知能検査では知能指数IQを算出しましたが、知能という概念はそれだけではありません。
流動性知能&結晶性知能
パーソナリティ理論で有名なキャッテル(R.B.Cattell)は、流動性知能と結晶性知能という分類を提唱しました。
流動性知能
流動性知能とは、新しい場面への適応能力のことで、以下の特徴があります。
・脳髄ないし個体の生理的成熟に密接に関係
・文化や教育の影響を比較的受けにくい
・個人の能力のピークが早期(10代後半~20代前半)
・老化に伴う能力の衰退が顕著
結晶性知能
結晶性知能とは、過去の学習経験を高度に適用して得られた判断力や習慣で、以下の特徴があります。
・文化や教育の影響を大きく受ける
・能力のピークに達する時期が遅い
・老化による衰退が緩やか
まとめ
流動性知能 | 結晶性知能 | |
内容 | 探索的問題解決能力 | 経験や教育から獲得していく知能 |
能力のピーク | 早い | 遅い |
文化や教育の影響 | 小 | 大 |
加齢の影響 | 大 | 小 |
多重知能理論 by ガードナー
人間の知能を測定するには「知能指数IQ」がよく用いられますが、IQという1つの指標だけで知能を評価するのは少し無理があります。
そこで、ハーバード大学のハワード・ガードナー(H.Gardner)教授は「多重知能理論(MI:Multiple Intelligences)」を提唱しました。
この理論では以下の8つの知能を設定しています。
① 論理数学的知能
② 言語的知能
③ 運動感覚的知能
④ 音楽的知能
⑤ 空間的知能
⑥ 対人的知能
⑦ 博物学的知能
⑧ 内省的知能
過去問
第3回 問112
流動性知能の特徴として、不適切なものを1つ選べ。
① 図形を把握する問題で測られる。
② いわゆる「頭の回転の速さ」と関連する。
③ 学校教育や文化的環境の影響を受けやすい。
④ 新しい課題に対する探索的問題解決能力である。
⑤ 結晶性知能と比べて能力のピークが早期に訪れる。
選択肢③が不適切です。③は結晶性知能の内容です。
第1回(追試)問32
知能とその発達について、誤っているものを1つ選べ。
① 知能指数とは一般的に「精神年齢÷生活年齢×100」の値を指す。
② 流動性知能は主に神経生理学的要因の影響を受けて形成される。
③ 知能は全般的に青年期前期にピークに達し、その後急速に衰退する。
④ 結晶性知能は主に経験や教育などの文化的要因の影響を受けて形成される。
⑤ 知能の発達曲線は横断研究と縦断研究のデータで大きく食い違うことがある。
① 知能指数とは一般的に「精神年齢÷生活年齢×100」の値を指す。
正しいです。田中ビネー知能検査やウェクスラー知能検査で用いられます。
② 流動性知能は主に神経生理学的要因の影響を受けて形成される。
正しいです。
③ 知能は全般的に青年期前期にピークに達し、その後急速に衰退する。
誤りです。知能のピークは青年期前期よりも後で、その後急速に衰退することもありません。
④ 結晶性知能は主に経験や教育などの文化的要因の影響を受けて形成される。
正しいです。
⑤ 知能の発達曲線は横断研究と縦断研究のデータで大きく食い違うことがある。
正しいです。横断研究(ある一時点での実験)では、世代による就学率・学歴の相違、テストを受けることへの慣れの相違、教育機会の違いなどが影響し、縦断研究(同一対象への時系列の実験)では、繰り返しによる練習効果、参加者の脱落による生き残り効果等が影響してきますので、横断研究と縦断研究ではデータが異なってきます。
第3回 問39
H.Gardner が多重知能理論で指摘した知能に含まれるものとして、不適切なものを1つ選べ。
① 空間的知能
② 言語的知能
③ 実用的知能
④ 対人的知能
⑤ 論理数学的知能
選択肢③が不適切です。
次の記事
次は、認知言語学について。
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