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【記憶】意味記憶、エピソード記憶、手続き的記憶

記憶 知覚&認知
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初の実験的記憶研究

心理学史上最初の実験的記憶研究はエビングハウス(H.Ebbinghaus)によって行われました。

「心理学の過去は長いが歴史は短い」と言ったエビングハウスです。

エビングハウスは、1系列13個から成る無意味綴りのリストを覚え、ある一定の時間経過後にどのくらい思い出せるかを自分自身を被験者として測定しました。

その結果、20分後には58%、1時間後には44%、1日後には26%、1週間後には23%、1か月後には21%の保持率を示しました。

つまり、下図のように学習直後から急速に忘れていって、それ以降は緩やかに忘れていくという傾向があるということです。

エビングハウスの忘却曲線

記憶の種類

多重貯蔵モデル by アトキンソン&シフリン

多重貯蔵モデルは「感覚記憶」「短期記憶」「長期記憶」という3つの貯蔵庫によって構成される記憶のメカニズムのことで、アトキンソン(R.C.Atkinson)とシフリン(R.M.Shiffrin)が提唱しています。

当初は、短期記憶と長期記憶による二重貯蔵モデルでしたが、のちに感覚記憶のメカニズムが短期記憶から分離する「多重貯蔵モデル」ができました。

宣言的記憶&非宣言的記憶

長期記憶は宣言的記憶と非宣言的記憶に分けられます。

宣言的記憶は言葉で表現できる記憶で顕在記憶とも呼ばれ、非宣言的記憶は潜在記憶とも呼ばれます。

非宣言的記憶は、言葉というよりも体に染みついている記憶というイメージで、意識をしていなくても発動されるため「潜在記憶」と表現されます。

それぞれ以下のような種類があります。

宣言的記憶:意味記憶、エピソード記憶
非宣言的記憶:手続き記憶・プライミング・古典的条件づけ
記憶 内容
意味記憶 知識 日本の首都は東京
エピソード記憶 過去の体験の記憶 去年は海外旅行に行った
手続き記憶 技能 ピアノを弾ける、大工仕事ができる

記憶まとめ

記憶は、感覚記憶、短期記憶、長期記憶に分けられます。

もともと短期記憶と長期記憶に分類されていましたが、短期記憶から感覚記憶が分離して3種類になっています。

感覚記憶、短期記憶、長期記憶

加齢による影響

加齢によって特に顕著に衰えるのは、エピソード記憶と作動記憶です。

手続き記憶などは、しっかり体が覚えているので加齢によってあまり影響を受けません。

キャッテル(R.Cattell)は知能を結晶性知能と流動性知能に分類しました。 結晶性知能が個人の長年にわたる経験や学習から獲得される知能であるのに対し、流動性知能は新しい環境に適応するために必要な知能です。

結晶性知能はまさに意味記憶や手続き記憶が該当し加齢の影響は少ないですが、流動性知能は加齢の影響が顕著です。

キャッテルといえば16因子のパーソナリティ理論を提唱した人でしたね。

加齢の記憶への影響

系列位置効果

単語のリストを記憶させて思い出せるものから自由に再生させると、通常はリストの最初と最後の記憶成績がよくなり、中間の記憶成績は悪くなります。

このような系列位置が記憶に影響を及ぼす効果を「系列位置効果」といい、リスト初頭部の効果を「初頭効果」、終末部の効果を「新近効果」といいます。

初頭効果では、後から提示される情報に比べて覚える時間が長く、覚えるための繰り返し行動を十分に行うことができるため、短期記憶から長期記憶に情報が転送されて記憶が定着しやすくなります。

新近効果は最後に記憶してから思い出すまでの時間が短く短期記憶として残っているため再生されやすくなります。

系列位置効果

初頭効果 by アッシュ

アッシュ(S.E.Asch)の実験により、「人は相手を第一印象で認識する傾向がある」ということがわかりました。

これが初頭効果です。

新近効果 by アンダーソン

アンダーソン(N.H.Anderson)の実験により、「最後に与えられた情報でその人の印象が決定されやすい」ということがわかりました。

これが新近効果です。

親近効果と誤って表記されている情報が多いですが、「新近効果」が正しいです。

新近効果(recency effect)の「recency」は「新しい」という意味です。

ワーキングメモリのモデル by バッデリー

バッデリー(A.D.Baddeley)は短期記憶を人間の認知的活動において決定的な役割を果たす記憶として「ワーキングメモリ」と呼びました。

ワーキングメモリは以下の3つのサブシステムから構成されると考えます。

言語的短期記憶 (音韻ループ):音声で表現される情報 (数、単語、文章など))を保持
視空間的短期記憶 (視空間スケッチパッド):視空間情報 (絵、位置情報など)を保持
中央実行系:注意の制御や処理資源の配分といった高次の認知活動を司る

このような、3要素からなる第1世代のワーキングメモリーモデルでは短期記憶しか扱っていません。

そこで、次の段階として長期記憶がどのように形成されるか等について「エピソード・バッファ」と呼ばれる新たな構成要素をモデルに導入し、中央実行系がこのエピソード・バッファを通じて長期記憶との相互作用を行っているとモデル化しました。

つまり、エピソード・バッファは、音韻ループや視空間スケッチパッドからの情報や長期記憶からの情報など、複数の情報の統合結果を一つのまとまったエピソードとして一時的に保持する働きを担います。

ワーキングメモリモデル

過去問

第1回(追試)問24

記憶について、正しいものを1つ選べ。
① エピソード記憶は反復によって記憶される。
② 長期記憶の保持には側頭葉や間脳が関わる。
③ 短期記憶は一次記憶とも呼ばれ、数時間保持される。
④ 運動技能や習慣などに関する記憶は意味記憶と呼ばれる。
⑤ 自分の名前のように生涯保持される記憶は二次記憶と呼ばれる。

エピソード記憶は反復によって記憶される。
間違いです。エピソード記憶は思い出なので、同じような経験が繰り返されると記憶は弱まっていきます。

② 長期記憶の保持には側頭葉や間脳が関わる。
正しいです。「側頭葉内側部(海馬)」や「間脳(視床)」は長期記憶と関わっています。

短期記憶は一次記憶とも呼ばれ、数時間保持される。
間違いです。短期記憶の保持時間は30秒くらいまでです。

運動技能や習慣などに関する記憶は意味記憶と呼ばれる。
間違いです。これは手続き記憶です。

自分の名前のように生涯保持される記憶は二次記憶と呼ばれる。
これは正しいように思いますが、自分の名前がエピソード記憶と考えると、エピソード記憶=二次記憶というのは正確ではありません。
長期記憶=二次記憶ですから。

第1回 問84

長期記憶について、正しいものを1つ選べ。
① 宣言的記憶<declarative memory>は手続的記憶とも呼ばれる。
② 意味記憶<semantic memory>は時間的文脈と空間的文脈とが明確な記憶である。
③ エピソード記憶<episodic memory>は一般的な知識としての事実に関する記憶である。
④ 顕在記憶<explicit memory>と潜在記憶<implicit memory>とは記銘時の意識の有無によって分けられる。
⑤ 非宣言的記憶<nondeclarative memory>は技能・習慣、プライミング及び古典的条件づけの3つに分けられる。

① 宣言的記憶<declarative memory>は手続的記憶とも呼ばれる。
間違いです。宣言的記憶は意味記憶やエピソード記憶などの言葉で表す記憶です。
手続的記憶は宣言的記憶の対になる概念です。

② 意味記憶<semantic memory>は時間的文脈と空間的文脈とが明確な記憶である。
間違いです。これはエピソード記憶の内容です。

③ エピソード記憶<episodic memory>は一般的な知識としての事実に関する記憶である。
間違いです。これは意味記憶の内容です。

④ 顕在記憶<explicit memory>と潜在記憶<implicit memory>とは記銘時の意識の有無によって分けられる。
間違いです。顕在記憶と潜在記憶の区別は「記銘時の意識の有無」ではなく「記憶にあるか否かの意識の有無」です。

⑤ 非宣言的記憶<nondeclarative memory>は技能・習慣、プライミング及び古典的条件づけの3つに分けられる。
これが正解です。

第1回(追試)問50

加齢の影響を受けにくい記憶として、適切なものを2つ選べ。
① 意味記憶
② 手続記憶
③ 展望記憶
④ エピソード記憶
⑤ ワーキングメモリ

選択肢①と②が正解です。

第1回 問6 

記憶の実験によって示される系列位置効果について、正しいものを1つ選べ。
① 初頭効果は、学習直後に遅延を置くと消失する。
② 系列再生法を用いた記憶の実験によって示されるものである。
③ 新近効果は、長期記憶に転送された情報の量を反映したものである。
④ 学習段階で単語の呈示時間を長くすると、リスト中間部の再生率は低下する。
⑤ 系列位置ごとの再生率を折れ線グラフとして表した系列位置曲線は、U字型になる。

① 初頭効果は、学習直後に遅延を置くと消失する。
間違いです。遅延によって初頭効果は影響を受けず新近効果が影響を受け消失します。

② 系列再生法を用いた記憶の実験によって示されるものである。
間違いです。系列再生法ではなく自由再生法によって示されたものです。

③ 新近効果は、長期記憶に転送された情報の量を反映したものである。
間違いです。これは新近効果ではなく初頭効果の説明です。

④ 学習段階で単語の呈示時間を長くすると、リスト中間部の再生率は低下する。
間違いです。学習段階で単語の呈示時間を長くすると、リスト中間部の再生率は上昇します。

⑤ 系列位置ごとの再生率を折れ線グラフとして表した系列位置曲線は、U字型になる。
これが正解です。

第1回(追試)問118

記憶について、正しいものを1つ選べ。
① H.Ebbinghausの忘却曲線では学習後6日目で最も急激に忘却が進む。
② Tip-of-Tongue〈TOT〉はメタ記憶のモニタリング機能を示す現象である。
③ 自転車の乗り方や泳ぎ方など自動的な行動を可能にする記憶を感覚記憶という。
④ A.D.Baddeleyによるワーキングメモリのモデルで、視空間的な情報の記憶に関係するのは音韻ループである。

① H.Ebbinghausの忘却曲線では学習後6日目で最も急激に忘却が進む。
間違いです。6日目で最も忘却が進むなんておかしいです。時間が経てば経つほど忘れていきます。

② Tip-of-Tongue〈TOT〉はメタ記憶のモニタリング機能を示す現象である。
これが正解です。これは「メタ記憶」の記事で取り上げます。

③ 自転車の乗り方や泳ぎ方など自動的な行動を可能にする記憶を感覚記憶という。
間違いです。これは手続き的記憶の例です。

④ A.D.Baddeleyによるワーキングメモリのモデルで、視空間的な情報の記憶に関係するのは音韻ループである。
間違いです。音韻ループではなく視空間スケッチパッドです。

第3回 問113

A.D.Baddeley のワーキングメモリ・モデルのサブシステムとして、誤っているものを1つ選べ。
① 感覚貯蔵
② 音韻ループ
③ 中央実行系
④ エピソード・バッファ
⑤ 視空間スケッチパッド

選択肢①は感覚記憶を含めたアトキンソンとシフリンの多重貯蔵モデルの事だと思いますので、これが誤りです。それ以外は、正しいです。

次の記事

次は、知能について。

【知能】流動性知能&結晶性知能、多重知能理論 by ガードナー
知能検査では知能指数IQを算出しましたが、知能という概念はそれだけではありません。流動性知能&結晶性知能パーソナリティ理論で有名なキャッテル(R.B.Cattell)は、流動性知能と結晶性知能という分類を提唱しました。...

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