が正解です。Aには境界性パーソナリティー障害が推察されます。
第4回 問136
20歳の女性A。
Aは、無謀な運転による交通事故や自傷行為および自殺未遂で、たびたび救急外来に搬送されている。
また、Aは交際相手の男性と連絡が取れないと携帯電話を壁に叩きつけたり、不特定多数の異性と性的関係を持ったりすることもある。
現在、救急外来の精神科医の勧めで、公認心理師Bによる心理面接を受けている。
初回面接時には”Bさんに会えてよかった”と褒めていたが、最近では、”最低な心理師”と罵ることもある。Aは、礼節を保ち、にこやかに来院する日もあれば、乱れた着衣で泣きながら来院することもある。心理的に不安定なときは、”みんな死んじゃえ”と叫ぶことがあるが、後日になるとその時の記憶がないこともある。
DSM-5 の診断基準に該当するAの病態として、最も適切なものを1つ選べ。
① 双極性Ⅰ型障害
② 素行症 / 素行障害
③ 境界性パーソナリティー障害
④ 反抗挑発症 / 反抗挑戦性障害
⑤ 解離性同一症 / 解離性同一性障害
① 双極性Ⅰ型障害
誤りです。これは双極性障害の躁鬱を繰り返す障害です。
② 素行症 / 素行障害
誤りです。これはADHD等に見られる犯罪(に近い)行為です。
③ 境界性パーソナリティー障害
これが正解です。理想化とこき下ろし、自傷行為、攻撃的な言動から境界性パーソナリティー障害と推察されます。
④ 反抗挑発症 / 反抗挑戦性障害
誤りです。ADHD等に見られる、否定的、反抗的、不服従の行動です。
⑤ 解離性同一症 / 解離性同一性障害
事例の最後に解離性同一性障害が見られますが、境界性パーソナリティー障害の症状の一部として解離症状を捉えれば選択肢③が最も適切です。
第3回 問79
精神科領域における公認心理師の活動について、適切なものを1つ選べ。
① 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング(SST)は、個別指導が最も効果的とされる。
② 神経性やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合、身体症状に触れずに心理療法を行う。
③ 精神疾患への心理教育は、家族を治療支援者とするためのものであり、当事者には実施しない場合が多い。
④ 境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行う。
⑤ 妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医が病状を把握していれば、助産師と情報を共有する必要はない。
① 統合失調症患者に対するソーシャルスキルトレーニング(SST)は、個別指導が最も効果的とされる。
誤りです。SSTは集団療法で用いられます。
② 神経性やせ症/神経性無食欲症の患者が身体の話題を嫌う場合、身体症状に触れずに心理療法を行う。
誤りです。神経性やせ症/神経性無食欲症では身体に対する認知の修正が必要です。
③ 精神疾患への心理教育は、家族を治療支援者とするためのものであり、当事者には実施しない場合が多い。
誤りです。心理教育は家族にも当事者にも実施します。
④ 境界性パーソナリティ障害の治療では、患者への支援だけではなく、必要に応じてスタッフへの支援も行う。
正しいです。スタッフが患者に操作されないよう支援が必要です。
⑤ 妊産婦に精神医学的問題がある場合、産科医が病状を把握していれば、助産師と情報を共有する必要はない。
誤りです。助産師とも情報共有などの連携が必要です。
次の記事
次は、統合失調症です。
コメント
いつも勉強させていただいています。
A群のパーソナリティ障害が4区分になっていますが、
「シゾイドパーソナリティ障害/スキゾイドパーソナリティ障害」と
「統合失調質パーソナリティ障害」は
同一タイプの別名称ではないでしょうか?
たとえば、ウィキペディアでは次のように記されています。
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スキゾイドパーソナリティ障害
またはシゾイドパーソナリティ障害、
統合失調質パーソナリティ障害とは、
社会的孤立・全般的な無関心・感情の幅の狭さなどを特徴とする
パーソナリティ障害。
統合失調症スペクトラム障害の一種でもある。
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統合失調型パーソナリティ障害とは、(途中省略)である。
失調型パーソナリティ障害、
スキゾタイパルパーソナリティ障害とも呼ばれる。
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ご確認いただければ幸いです。
ありがとうございますm(__)m
訂正いたしました。
助かりました。