抑うつ検査は、抑うつ状態の検査です。
抑うつ状態は、がん等の様々な疾患に付随する症状なので、多くの場面で用いられます。
BDI-Ⅱ(ベック抑うつ質問票)
BDI-Ⅱ(Beck Depression Inventory-Second Edition)は、ベック(A.T.Beck)によって開発された質問紙による抑うつ検査です。
「D」は「Depression(抑うつ)」です。
過去2週間の状態についての21項目の質問(4件法)によって抑うつ症状の重症度を短時間で評価することができます。
憂うつではない
憂うつである
いつも憂うつから逃れることができない
耐えがたいほど、憂うつで不幸である
将来について悲観してはいない
将来について悲観している
将来に希望がない
将来に何の希望もなく、良くなる可能性もない
それほど失敗するようには感じない
普通より、よく失敗するように思う
過去のことをふりかえれば、失敗のことばかり思い出す
人間として全く失敗だと思う
以前と同じように満足している
以前のようにものごとが楽しめなくなった
もう本当の意味で満足することなどできない
何もかもうんざりする
罪の意識など感じない
ときどき罪の意識を感じる
ほとんどいつも罪の意識を感じる
いつも罪の意識を感じる
罰を受けるとは思わない
罰を受けるかもしれない
罰を受けると思う
今、罰を受けていると思う
自分自身に失望してはいない
自分自身に失望している
自分自身にうんざりする
自分自身を憎む
他の人より自分が劣っているとは思わない
自分の欠点やあやまちに対し批判的である
自分の失敗に対していつも自らを責める
何か悪いことが起こると、自分のせいだと自らを責める
自殺しようと全く思わない
死にたいと思うことはあるが、自殺を実行しようとは思わない
自殺したいと思う
チャンスがあれば自殺するつもりである
いつも以上に泣くことはない
以前よりも泣く
いつも泣いてばかりいる
以前は泣くことができたが、今はそうしたくても泣くこともできない
イライラしていない
いつもより少しイライラしている
しょっちゅうイライラしている
現在はたえずイライラしている
他の人に対する関心を失っていない
以前より他の人に対する関心がなくなった
他の人に対する関心をほとんど失った
他の人に対する関心を全く失った
いつもと同じように決断することができる
以前より決断をのばす
以前より決断がはるかに難しい
もはや全く決断することができない
以前より醜いとは思わない
老けて見えるのでないか、魅力がないのではないかと心配である
もう自分には魅力がなくなったように感じる
自分は醜いにちがいないと思う
いつもどおりに働ける
何かやり始めるのにいつもより努力が必要である
何をやるのにも大変な努力がいる
何をすることもできない
いつもどおりよく眠れる
いつもよりも眠れない
いつもより 1 ~ 2 時間早く目が覚め、再び寝つくことが難しい
いつもより数時間も早く目が覚め、再び寝つくことができない
いつもより疲れた感じはしない
以前より疲れやすい
ほとんど何をやるのにも疲れる
疲れて何もできない
いつもどおり食欲はある
いつもより食欲がない
ほとんど食欲がない
全く食欲がない
最近それほどやせたということはない
最近 2 kg 以上やせた
最近 4 kg 以上やせた
最近 6 kg 以上やせた
自分の健康のことをいつも以上に心配することはない
どこかが痛いとか、胃が悪いとか、便秘など自分の身体の調子を気遣う
自分の身体の具合のことばかり心配し、他のことがあまり考えられない
自分の身体の具合のことばかり心配し、他のことを全く考えられない
性欲はいつもとかわりない
以前と比べて性欲がない
性欲がほとんどない
性欲が全くない
これら21の質問に答え、合計点数から以下のように評価します。
点数 | 評価 |
---|---|
0~13点 | 正常 |
14~19点 | 軽いうつ状態 |
20~28点 | 中程度のうつ状態 |
29~63点 | 重度のうつ状態 |
上の表からカットオフ値は14点ですね。
SDS(自己評価式抑うつ尺度)
SDS(Self-rating Depression Scale)は、デューク大学のツァン(W.W.W.K.Zung)教授によって開発された自己評価式の抑うつ検査です。
20の質問に4件法で答えていきます。
SDS | 意味 | BDI |
---|---|---|
0~39点 | 正常 | 0~13点 |
40~47点 | 軽いうつ状態 | 14~19点 |
48~55点 | 中程度のうつ状態 | 20~28点 |
56点以上 | 重度のうつ状態 | 29~63点 |
SDSのカットオフ値は40点ですね。BDIのカットオフ値は14点でした。
まとめ
BDIもSDSも「D」は「Depression(抑うつ)」です。
比較してみましょう。
項目 | BDI-Ⅱ(ベック抑うつ質問票) | SDS(自己評価式抑うつ尺度) |
---|---|---|
開発者 | ベック(A.T.Beck) | ツァン(W.W.W.K.Zung) |
項目数 | 21の質問(4件法) | 20の質問(4件法) |
検査時間 | 5~10分 | 約10分 |
適応年齢 | 13歳~80歳 | 15歳以上 |
カットオフポイント | 14点 | 40点 |
余裕があれば、抑うつ検査として
HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)
GDS-15(老年期うつ病評価尺度)
EPDS(エジンバラ産後うつ病質問票)
を追加で覚えておきましょう。
過去問
第4回 問138
28歳の男性A、会社員。
Aは最近、会社に出勤できなくなり、産業医から紹介されて公認心理師 B のもとを訪れた。
Aは、人前に出ることはもともと苦手であったが、 1年前に営業部署に異動してからは、特に苦手意識が強くなり、部署内の会議への参加や、上司から評価されるような場面を避けがちになった。
Bが実施した心理検査の結果、BDI-Ⅱの得点は32点 、MASのA得点は32点、 L得点は5点、LSAS-Jの総得点は97点であった。
Aのアセスメントとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 顕在性不安が強い。
② 抑うつ状態は軽度である。
③ 軽度の社交不安が疑われる。
④ 重度の強迫症状が見られる。
⑤ 好ましく見せようとする傾向が強い。
① 顕在性不安が強い。
これが正解です。MASのA得点(不安得点)が32点というのは高い点数で、顕在性不安が強いといえます。
② 抑うつ状態は軽度である。
間違いです。BDI-Ⅱの得点は32点なので重度のうつ状態です。
カットオフポイントは14点でしたね。
③ 軽度の社交不安が疑われる。
間違いです。LSAS-Jの総得点は97点というのは非常に高い点数で重度の社交不安です。
④ 重度の強迫症状が見られる。
間違いです。強迫症状は見られません。
⑤ 好ましく見せようとする傾向が強い。
間違いです。L得点は5点なので正常の範囲内です。
第5回 問121
BDI-Ⅱの説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① うつ病の診断に単独で用いる。
② 最近1か月の状態を評価する。
③ 体重減少を問う評価項目がある。
④ 睡眠時間の増加を問う評価項目がある。
選択肢④が正解?③ではない?
次の記事
次は、強迫尺度について。
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