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【学習心理学】感覚運動学習、プログラム学習、正統的周辺参加

学習心理学2 学習&言語
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感覚運動学習

感覚運動学習は、感覚(知覚)というインプットによって運動をアウトプットする、感覚系と運動系による連合学習です。

感覚運動学習は「技能学習」とも呼ばれており、様々な技能の習得におけるメカニズムが感覚運動学習です。

例えば、ピアノを弾くという技能を考えると、最初はドレミがどの鍵盤になるのか覚え、単音を弾く→メロディーを奏でる、というように、最初は断片的な行動が次第にまとまりをもついくつかの部分行動になり、それらが1つの大きな統一的全体行動としてまとめられ「技能」になります。

このように、感覚運動学習は、感覚系と運動系の密接な協応を必要とする行動であり、技能の習得という意味ではその学習効果は長期的です。

技能に関する記憶である「手続き記憶」は高齢になっても衰えにくく、過去の体験などのエピソード記憶は加齢の影響が顕著でしたね。

全習法&分習法

感覚運動学習では、技能の習得に至るまでに反復練習が必要で、その反復練習の方法に全習法と分習法という2種類あります。

全習法:始めから終わりまでひとまとめに練習し反復する方法
分習法:それぞれの部分反応を別々に練習していく方法

一般的には全習法が効果的だとされていますが、複雑でまとめて学習するのが難しい場合は分習法が適している場合もあります。

当ブログや動画は全習法で学習するように設計されています。まず一通り学習してから反復する方が、学習の効果が上がるからです。

集中練習&分散練習

練習は動作を反復していくわけですが、その反復の仕方については以下の2種類あります。

集中練習:一定量の練習をまとめて休みなく行う
分散練習:細かく休憩を入れながら行う

集中練習の方が効率的と思われがちですが、実験では分散の方で良い結果が得られています。

プログラム学習

プログラム学習は、学習理論(オペラント条件づけ)で有名なスキナーの理論提起によって構築され、強化の論理に従って構築されています。

プログラム学習は、以下の5つの原理で構成されます。

プログラム学習の5原理

スモールステップの原理:細かく学習内容が分かれ順序よく整理されている
積極的反応の原理:学習者の反応が喚起されるよう進行する
フィードバックの原理:反応の結果がすぐにわかること
自己ペースの原理:自分のペースで進められること
学習者検証の原理:学習者の検証・診断ができること

正統的周辺参加

正統的周辺参加(LPP:Legitimate peripheral participation)は、ジーン・レイヴ(J.Lave)とエティエンヌ・ウェンガー(E.Wenger)によって提唱された、共同体において新規の参入者が経験を積んで最終的には古参となる過程を捉えた概念です。

例えば、職人の工房に弟子入りし、仕上げ、縫製、裁断などの作業に従事し、やがて一人前となるような学びのことです。

このような伝統産業の技術や実践知の伝達を狙いとする徒弟制などが典型例です。

LPPは社会的参加の過程であり、学習を文脈的社会現象と捉え共同体実践を通して獲得されるものと考えます。

個人がその社会の中で自己を構成していく過程ですね。

過去問

第2回 問145

中学1年生の数学教科担任Aは、方程式の単元で困難度の異なる計算問題30問が印刷されたプリントを授業中に用いることを考えた。
その際、最初から少しずつ難しくなるように問題を配置し、生徒が積極的に解答を書き込めるような工夫をした。
また、模範解答も用意した。
さらに、授業中には自分のペースで取り組めるような時間を設定することにした。
このプリントを用いたAの授業をプログラム学習の原理に沿ったものにするために必要なこととして、最も適切なものを1つ選べ。
① グループで答え合わせをする時間を設ける。
② 解答するための1問当たりの制限時間を生徒に設定させる。
③ 1問ずつ解答した直後に、答え合わせをするように指示する。
④ 計算問題が苦手な生徒に対しては、教師が一緒に答え合わせを行う。
⑤ 全ての問題に正しく解答した生徒から休み時間にしてよいと告げる。

プログラム学習の5原理を思い出しましょう。

① グループで答え合わせをする時間を設ける。
間違いです。グループで答え合わせをすると、解いた直後に正誤が分からないので「フィードバックの原理」に反します。

② 解答するための1問当たりの制限時間を生徒に設定させる。
間違いです。1問当たりの制限時間を設定することは「自己ペースの原理」に反します。

③ 1問ずつ解答した直後に、答え合わせをするように指示する。
正しいです。「フィードバックの原理」に則しています。

④ 計算問題が苦手な生徒に対しては、教師が一緒に答え合わせを行う。
間違いです。教師が一緒に何かをするのではなく、その生徒が自らの力で学べるような設定を行うのがプログラム学習で「積極的反応の原理」に反します。

⑤ 全ての問題に正しく解答した生徒から休み時間にしてよいと告げる。
間違いです。「自己ペースの原理」に反します。

第4回 問22

感覚運動学習について最も適切なものを1つ選べ。
① 運動技能学習の効果は短期的である。
② 感覚運動段階は児童期の特徴である。
③ 感覚運動学習は感覚系と運動系による連合学習である。
④ 一定の休憩を入れて運動技能を学習する方法は分習法である。
⑤ 感覚運動学習においては課題にかかわらず全習法が効果的である。

① 運動技能学習の効果は短期的である。
間違いです。運動技能学習の効果は長期的です。

② 感覚運動段階は児童期の特徴である。
間違いです。技能の学習は児童期に限りません。

③ 感覚運動学習は感覚系と運動系による連合学習である。
正しいです。

④ 一定の休憩を入れて運動技能を学習する方法は分習法である。
間違いです。分習法は技能を部分に分けて習得する方法です。
休憩を入れるのは「分散練習」の説明です。

⑤ 感覚運動学習においては課題にかかわらず全習法が効果的である。
間違いです。全習法が効果的であることは多いですが、それでもケースバイケースです。

第3回 問98

学びは多様であるが、例えば洋裁を学ぶ際に、工房に弟子入りし、仕上げ、縫製、裁断などの作業に従事し、やがて一人前となるような学びを説明する概念として、最も適切なものを1つ選べ。
① 問題練習法
② ジグソー学習
③ 問題解決学習
④ 正統的周辺参加
⑤ プログラム学習

選択肢④が正解です。

第1回 問118

今後の学習成果を高めるために効果的な学習者の解釈として、最も適切なものを1つ選べ。
① 試験の点数が悪かったのは苦手な科目であるからだ。
② 試験の点数が悪かったのは問題が難しかったからだ。
③ 試験の点数が悪かったのは努力が足りなかったからだ。
④ 試験の点数が悪かったのは学習方法に問題があったからだ。

選択肢④が最も適切です。

次の記事

次は、初期学習について。

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初期学習については、刻印づけ、臨界期、生得的解発機構が示されています。それほど難しい概念ではないので、しっかりと押さえておきましょう。初期学習とは初期学習とは、ヒトの場合、受精から離乳期における学習であり、愛着形成、言語習...

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