VINELAND-Ⅱ
このVINELAND-Ⅱ(ヴァインランド・ツー)、よく試験にでてきます。
VINELAND-Ⅱは「適応行動」の発達水準を捉え、標準得点で相対的な評価を行うことができます。
適応行動というのは、食事や身だしなみ、掃除、お金の管理、仕事、人間関係など、日常生活を送るために必要となる年齢相応のスキルですね。
子供の(発達障害の)アセスメントといえば「WISC-Ⅳ」や「新版K式発達検査2001」が有名ですが、VINELAND-Ⅱも合わせて覚えておきましょう。
以下のように厚生労働省も奨励しています。
知的障害や発達障害の人たちの支援を行うためには、IQによる診断だけでなく適応行動を把握することが重要になってきます。
検査方法
Vineland-Ⅱは保護者等からの半構造化面接を通じて、子どもの適応のレベルを明らかにします。
対象年齢は0歳0か月~92歳11か月と広いです。
保護者等に面接で聞き取りを行うので、0歳児でも検査ができるのです。
適応行動領域4種類と不適応行動領域、さらにそれぞれの下位領域から構成されています。
領域 | 下位領域 |
---|---|
コミュニケーション | 受容言語 |
表出言語 | |
読み書き | |
日常生活スキル | 身辺自立 |
家事 | |
地域生活 | |
社会性 | 対人関係 |
遊びと余暇 | |
コーピングスキル | |
運動スキル | 粗大運動 |
微細運動 | |
不適応行動 | 内在化問題 |
外在化問題 | |
その他 | |
不適応行動重要事項 |
評価方法
「コミュニケーション」「日常生活スキル」「社会性」「運動スキル」 の各領域で標準スコア(平均値M=100、標準偏差SD=15)が得られ、これらの領域を総合した「適応行動総合点」が算出されます
各領域を構成する下位領域では、v評価点と呼ばれる標準スコア(M=15、SD=3)が得られます。
CBCL(子どもの行動チェックリスト)
CBCL(Child Behavior Checklist)は、トーマス・M・アッケンバック (T.M.Achenbach)が開発した幼児期から思春期までの子供の情緒や行動、社会性を包括的に評価する検査法です。
CBCLは、親などの養育者に過去6か月間の子どもの状態について回答する質問紙で、1歳半~5歳を対象としたCBCL/11/2-5、6~18歳を対象としたCBCL/6-18などがあります。
子供の生活における感情的、行動的、社会的側面を測定するための重要な尺度であり、ADHD、反抗挑戦性障害、行為障害、小児うつ病、分離不安障害、小児期の恐怖症、社交不安障害、特定の恐怖症、その他小児期から青年期までの様々な行動と感情の問題の診断に用いられます。
過去問
第3回 問72
8歳の男児 A、小学2年生。
授業についていけないという保護者からの主訴で、児童精神科クリニックを受診した。
家庭生活では問題なく、勉強も家で教えればできるとのことであった。
田中ビネー知能検査では IQ69、Vineland-Ⅱでは、各下位領域のv評価点は9~11であった。
Aの評価として、最も適切なものを1つ選べ。
① 知的機能が低く、適応行動の評価点も低いため、知的能力障害の可能性が高い。
② 知的機能は低いが、適応行動の評価点は平均的であるため、知的能力障害の可能性は低い。
③ 保護者によると、家庭生活では問題ないとのことであるが、授業についていけないため、学習障害の可能性が高い。
④ 保護者によると、勉強も家で教えればできるとのことであるが、授業についていけないため、学校の教授法に問題がある可能性が高い。
田中ビネー知能検査でIQ69なので、知的障害(IQ70未満)です。
さらにVineland-Ⅱの各下位領域のv評価点9~11は低い数値です(標準点15±3)。
なので適応行動の評価点が低く、選択肢①が正解です。
第2回 問60
21歳の女性A、会社員。
伝えたいことを言葉で表現することが苦手で、不安が高まるとますますコミュニケーションが困難となる。
職場では、苦手な電話対応を担当業務から除き、作業の指示にあたってもメモを活用するなど、十分な配慮を受けており、職場の居心地は良く、仕事にもやりがいを感じている。
他方、自宅から職場が遠く、また自立したいという希望もあるが、親元を離れて一人暮らしを始めることに不安を感じている。
Aはその相談のため会社が契約する心理相談室に来室した。
心理相談室の公認心理師がAの支援をするにあたり、Aに実施するテストバッテリーに含める心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① CBCL
② Conners3
③ IES-R
④ Vineland-Ⅱ
⑤ VRT
① CBCL
間違いです。CBCL(Child Behavior Checklist)はその名の通り「子供の行動チェックリスト」なので、事例の21歳には適用できません。
② Conners3
間違いです。Conners3はコナーズ博士が開発したADHD(注意欠陥/多動性障害)の検査です。
③ IES-R
間違いです。IES-R (Impact of Event Scale-Revised)は、改訂出来事インパクト尺度日本語版で、PTSDの診断に用いられます。
④ Vineland-Ⅱ
これが正解です。Vineland-Ⅱは適応行動全般を検査でき、特に発達障害のアセスメントとしてADOS、ADI-R、ウェクスラー式知能検査などとともに用いられることが多いです。
⑤ VRT
間違いです。VRT(Vocational Readiness Test)とは、職業レディネス・テストのことです。
レディネスは「準備」ですね。
第5回 問99
知的障害児の適応行動の評価で使用する心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① CDR
② WISC-Ⅳ
③ Vineland-Ⅱ
④ 田中ビネー知能検査Ⅴ
⑤ グッドイナフ人物画検査
選択肢③が正解です。知的障害児、発達障害児に対して厚生労働省が奨励しているだけあって、よく出題されますね。
次の記事
ここからは、PTSDや強迫性障害などの精神疾患についての検査です。
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