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【学習心理学】試行錯誤学習、洞察学習、オペラント学習、潜在学習、味覚嫌悪学習、学習性無力感

学習心理学 学習&言語
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学習心理学とは

学習心理学は、個人がどのように行動するのか、またその行動をどのようにしたら変えられるのかなどを研究する学問です。

特徴は以下の2点。

・人間や動物を集団から切り離して個体として扱う
・心ではなく観察可能な行動に着目する

研究対象

学習心理学の研究対象は、人や動物の「行動」です。

人や動物の行動は、レスポンデント行動とオペラント行動に分類されます。

レスポンデント行動(古典的条件づけ)は、外的刺激によって無意識的に引き起こされる不随意反応で、オペラント行動は学習によって自発的に行う行動です。

学習心理学では主にオペラント行動を扱います。

詳細は以下の記事で。

【学習理論】オペラント条件づけ&レスポンデント条件づけ、そして潜在学習&試行錯誤学習
様々な学習理論について見ていきましょう。バラス・フレデリック・スキナー(B.F.Skinner)は、人や動物の行動をレスポンデントとオペラントに分類しました。まずは、レスポンデント行動は条件反射的な行動、オペラント行動は学...

研究手法

学習心理学で扱うのは「目に見える行動」ですから、行動を観察したり比較したりすることが研究の中心です。

具体的には、対象を自然な状態で観察する行動観察法、刺激の結果としての行動を観察し刺激のない場合と比較する行動実験法があります。

行動実験法には、同じ個体で刺激の有無を変化させて差を見る「単一事例実験」と、実験群と統制群に分けて実験する「対照実験」があります。

詳細は以下の記事で。

【効果測定】単一事例実験計画法&集団比較実験計画法
心理療法などの効果を測定するには、大きく2種類の実験方法(単一事例実験、集団比較実験)があります。詳しくは以下の記事で。事例研究心理療法の効果を測定するには、エビデンス(証拠、根拠)に基づいたアプローチ(エビデ...

具体的な研究事例

「古典的条件づけ(レスポンデント条件づけ)」 by ワトソン

観察可能な行動に着目する学習心理学のはじまりは、ワトソンの「行動主義心理学」です。

心理学の三大潮流の1つでしたね。

行動主義の父と呼ばれたワトソンは、刺激と反応の関係を理論化すれば行動が制御できると考え「1ダースの赤ん坊と自由にできる環境があれば、医師、法律家、芸術家など、どのような専門家にでも育てられる」と豪語しました。

1920年、ワトソンの実施した「アルバート坊やの実験」は、アルバート坊やという乳児に対して「鉄棒をハンマーで叩いて、音を鳴らしてからネズミを見せる」という行動を繰り返すと、アルバート坊やはネズミを見るだけで泣くようになるという実験です。

パブロフの犬もレスポンデント条件づけの実験だったけど、犬ではなく人間でやろうとしたのがワトソンなんだね。今こんな実験やったら児童虐待で逮捕されるよ!

アルバート坊や

これはレスポンデント条件づけの中でも恐怖条件づけと呼ばれるものです。

さらにアルバート坊やはこの実験の後、ネズミだけでなくウサギや髭のついたお面などにも恐怖反応を示すようになってしまいました。

これを、刺激般化と呼びます。

アルバート坊や、かわいそう・・・

こうして本人も気づかないうちに、条件づけられたり刺激般化されたりして恐怖の対象となっているトラウマのようなものがあります。

行動療法ではこうして結びついた恐怖反応をエクスポージャー法などを用いてなくしていきます。

「試行錯誤学習」 by ソーンダイク

1896年、アメリカの教育心理学者であるソーンダイク(E.L.Thorndike)は「ネコの問題箱の実験」を行い、試行錯誤学習を提唱しています。

白猫

試行錯誤学習は、デタラメにやっていたら偶然うまくいったという行動が何度か続くうちに定着するという学習です。

この実験では、様々なサイズの問題箱にドアを開くためのいろいろな仕掛けを作り、空腹のネコが問題箱からの脱出する時間を計測しました。

はじめはドアが開く仕掛けに気付かず出られないのですが、偶然仕掛けにつながっているひもを引いたりペダルを踏んだりして脱出に成功し、外にある餌を食べることができるという経験を繰り返すことで脱出に有効な行動だけが残り脱出に要する時間も短縮されていきます。

このような偶然の成功から無効な行動が排除されて課題解決に必要な行動だけが残されていく過程をソーンダイクは「試行錯誤学習」と呼びました。

「洞察学習」by ケーラー

ケーラー(W.Köhler)のチンパンジーの実験は、チンパンジーが天井につるしたバナナを得ようと跳びついても取れなかったときに、部屋に置かれた箱を重ねてバナナをとったり手近にある棒を用いて餌をとることに成功したというものです。

チンパンジー

これはソーンダイクの試行錯誤学習にあるような試行錯誤の過程を経ずに、洞察によって一気に解決行動に至るというものです。

ソーンダイクの試行錯誤学習と対比させて覚えましょう。

ケーラーの洞察学習はゲシュタルト心理学でしたね。

「オペラント学習」by スキナー

1938年、アメリカの心理学者スキナー(B.F.Skinner)は、空腹のネズミをスキナー箱(レバーを押すと餌が出る箱)に閉じ込めておき、偶然レバーを押して餌を得ると、次第にレバーを押す行動が増えるというオペラント学習を示しました。

ネズミ

これがオペラント条件づけを示した実験だね。ソーンダイクの実験のネズミ版だね。
ネコちゃんではかわいそうだからね。

「潜在学習」 by トールマン

1930年代、アメリカの心理学者トールマン(E.C.Tolman)は、ネズミの迷路学習実験で「潜在学習」を見出しています。

ネズミ

この実験は、ゴール地点に餌がなくても事前に迷路を走る経験から「認知地図」を作り出し、いざ餌が与えられたらその地図を内的に読みながら素早くゴール地点に向かえるという潜在学習を示したものです。

つまり潜在学習は、報酬がない時期に潜在的に進行していた学習が、報酬によって顕在化するという学習の形態です。

「学習セット」 by ハーロウ

1950年代、アメリカの心理学者ハーロウ(H.F.Harlow)は、ウィスコンシン大学でアカゲザルを対象に実験を行いました。

アカゲザル

アカゲザルに同じような課題に連続で取り組ませ、その中でアカゲザルが「学習することを学習する」現象を見出しました。

アカゲザルは課題を呈示されても最初は解き方が分からず、同じような問題に取り組んでいくうちにどうすれば正答できるかが分かるようになってきます。

コツがつかめてほぼ確実に正解できるようになった頃に、類似の別の課題に移ります。

このとき、以前よりも短い時間で正解できるようになっています。

こうして何度も課題をこなした後では、問題が変わってもそれまでと類似した問題であれば、すぐに正解できるようになっていきます。

これは、何度も取り組んでいくうちに課題の仕組みが分かってきて「学習することを学習した」ということです。

このような現象のことを、ハーロウは「学習セット」の形成と呼びました。

国家試験に向けた勉強でもそうです。最初は学習方法がわからないのでとても時間がかかりますが、勉強を重ねていくうちに学習の仕方がわかってきて、学習した内容が他の分野にも役立ってさらに効率よく知識が身についていきます。最初のうちは、遅々として進まない勉強にイライラしますが、数カ月勉強していると、一気に効率がアップします。

「味覚嫌悪学習」by ガルシア

1955年、ガルシア(J.Garcia)はラットによる実験で味覚嫌悪学習を見出し、「ガルシア効果」と呼ばれています。

ラット

ガルシア効果とは、特定の食べ物の摂取後に内臓不快感を経験すると、その食べ物の味覚刺激への嫌悪反応が学習されることを指します。

食べ物を摂取した後に体調が悪くなると、以後同じ食べ物が嫌いになるという現象ですね。

これはレスポンデント行動でしょうか、オペラント行動でしょうか。

もともとはレスポンデント行動だと思われていました。

ただ、レスポンデント条件づけは、パブロフの犬に代表されるように何度も繰り返されることで形になるはずで、味覚による嫌悪学習はたった1回の経験でも学習できたり、味覚刺激と内臓不快感の感覚が数時間に及んでも学習が可能であるという点で、レスポンデント行動の条件には当てはまりません。

通常ラットは自然の中で食物を選ぶのに味覚に頼るので、味と吐き気の間の連合は促進されますが、音や光と吐き気は促進されにくくなっています。

ラット以外であれば味覚よりも光や音との連合がより促進されるかもしれません。

つまり、味覚嫌悪学習の実験では、学習が「生物学的制約」を受けることが示されました。

「学習性無力感」by セリグマン

アメリカの心理学者セリグマン(M.E.P.Seligman)は、「努力が成果に結びつかない体験を通して無気力が学習されること(学習性無力感)」を、イヌを用いた実験から明らかにしました。

犬

実験では、予告信号のあとに犬に電気ショックを与え、壁を飛び越せば電気ショックを回避できるようにし、「電気ショックを回避できない状況を経験した犬」と「足でパネルを押すことで電気ショックを終了させられる状況を経験した犬」の二つの集団を比較すると、前者の方が回避できない回数が増えました。

つまり、電気ショックを回避できないことを何度も経験する中で無力感を感じて回避行動をとらなくなったということです。

人間の場合であれば、長期に渡り監禁されたり暴力を振るわれたりする状況に置かれた場合、積極的にその状況から抜け出そうとする努力をしなくなります。

少し努力をすればその状況から抜け出せる可能性があったとしても、努力すれば成功するかもしれないという事すら考えられなくなります。

このように努力が成果に結びつかない経験が繰り返されることで、無気力が学習されます。

人間だけじゃなくて犬でも無気力になるんですねぇ・・・

まとめ

学習 実験 研究者 派閥
1896年 試行錯誤学習 猫の問題箱の実験 ソーンダイク  
1902年 レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ) パブロフの犬 パブロフ 行動主義
1910年代 洞察学習 チンパンジーの実験 ケーラー ゲシュタルト心理学
1920年 レスポンデント条件づけ(古典的条件づけ) アルバート坊やの実験 ワトソン 行動主義
1938年 オペラント学習 ネズミによるスキナー箱の実験 スキナー 新行動主義
1930年代 潜在学習 ネズミの迷路学習実験 トールマン 新行動主義
1950年代 学習セット アカゲザルの実験 ハーロウ  
1955年 味覚嫌悪学習 ラットの実験 ガルシア  
1967年 学習性無力感 イヌの実験 セリグマン  

過去問

第3回 問84 

学習の生物的制約を示した実験の例として、最も適切なものを1つ選べ。
① E.L.Thorndike が行ったネコの試行錯誤学習の実験
② H.F.Harlow が行ったアカゲザルの学習セットの実験
③ J.Garciaらが行ったラットの味覚嫌悪学習の実験
④ M.E.P.Seligmanらが行ったイヌの学習性無力感の実験
⑤ W.Köhlerが行ったチンパンジーの洞察学習の実験

選択肢③が正解です。

第1回 問23

学習性無力感はどのような体験が繰り返されることで生じるか。正しいものを1つ選べ。
① 他者から非難される体験
② 特定の課題を遂行する体験
③ 特定の行動を回避する体験
④ 努力が成果に結びつかない体験
⑤ 特定の場面での不安や緊張の体験

選択肢④が正解です。

次の記事

次は、学習性無力感を提唱したセリグマンの「ポジティブ心理学」です。

【ポジティブ心理学】PERMA by セリグマン
人間性心理学1950年代に生まれた心理学の第三勢力「人間性心理学」では、病的状態の治療にだけでなく人間の正常で健康な側面を重視し、人のネガティブな面に枠組みを置くのではなく、可能性や成長、自己実現に研究の焦点を当ててきました。...

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