個人の性格や人格に関するパーソナリティ理論は、「類型論」「特性論」「その他」に分類できます。
類型論&特性論
まとめ
類型論と特性論は重要ですので、以下の記事を参照してください。
しっかり読んでから次へ。
種別 | 人物 | 理論、キーワード | 類型、因子 | 類型数、因子数 | 性格検査 |
---|---|---|---|---|---|
類型論 | ユング(C.G.Jung) | 2態度:「内向型」「外向型」 4機能:思考、感情、感覚、直観 |
2類型 | ||
クレッチマー(E.Kretschmer) | 体型 | 「肥満型」「細身型」「筋骨型」 | 3類型 | ||
シェルドン(W.H.Sheldon) | 体型 | 「内臓緊張型」「身体緊張型」 「頭脳緊張型」 | 3類型 | ||
シュプランガー(E.Spranger) | 価値類型論 | 「理論型」「経済型」「審美型」「宗教型」「権力型」「社会型」 | 6類型 | ||
特性論 | オールポート(W.G.Allport) | 「共通特性」「個人特性」 | |||
キャッテル(R.B.Cattell) | 「共通特性」「独自特性」「表面特性」「根源特性」 | 16因子 | 16PF | ||
ギルフォード(J.P.Guilford) | 社会的外向性、思考的外向性、抑うつ性、回帰性傾向、のんきさ、一般的活動性、支配性、男性的傾向、劣等感、神経質、客観性の欠如、愛想の悪さ、協調性の欠如 | 13因子 | YG性格検査 | ||
クロニンジャー(C.R.Cloninger) | 4気質:新奇追求、損害回避、報酬依存、固執3性格:自尊心、協調性、自己超越性 | 7因子 | |||
アイゼンク(H.J.Eysenck) | 4階層モデル | 「内向性-外向性」「神経症傾向」「精神病傾向」 |
3因子 |
MPI、EPI | |
ゴールドバーグ(L.R.Goldberg) | ビッグファイブ | 「外向性」「神経症傾向」「開放性」「協調性」「誠実性」 | 5因子 |
トーマス&チェス「ニューヨーク縦断研究」
ここでは特性論の1つである「ニューヨーク縦断研究」を見てみましょう。
1977年、トマス(A.Thomas)とチェス(S.Chess)はニューヨークに住む中流から上流家庭の子供(乳児~青年)100名以上のパーソナリティを調査しました。
この研究は「ニューヨーク縦断研究」と呼ばれ、子どもたちに心理テストや観察法、周囲からの聞き取りを行い、気質を調べています。
結果的に以下の9特性に分類されました。
①活動性
②規則性(睡眠・食事・排泄など)
③接近・回避傾向
④順応性
⑤反応の強さ
⑥反応するために必要な刺激の閾値
⑦快・不快の感情表出度合い
⑧気の紛れやすさ
⑨注意の幅と持続性
これら9特性は、全て子供の行動に焦点を当てています。
全部覚えるのはタイヘンだけど、「子どもの行動」という点を覚えてね。
これら9特性を評価して、4タイプ(平均的、扱いやすい、扱いにくい、順応が遅い)に分類します。
その他のパーソナリティ理論
公認心理師国家試験には、類型論と特性論だけでは足りません。
以下の理論も覚えておきましょう。
スキナー:「学習理論」
学習理論のスキナー(B. F. Skinner)もパーソナリティについて言及しています。
オペラント条件づけのスキナーですね。
スキナーは、「パーソナリティとは個人の強化歴の結果として自発される行動の総体」と考えました。
つまりスキナーの学習理論に基づいて強化されていった結果がパーソナリティを形成するという理論です。
ケリー:「パーソナル・コンストラクト理論」
「パーソナル・コンストラクト理論」は、1955年にジョージ・ケリー(G.A.Kelly)が提唱したモデルです。
コンストラクトとは、「人間が目や耳などの感覚器で知覚した環境を意味のある世界として理解する際の認知の最小単位」であり、「窓が大きい―小さい」「室内が明るい―暗い」などの形容詞的性格をもつ一対の対立概念として表現されるものです。
例えば、下の図にあるように、黒猫を見たときに、人によって「黒さ」「かわいさ」などの感じ方は異なります。これは人それぞれに持っている「コンストラクトという色眼鏡」を通して見ているためと捉えるのが、パーソナル・コンストラクト理論です。
さらにこのコンストラクトは、様々なサブシステムで構成されるとても複雑な構造をしたメガネだと思ってください。そしてこのコンストラクトを理解することが、その人のパーソナリティを理解することにつながります。
・認知(解釈)の違いはコンストラクトの違い
・コンストラクトの理解=パーソナリティの理解
コンストラクト(construct)は、「組み立てる、構成する」などの意味です。
ここでは「現実を眺める透明なメガネ」と捉えましょう。
ミシェル:「認知-感情システム論」
ミシェル(W.Mischel)の認知-感情システム論では、「パーソナリティとは、実体のあるものではなく、その人の行動から抽象化された概念である」と捉え、状況と人の力動的な相互作用や双方向的な相互作用を重視します。
つまり、我々が「あの人の性格は〇〇だ」と考えるのは、その人の行動を見て抽象化しているってことなんです。
パーソナリティは機能的に異なる一連の相互に関連するサブシステム(認知、感情、動機等)から構成されると考えます。
レヴィン:「場理論」
場理論は、物理学の「場」の概念によって体系化しようとするものです。
レヴィン(K.Lewin)は、集団を心理学的な力の場であるとし、個々の事象を集団の構造との関係で捉えようとする「場理論」を提唱しました。
物理学の「場」とは、電磁場や重力場のような空間において定義された関数のことです。
この理論では、人の行動(B:Behavior)は、個人要因(P:Person)と環境要因(E:Environment)の関数であると捉えます。
つまり、人の行動を決めているのは、その人のパーソナリティなども含めたその人自身、そして環境、この2つであるということです。
B=f(P,E)
B:Behavior
P:Person
E:Environment
アトキンソン:「期待価値理論」
アトキンソン(J.W.Atkinson)の期待価値理論では、モチベーションの大きさは「目標達成への期待」と「成功による報酬の価値」によって決まると考えます。
例えば、オリンピックで金メダルを取ろうというモチベーションの高さは、その「目標までの距離」と「金メダルを得ることにどの程度価値を見出すか」の2つで決まるということですね。
グレイ:「強化感受性理論(気質モデル)」
グレイ(J.Gray)の強化感受性理論では、人間の行動は以下の2つの動機づけシステムの競合によって制御されていると考えます。
行動抑制系:BIS(Behavioral Inhibition System)
行動抑制系BISは、罰や欲求不満を引き起こす環境を避けようとする動機づけシステムです。
行動賦活系:BAS(Behavioral Activation System)
行動賦活系BASは、報酬や罰の不在をもたらす環境へ接近しようとする動機づけシステムです。
過去問
第1回 問9
パーソナリティの特性に根源特性と表面特性とを仮定し、根源特性として16因子を見出した心理学者は誰か。正しいものを1つ選べ。
① C.R.Cloninger
② G.A.Kelly
③ H.J.Eysenck
④ J.P.Guilford
⑤ R.B.Cattell
① C. R. Cloninger
間違いです。クロニンジャーは「7因子モデル(気質4因子+性格3因子)」を提唱した人です。
② G. A. Kelly
間違いです。ケリーは「パーソナル・コンストラクト理論」を提唱した人です。
③ H. J. Eysenck
間違いです。アイゼンクは「内向性-外向性」「神経症傾向」「精神病傾向」の3因子を設定しました。
④ J. P. Guilford
間違いです。ギルフォードは13因子を提唱し、YG性格検査の元となった「ギルフォード性格検査」を作成した人です。
⑤ R. B. Cattell
これが正解です。16因子と言えばキャッテルです。
第3回 問85
パーソナリティの理論について、正しいものを1つ選べ。
① 場理論では、環境とパーソナリティの二者関係をモデル化する。
② 期待−価値理論では、個人が生得的に有する期待、価値の観点から パーソナリティの個人差を考える。
③ 5因子理論では、5つの特性の上位に、行動抑制系、行動賦活系という2つの動機づけシステムを仮定する。
④ 認知−感情システム理論では、個人の中に認知的・感情的ユニットを仮定し、パーソナリティの構造を捉える。
⑤ パーソナル・コンストラクト理論では、個人の中にコンストラクトと呼ばれる単一の認知的枠組みを仮定する。
非常に難しい問題です。
① 場理論では、環境とパーソナリティの二者関係をモデル化する。
間違いです。場理論では、人の行動(B:Behavior)は、個人要因(P:Person)と環境要因(E:Environment)の関数であると捉えますので、環境とパーソナリティの二者関係ではなく、「行動」も含まれます。
② 期待−価値理論では、個人が生得的に有する期待、価値の観点から パーソナリティの個人差を考える。
間違いです。パーソナリティの個人差を考えるのではなく、モチベーションを考えます。
③ 5因子理論では、5つの特性の上位に、行動抑制系、行動賦活系という2つの動機づけシステムを仮定する。
間違いです。5因子理論「ビッグファイブ」では行動制御系や行動賦活系というシステムを仮定しません。これはグレイの「気質モデル(BIS-BASモデル)」です。
④ 認知−感情システム理論では、個人の中に認知的・感情的ユニットを仮定し、パーソナリティの構造を捉える。
これが正解です。
⑤ パーソナル・コンストラクト理論では、個人の中にコンストラクトと呼ばれる単一の認知的枠組みを仮定する。
間違いです。コンストラクトは個人の中にあるさまざまなサブシステムで構成されるので「単一の」認知的枠組みではありません。
第2回 問69
17歳の男子A、高校2年生。Aは、無遅刻無欠席で、いつもきちんとした身なりをしており真面目と評されていた。ところが、先日、クラスメイトの女子Bの自宅を突然訪ね、「デートに誘っても、いつも『今日は用事があるから、今度またね』と言っているけれど、その今度はいつなんだ」と、Bに対して激昂して大声で怒鳴りつけた。この経緯を知ったAの両親がAの心理を理解したいとAを連れて心理相談室を訪ねてきた。Aの心理特性について見立てるためのテストバッテリーに加えるものとして、最も適切なものを1つ選べ。
① AQ-J
② MPI
③ SDS
④ STAI
⑤ TEG
事例からAは発達障害っぽい?発言をしています。なので、自閉スペクトラム障害などの発達障害の検査を選べばOKです。パーソナリティ理論で学んだ「②MPI:モーズレイ人格目録」「⑤TEG:東大式エゴグラム」は性格検査でしたので今回の事例には不適切です。残り①、③、④を見ていきましょう。
① AQ-J
これが正解です。AQは自閉症スペクトラム障害のスクリーニング検査で、AQ-Jの「J」は、「Japanese version」のJです。
③ SDS
SDS(Self-rating Depression Scale)は、「自己評価式抑うつ性尺度」のことで、うつの程度を数値化することができます。
④ STAI
STAI (State-Trait Anxiety Inventory )は「状態・特性不安検査」のことで、患者の不安状態を測定する心理検査です。
第2回 問109
A.ThomasとS.Chessらによって行われた「ニューヨーク縦断研究」で見出された9つの気質に含まれないものを1つ選べ。
①外向性
②順応性
③活動水準
④接近・回避
⑤気の散りやすさ
この研究では、「子どもの行動」に焦点を当てて気質を評価しますので、選択肢の中では①外向性だけ仲間外れです。
「外向性」といえばユングやアイゼンクの因子になっていますので、入ってそうですが、入っていません。
次の記事
次は感情理論に入っていきます。まずは基本感情説から。
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