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【心理学の歴史】3大潮流(精神分析学、行動主義心理学、ゲシュタルト心理学)

【心理学の歴史】三大潮流 心理学
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19世紀までの心理学は、哲学の一領域でした。

それが、19世紀に入り心理学が「科学」として成立します。

ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(H.Ebbinghaus)は、1908年に出版した「心理学要論(Abriss der psychologie)」の中で、心理学は「過去は長いが、歴史は短い」と書いています。

ホントに短い歴史なので、全部おぼえてね。

心理学の歴史(三大潮流)
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19世紀~心理学のはじまり

「要素主義」by ヴント

心理学の始まりは、ドイツの生理学者ヴィルヘルム・マクシミリアン・ヴント(W.Wundt)です。

1879年、ヴントはライプツィヒ大学に心理学実験室を開設し、これをきっかけに、哲学の一領域から「科学」としての心理学が誕生します。

ヴントは「実験心理学の父」と呼ばれています。

彼の考え方は「要素主義(構成主義)」で、研究対象は「意識」です。

つまり、人間の意識を分析して心理を理解するというもので、その意識はいくつかの要素で構成されると考えました。

そして、意識の構成要素は純粋感覚と単純感情であり、それらの複合体として意識の成り立ちを説明できると捉えます。

すなわち、物質の成り立ち(分子や原子の複合体)と同じ仕組みが心理の世界でも生じると考えたわけです。

そして、実験参加者自身に自己分析して意識内容を話してもらうという「内観法」を取り入れています。

ヴントの考えをより厳密にして、学問体系として整備したのがティチェナー(E.B.Titchener)です。

ティチェナーは、要素の「構成」に着目していたために、「構成主義」と呼ばれるようになります。

ティチェナーとヴントの違いは、意識の基本的要素を統合するか否かです。

ヴントは心的要素間の結合様式を解明しようとしたのに対し、ティチェナーは統合することには関知しませんでした。

20世紀に入り、このようなヴントの要素主義心理学に批判が起こってきます。

研究の対象が「意識」であること、意識を要素に分けるということ、内観法を用いていることなどが批判されます。

この批判から20世紀前半の心理学の大潮流として、精神分析学(オーストリア)、ゲシュタルト心理学(ドイツ)、行動主義心理学(アメリカ)の3大潮流が生まれてきます。

20世紀前半~心理学の3大潮流

心理学の3大潮流は以下の3つです。

・精神分析学(オーストリア)
・ゲシュタルト心理学(ドイツ)
・行動主義心理学(アメリカ)

「精神分析学」by フロイト

20世紀に入り、まずジークムント・フロイト(S.Freud)による精神分析学が興ります。

ヴントの要素主義では「意識」を研究対象にしましたが、フロイトは「無意識」を対象にしました。

意識よりも無意識の中にこそ、多くの知識や情報が蓄積されていると考えたのです。

無意識というのは、思い出したくない感情等の集まりであり、意識と無意識の間は「自我」が調整すると考えました。

精神分析の考え方のうち、自我の機能を中心として人間の心を捉えようとした学派を「自我心理学」といいます。

「ゲシュタルト心理学」by ヴェルトハイマー

次に興ってきたのはゲシュタルト心理学です。

ドイツのマックス・ヴェルトハイマー(M.Wertheimer)は、ヴントの要素主義のように要素に分解するという点を批判し、人の複雑な行動や心理は要素に分解するのは困難で、全体性や構造を重点にとらえるべきと考えました。

ゲシュタルトは「形態」「全体」という意味のドイツ語です。

ゲシュタルト心理学では、グラーツ学派とベルリン学派がありますが、ベルリン学派では仮現運動やプレグナンツの原理、ゲシュタルト要因(連続、近接、閉合、類同)など「知覚」に関する研究が代表的です。

ベルリン学派では、それまでの知覚の考え方(恒常仮定)を否定し、「知覚の恒常性」を示しました。

また、仮現運動や恒常性などの「知覚」を研究対象にしています。

例えば、電光掲示板に見られる仮現運動は、それぞれの要素は点滅しているだけなのに、全体では動いているように見えます。

つまり要素主義の考え方だと単なる点滅にしか見えないはずなのに、人間には動いて見えるということで、ゲシュタルト心理学の特徴は、「知覚」を要素主義的に捉えることを批判し、「ゲシュタルト(形態、全体)」を捉えることを重視します。

この考え方は、ケーラーの洞察学習やレヴィンの集団力学にも影響を与えています。

「場の理論」 by レヴィン

ドイツのクルト・レヴィン(K.Z.Lewin)は、「場の理論」を提唱します。

場の理論では「人の行動には、その人の特性と周囲の環境が関係している」と捉えます。

現在行われているゲシュタルト療法も「場の理論」に影響を受けており、グループという「場」を大切にし、グループで考え方や人生経験の違う人たちと影響し合うことを経験します。

「洞察学習」by ケーラー

ドイツのヴォルフガング・ケーラー(W.Kohler)は、アフリカで類人猿の研究(チンパンジーの実験)に取り組みました。

チンパンジーがそれまで試みたことのない方法で天井から吊り下がったバナナを取ることを観察し、「洞察」の重要性を説きます。

ソーンダイクの提唱した「試行錯誤による学習」ではなく、場所全体を見渡し、その場の力を重視する「洞察学習」を提唱しています。

行動主義心理学 by ワトソン

アメリカの心理学者ジョン・ワトソン(J.B.Watson)は、ヴントの用いた内観法は外部から観察できず本人の主観や思い込みが入ってしまうことを批判し、客観的に観察できる「行動」を研究対象にしました。

ワトソンで有名なのは「アルバート坊やの実験」です。

この実験は、アルバート坊や(1歳未満の乳児)にネズミを見せて、背後で金属の棒を金づちで叩いて大きな音を出すことを繰り返すと、ネズミを見ただけで泣き出すようになるというものです。

かわいそすぎる・・・

この実験は、パブロフの犬と同じように、「レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ)」を示したものです。

このようにワトソンは人間の行動だけに着目して研究を行いました。

まとめ

心理学のはじまり 特徴 批判 3大潮流
要素主義 人間の「意識」に着目 意識ではなく「無意識」が重要 精神分析学
意識を要素に分解 要素ではなく「全体」を捉えるべき ゲシュタルト心理学
内観法を用いる 内観では主観的なので客観的に観察できる「行動」に着目 行動主義心理学

3大潮流以降の心理学

新行動主義心理学

行動主義は刺激Sと反応Rの関係を考察するものでした。

アルバード坊やの実験やパブロフの犬のような古典的条件づけですね。

ただ、刺激Sと反応Rの関係だけでは説明できない場合があります。

例えば、パブロフの犬の実験でも、餌があるからといって常に反応するわけではありません。

空腹状態と満腹状態では行動が違ってくるでしょう。

ということで、刺激Sと反応Rの間に、内的状態Oを想定します。

このような内的状態Oを操作主義によって可視化します。

操作主義とは、目に見えない状態であっても目に見えるよう数値化すること。
例えば知能は目に見えないけど、知能指数IQは客観的に認識できます。この操作主義によって目に見えない内的状態を目に見える形にします。

「潜在学習」by トールマン

アメリカの心理学者エドワード・トールマン(E.C.Tolman)は、上記のような新行動主義の考え方(SとRの間のOを想定する)に加えて、ネズミの迷路学習による「認知地図」と「潜在学習」が有名です。

詳細は以下の記事で。

【学習理論】オペラント条件づけ&レスポンデント条件づけ、そして潜在学習&試行錯誤学習
様々な学習理論について見ていきましょう。バラス・フレデリック・スキナー(B.F.Skinner)は、人や動物の行動をレスポンデントとオペラントに分類しました。まずは、レスポンデント行動は条件反射的な行動、オペラント行動は学...

「動因低減説」by ハル

アメリカの心理学者クラーク・ハル(C.L.Hull)が唱えた動因低減説は、刺激S、反応R、動因Dなどの関係を数式化して説明するもので、「反応が起こりやすくなるのは、反応することによって動因を引き下げることができるからである」と考えます。

つまり、反応Rが動因Dを満足させ、高まっている動因Dを低減させることによって、刺激Sと反応Rのつながりが強化されると考えます。

「オペラント条件づけ」 by スキナー

スキナーも、トールマンやハルとは少し路線が違いますが、「新行動主義心理学」です。

スキナーといえばスキナー箱の実験です。

詳しくは以下の記事で。

【学習理論】オペラント条件づけ&レスポンデント条件づけ、そして潜在学習&試行錯誤学習
様々な学習理論について見ていきましょう。バラス・フレデリック・スキナー(B.F.Skinner)は、人や動物の行動をレスポンデントとオペラントに分類しました。まずは、レスポンデント行動は条件反射的な行動、オペラント行動は学...

このように、行動主義~新行動主義に至るまで、観察可能な「行動」に着目しているので、動物実験が多いですね。

認知心理学

1950年代に入ると、それまで「行動」に着目していた行動主義ではなく「行動の裏にある心を考えるべき」という考え方が台頭します。

ここから認知心理学が生まれ、思考や記憶、意思決定といった人の認知過程を解明する動きは始まります。

認知心理学は、情報処理の観点から生体の認知活動を研究する心理学です。

R.ラックマン(R.Lachman)によると認知心理学では、人間をコンピュータと同様に情報を処理するシステムと考え、人間の心的過程をコンピューターの情報処理(符号化、貯蔵、比較、検索など)になぞらえて捉えます。

確かに人間の心の働きは複雑なので簡単には説明できませんが、突き詰めるとこのようないくつかの基本的な概念で説明できると考えます。

現代の認知心理学では、人が意識的および無意識的に行っているさまざまな情報処理の仕組みが、徐々に明らかになってきています。

まとめ

ヴントの要素主義の批判から誕生した、三大潮流を押さえましょう。

ヴントの要素主義の特徴は「意識」を「要素」に分けること。

そして以下のような3つの批判から三大潮流が生まれます。

<三大潮流>
ゲシュタルト心理学:要素ではなく、全体性を重視
行動主義:意識ではなく、行動を重視
精神分析学:意識ではなく、無意識を重視
心理学 人物 キーワード 研究対象 実験
1879年 要素主義
(構成主義)
W.ヴント 内観法 意識 世界初の心理学実験室
1900年 精神分析学 S.フロイト エス、自我、超自我 無意識  
1910年代~ ゲシュタルト心理学 M.ヴェルトハイマー 全体 知覚  
K.レヴィン 場の理論    
W.ケーラー 洞察学習   チンパンジーの実験
1911年   E.L.ソーンダイク 試行錯誤学習   猫の問題箱の実験
1919年 行動主義心理学 J.B.ワトソン 刺激S→反応R 行動 アルバート坊やの実験
1930年代~ 新行動主義心理学 E.トールマン 認知地図、潜在学習
刺激S→有機体O→反応R
行動 ネズミの実験
C.L.ハル 動因低減説    
B.F.スキナー オペラント条件づけ   スキナー箱
1902年   I.P.パブロフ 古典的条件づけ   パブロフの犬

青字は対で覚えてね。

過去問

第1回(追試)問5

世界で最初の心理学実験室を創設したW.Wundtの心理学の特徴として、正しいものを1つ選べ。
① 行動レベルの反応を測定した。
② 心的過程の全体性を重視した。
③ 無意識の研究の発端となった。
④ ヒト以外の動物も実験対象とした。
⑤ 心的要素間の結合様式を解明しようとした。

ヴントの要素主義から心理学が始まり、行動心理学、ゲシュタルト心理学、精神分析学の三大潮流の流れを知っていればすべての選択肢がわかります。

① 行動レベルの反応を測定した。
「行動」といえば行動主義心理学です。

② 心的過程の全体性を重視した。
「全体性」といえばゲシュタルト心理学です。

③ 無意識の研究の発端となった。
「無意識」といえば精神分析学です。
ヴントが「意識」を研究対象にしたことと対照的です。

④ ヒト以外の動物も実験対象とした。
これは、「行動主義心理学」の内容です。
行動主義では、もともとパブロフの研究を参考に、その後の新行動主義では、スキナーやハル、トールマンなども動物を用いた実験研究を行っています。

⑤ 心的要素間の結合様式を解明しようとした。
これが正解です。ヴントは要素主義の名の通り、意識を要素に分けてその結合様式を解明しようとしました。

このように心理学全体の流れを知っていれば、他の選択肢の意味も分かるので消去法でも正解できます。

第1回(追試)問4

ゲシュタルト心理学において中心的に研究され、現在も継続して研究されているものとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 学習
② 感情
③ 態度
④ 知覚
⑤ 集団特性

ゲシュタルト心理学では、「知覚の恒常性」を示したように、「知覚」に関する研究が行われています。ということで選択肢④が正解です。

ただし、ゲシュタルト心理学の流れで、ケーラーの洞察学習(選択肢①)やレヴィンの集団特性(選択肢⑤)にも影響を与えているので、間違わないよう注意しましょう。
①や⑤はゲシュタルト心理学だけの流れではありませんので。

第2回 問3

20世紀前半の心理学の3大潮流とは、ゲシュタルト心理学、行動主義ともう1つは何か、正しいものを1つ選べ。
① 性格心理学
② 精神分析学
③ 認知心理学
④ 発達心理学
⑤ 人間性心理学

選択肢②が正解です。

以下が3大潮流です。

ゲシュタルト心理学:要素ではなく全体性を重視
行動主義:意識ではなく行動を重視
精神分析学:意識ではなく無意識を重視

第4回 問4

心的過程の”全体”や”場”を重んじ集団力学誕生の契機となった心理学の考え方として最も適切なものを1つ選べ。
① 構成心理学
② 比較心理学
③ 行動主義心理学
④ 新行動主義心理学
⑤ ゲシュタルト心理学

「全体」といえばゲシュタルト、レヴィンの「場の理論」「集団力学」に影響を与えたのも、選択肢⑤「ゲシュタルト心理学」です。

第1回 問79

認知心理学について、最も適切なものを1つ選べ。
① まとまりのある全体性を重視する。
② 内観と実験との2つを研究手法とする。
③ 観察可能な刺激と反応との関係性を重視する。
④ 心的過程は情報処理過程であるという考え方に基づく。
⑤ 心理の一般性原理を背景にしながら個人の個別性を重視する。

20世紀の3大潮流である「精神分析学」「ゲシュタルト心理学」「行動主義心理学」、その後1950年以降に出てきたのが「認知心理学」です。

① まとまりのある全体性を重視する。
「全体性」といえばゲシュタルト心理学です。

② 内観と実験との2つを研究手法とする。
「内観法」を用いたのは心理学の始まりである「要素主義」です。

③ 観察可能な刺激と反応との関係性を重視する。
観察可能な刺激Sと反応R(S-R連合理論)を研究したのは「行動主義」です。
観察可能な行動を研究対象にしたのです。

④ 心的過程は情報処理過程であるという考え方に基づく。
これが正解です。認知心理学では、人間の認知の仕組みをコンピュータの情報処理過程になぞらえて捉えます。

⑤ 心理の一般性原理を背景にしながら個人の個別性を重視する。
これは臨床心理学全般の内容だと思われます。
セラピストは一般的な原理をしっかり把握しつつ、クライアントそれぞれの個別性を重視することが求められます。

講義動画

次の記事

次は、3大潮流のつづきの歴史「3大勢力」を見ていきます。

【心理学の歴史】3大勢力(精神分析学、行動主義心理学、人間性心理学)
心理学の三大潮流を学んだら、次は三大勢力です。そして第三の勢力である「人間性心理学」について詳しく学びましょう。心理学の3大勢力心理学の3大潮流から生まれた精神分析学と行動主義心理学、これが1960年代には...

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