カール・ロジャーズ(C.R.Rogers)により創始された来談者中心療法(クライエント中心療法)は、心理カウンセリングに広く使われている技法です。
この来談者中心療法(クライエント中心療法)から様々な心理療法が派生していますが、その中でも代表的なものとして「フォーカシング」があります。
フォーカシング&フェルトセンス
「フォーカシング」はアメリカの哲学者・臨床心理学者であるジェンドリン(E.T.Gendlin)が提唱した体験過程理論に基づいた心理療法です。
ジェンドリンは精神分析療法を創始したフロイトと同じオーストリアのウィーンで生まれました。
オーストラリアからアメリカに渡り、シカゴ大学で哲学を学んだ後、ロジャースのもとでカウンセリングについて学びます。
来談者中心療法のロジャースです。
ジェンドリンは、カウンセリングの中で、クライエントの言葉にならない感情に着目します。
この不明瞭な「言葉にならない身体感覚」をフェルトセンスと呼び、フェルトセンスを明確化する過程をフォーカシングと呼んでいます。
言葉で表せない「感じ」を抱く過去の体験は誰もが持っていますよね。
カウンセリングでは、クライエントが過去の体験を語る中で、話す内容ではなく「話し方」が重要であることがわかってきます。
過去の体験自体ではなく、過去の体験について「今、どのように感じているか」が重要で、フォーカシングでは過去ではなく「今」にフォーカスします。
フェルトシフト
言葉にならない感情(フェルトセンス)を明確化していくフォーカシングによって、クライエントの中で体験の意味が変化する「気づき」が起こりますが、これをフェルトシフトと呼びます。
つまりフォーカシングとは、「気づき」によってフェルトシフトを促し変化を進めていく心理療法です。
過去問
第1回 問114
フォーカシング指向心理療法の基本的な考え方や技法について、最も適切なものを1つ選べ。
① 過去から現在までの体験の積み重ねを共同作業の中で丁寧に検討する。
② 情動体験をより深く十分に感じることによって変化することを目指す。
③ 問題や状況について、本人が既に分かっている気づきを更に深めるように質問を重ねていく。
④ クライエントが自身の身体に起こる、まだ言葉にならない意味の感覚に注意を向けるよう援助する。
① 過去から現在までの体験の積み重ねを共同作業の中で丁寧に検討する。
間違いです。過去の体験の事実確認ではなく、その体験について「今」どのように感じているかを重視します。
② 情動体験をより深く十分に感じることによって変化することを目指す。
間違いです。フォーカシングでは、フェルトシフトと呼ばれる変化を目指しますが、これは情動体験をより深く感じることによる変化ではなく、今まで気づかなかったことが思い浮かんだり、気がかりなことに対する考え方が変化する「気づき」によるものです。
③ 問題や状況について、本人が既に分かっている気づきを更に深めるように質問を重ねていく。
間違いです。「本人が既に分かっている気づき」ではなく、言葉にならない「なんとなく感じているもの」に焦点を当てます。
④ クライエントが自身の身体に起こる、まだ言葉にならない意味の感覚に注意を向けるよう援助する。
これが正解です。言葉にならない意味の感覚がフェルトセンスですね。
第2回 問18
E.T.Gendlinは、問題や状況についての、まだはっきりしない意味を含む、「からだ」で体験される感じに注目し、それを象徴化することが心理療法における変化の中核的プロセスだとした。
この「からだ」で体験される感じを表す用語を1つ選べ。
① コンテーナー
② ドリームボディ
③ フェルトセンス
④ フォーカシング
⑤ センサリー・アウェアネス
選択肢③のフェルトセンスが正解です。
ジェンドリンと言えば、フォーカシング、フェルトセンス、フェルトシフトは覚えておきましょう。
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次は、ゲシュタルト療法についてです。心理学はゲシュタルト好きですね。
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