遂行機能というのは、物事や行動を計画し、順序立てて行う能力です。
「目的のある一連の行動を有効に行うために必要な認知能力」のこと、「実行機能」とも呼ばれます。
遂行機能障害は高次脳機能障害の一種ですね。
WCST(ウィスコンシンカード分類課題)
WCST(Wisconsin Card Sorting Test)は、前頭葉部位の検査として遂行機能障害の検査ができます。
ウィスコンシンってなに?アメリカのウィスコンシン州と関係あるの?
遂行機能障害の主な原因として言われているのは、外傷や脳卒中による前頭葉部位の損傷です。
以下のような「数」「色」「形」の異なる48枚のカードを示し、自分でルールを決めてカテゴリー分けします。
そのルールに従って、次のカードはどのカテゴリーに分けられるかを判断できるかという課題です。
例えば以下の例であれば、青色のハートが1つ書かれたカードはA~Dのどれにカテゴライズされるのか、数字であればA、色であればB、形であればCに分類されることになります。
いくつかの作業を同時に行うような遂行機能を検査する作業として、よくできている気がします。
BADS
BADS(Behavioural Assessment of the Dysexecutive Syndrome)は、日常生活上の遂行機能に関する問題点を検出するための検査です。
目標の設定、プランニング、計画の実行、効果的な行動という遂行機能の4つの要素を、カードや道具を使った6種類の下位検査と1つの質問紙で検査します。
各下位検査は0点~4点で評価され、全体の評価は各下位検査の合計点(24点満点)でプロフィール得点を算出します。
プロフィール得点のカットオフポイントは11/12、つまり11点以下で遂行機能障害の疑いが高いです。
過去問
第1回(追試)問61
34歳の男性、会社員。
1年前、バイク事故により頭部を打撲し意識障害がみられたが、3日後に回復した。
後遺症として身体的障害はみられなかった。
受傷から9か月後に復職したが、仕事の能率が悪く、再度休職になった。
現在の検査所見は、以下のとおりである。
順唱6桁、逆唱5桁、リバーミード行動記憶検査標準プロフィール点9点、WAIS-Ⅲ:FIQ82、VIQ86、PIQ78、遂行機能障害症候群の行動評価BADS総プロフィール得点20点、SDSうつ性自己評価尺度総得点30点。
検査所見により示唆される主たる障害として、最も適切なものを1つ選べ。
① 記憶障害
② 知能障害
③ 注意障害
④ 抑うつ障害
⑤ 遂行機能障害
① 記憶障害
これが正解です。リバーミード行動記憶検査標準プロフィール点9点ということは、重度の記憶障害です。
② 知能障害
間違いです。WAIS-ⅢのFIQ82なので知能障害ではありません。
③ 注意障害
間違いです。注意障害があると数唱の成績が悪くなりがちで、「順唱5桁以下、逆唱3桁以下」だと可能性がありますが、事例では「順唱6桁、逆唱5桁」ですので問題ありません。
④ 抑うつ障害
間違いです。SDSうつ性自己評価尺度総得点30点なので問題ありません。
⑤ 遂行機能障害
間違いです。BADSの総プロフィール得点20点(カットオフポイントは11/12)なので問題ありません。
第2回 問23
日本語を母語としない成人の知能検査として、最も適切なものを1つ選べ。ただし、検査内容の説明程度は日本語で理解できるものとする。
① PARS-TR
② WISC-Ⅳ
③ ベンダー・ゲシュタルト検査
④ ウィスコンシンカード分類検査
⑤ コース立方体組み合わせテスト
① PARS-TR
間違いです。PARS-TR(親面接式自閉スペクトラム症評定尺度)は自閉スペクトラム症の検査です。
② WISC-Ⅳ
間違いです。WISC-Ⅳは、ウェクスラー式知能検査(児童版)です。
③ ベンダー・ゲシュタルト検査
間違いです。ベンダー・ゲシュタルト検査は、幾何学図形を模写することによって、ゲシュタルト機能の成熟程度およびその障害、心理的障害、器質的な脳障害、パーソナリティ傾向、知能的側面などの多方面にわたる情報を検査します。
④ ウィスコンシンカード分類検査
間違いです。ウィスコンシンカード分類検査は、前頭葉障害の影響が現れやすい遂行機能を評価する検査です。
⑤ コース立方体組み合わせテスト
これが正解です。コース立方体組み合わせテストは、日本語を母語としない人にも適用できます。
立方体を用いて17問の模様を作る検査です。
第5回 問12
高次脳機能障害における遂行機能障害の説明として、最も適切なものを1つ選べ。
① 話題が定まらない。
② 自発的な行動に乏しい。
③ 行動の計画を立てることができない。
④ ささいなことに興奮し、怒鳴り声をあげる。
⑤ 複数の作業に目配りすることができない。
選択肢③が正解です。
次の記事
次は、神経心理学検査の中では忘れてはいけない「ベンダー・ゲシュタルト検査」について。
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