スーパービジョン
スーパービジョンとは、対人援助職者(スーパーバイジー)が指導者(スーパーバイザー)から教育を受ける過程です。
スーパーバイジーの発達段階に合わせたスーパービジョンが必要です。
スーパービジョンに関する基本的な内容は以下の記事で。
目的
スーパービジョンの目的は、心理療法理論の臨床場面への応用と概念化や特定スキルの熟達といった「技術の習得」だけでなく、自己課題の発見や自己点検といった「内省の促進」も含まれます。
・自己課題の発見
・自己点検
関係性
スーパービジョンにおいて、スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係性は「上下関係」です。
心理職の場合、カウンセリングを行う際のセラピストとクライエントの関係は「対等」です。
なのでスーパービジョンでは、スーパーバイジーの抱える悩みをカウンセリングしたり、心理療法を実施したりはしません。
多重関係になってしまいますから。
種類
スーパービジョンには以下のような形があります。
ライブスーパービジョンでは、心理療法のセッションをリアルタイムで観察しながら介入を指示したりします。
スーパーバイザー | スーパーバイジー | |
---|---|---|
個人スーパービジョン | 1人 | 1人 |
グループスーパービジョン | 1人 | 集団 |
ライブスーパービジョン | 同席 | 実際のケースワーク場面 |
ピアスーパービジョン | 無 | 仲間同士 |
セルフスーパービジョン | 無 | 自分で振り返り |
パラレルプロセス(並行プロセス)
パラレルプロセスとは、セラピストとクライエントとの関係とよく似た状況が、スーパーバイザーとスーパーバイジーとの関係において起こることです。
もともとは精神分析学の概念で、転移や逆転移のようなセラピストとクライエントで起こる関係が、スーパービジョンでも起こることです。
フォーカシングによってパラレルプロセスに気づくことも多いです。
教育分析
教育分析とは、カウンセラー等が、ベテランのカウンセラーからカウンセリングや精神分析を受けることを指します。
自分がクライエントの立場になって学ぶ、自己研鑽の方法です。
特に精神分析では、カウンセラーが自分自身をよく知ることが必要とされ、教育分析の重要性が強調されています。
カウンセラーの発達モデル
ロンスタット(M.H.Ronnestad)とスコウフォル(T.M.Skovholt)は、カウンセラーの段階的発達モデルを提唱しています。
臨床家の職業的発達は生涯続き、職業的自己と個人的自己が統合していくプロセスとして、以下の6期モデルを示しています。
②初学者期
③上級生期
④初心者専門家期
⑤経験を積んだ専門家期
⑥熟練した専門家期
過去問
第1回 問46
公認心理師であるスーパーバイザーが、クライエントとの間に行き詰まりを経験しているスーパーバイジーに対応するにあたって、不適切なものを1つ選べ。
① 1回のみの指導はスーパービジョンに該当しない。
② スーパーバイジーが抱える個人的な問題に対して心理療法を用いて援助を行う。
③ 心理療法のセッションをリアルタイムで観察しながら介入を指示する方法をライブ・スーパービジョンと呼ぶ。
④ スーパーバイザーとの間においてもクライエントに対するものと同様の行き詰まりが見られることを並行プロセスと呼ぶ。
この問題で注意すべきは、スーパービジョンの一般論が問われているのではなく、「クライエントとの間に行き詰まりを経験しているスーパーバイジーへの対応」という点で正誤を判断しなければなりません。
① 1回のみの指導はスーパービジョンに該当しない。
正しいです。この事例の場合は1回のみではスーパービジョンになりません。
② スーパーバイジーが抱える個人的な問題に対して心理療法を用いて援助を行う。
不適切ですので、これが正解です。スーパービジョンではこのような個人的な問題に対して援助しません。
③ 心理療法のセッションをリアルタイムで観察しながら介入を指示する方法をライブ・スーパービジョンと呼ぶ。
正しいです。
④ スーパーバイザーとの間においてもクライエントに対するものと同様の行き詰まりが見られることを並行プロセスと呼ぶ。
正しいです。
第1回(追試)問3
公認心理師に求められるスーパービジョンについて、最も適切なものを1つ選べ。
① スーパーバイザーはスーパーバイジーを評価しない。
② スーパービジョンを受ける際クライエントの許可は必要ない。
③ スーパービジョンはスーパーバイジーの発達段階に合わせて行われる。
④ スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行う責任を有する。
⑤ スーパーバイザーは気づいたことをすべてスーパーバイジーに伝えることが基本である。
① スーパーバイザーはスーパーバイジーを評価しない。
間違いです。評価します。
② スーパービジョンを受ける際クライエントの許可は必要ない。
間違いです。クライエントの許可が必要です。
③ スーパービジョンはスーパーバイジーの発達段階に合わせて行われる。
適切です。
④ スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行う責任を有する。
間違いです。
⑤ スーパーバイザーは気づいたことをすべてスーパーバイジーに伝えることが基本である。
間違いです。
第2回 問121
公認心理師に求められるスーパービジョンについて、最も適切なものを1つ選べ。
① スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は対等である。
② スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行うべきではない。
③ スーパーバイザーはスーパーバイジーが行う心理的支援の実践上の責任を負う。
④ スーパービジョンとはスーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行うものをいう。
① スーパーバイザーとスーパーバイジーの関係は対等である。
間違いです。スーパービジョンには上下関係があります。
② スーパーバイザーはスーパーバイジーへの心理療法を行うべきではない。
適切です。スーパービジョンの上下関係と、心理療法の対等関係という多重関係は避けるべきです。
③ スーパーバイザーはスーパーバイジーが行う心理的支援の実践上の責任を負う。
間違いです。スーパービジョンを実施している会社や事業所が責任を負います。
④ スーパービジョンとはスーパーバイザーとスーパーバイジーが1対1で行うものをいう。
間違いです。個人スーパービジョンだけでなくグループスーパービジョンもあります。
第3回 問110
心理臨床の現場で働く公認心理師の成長モデルとスーパービジョンについて、不適切なものを1つ選べ。
① 自己研さんの1つとして、教育分析がある。
② 公認心理師の発達段階に合わせたスーパービジョンが必要である。
③ 自己課題の発見や自己点検といった内省の促進は、スーパービジョンの目的である。
④ M.H.RonnestadとT.M.Skovholtは、カウンセラーの段階的な発達モデルを示した。
⑤ 経験の浅い公認心理師のスーパービジョンにおいては、情緒的な支えよりも技術指導が重要である。
① 自己研さんの1つとして、教育分析がある。
正しいです。
② 公認心理師の発達段階に合わせたスーパービジョンが必要である。
正しいです。
③ 自己課題の発見や自己点検といった内省の促進は、スーパービジョンの目的である。
正しいです。
④ M.H.RonnestadとT.M.Skovholtは、カウンセラーの段階的な発達モデルを示した。
正しいです。
⑤ 経験の浅い公認心理師のスーパービジョンにおいては、情緒的な支えよりも技術指導が重要である。
間違いです。どちらも重要です。
第4回 問34
心理支援におけるスーパービジョンについて 誤っているものを1つ選べ
① スーパーバイジーの職業的発達に適合させることが望ましい。
② スーパービジョンの目的の一つに特定スキルの熟達がある。
③ 後進の指導にあたる立場ではスーパービジョンの技能を学ぶことが望ましい。
④ スーパービジョンの目的の一つに心理療法理論の臨床場面への応用と概念化がある。
⑤ スーパービジョンとはスーパーバイジー自身の心理的問題を扱うカウンセリングのことである。
選択肢⑤が誤りです。何度も出てきていますが、スーパービジョンではスーパーバイジーの個人的問題に関するカウンセリングはしません。
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次は、記録について。
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