摂食障害とは
摂食障害には、神経性無食欲症、神経性過食症、過食性障害、回避制限性食物摂取症、異食症など、様々な種類があります。ここでは神経性無食欲症(拒食症)、神経性過食症(過食症)について見ていきましょう。
神経性無食欲症(神経性やせ症)
神経性無食欲症は、体重が減り続けているにもかかわらず食事を制限する一方、頭の中は食べもののことにとらわれています。青年期または成人期早期に発症するのが通常で、女性に多く見られ、無月経になるなどの症状が出ます。この疾患の原因は不明で、女性であることを除けば危険因子はほとんど特定されていません。
以下の2タイプに分かれます。
神経性無食欲症の種類 | 内容 |
---|---|
摂食制限型 | 食事を制限する |
過食排出型 | 食事を制限するが、定期的な過食や排出行動(意図的な嘔吐など)もみられる |
治療で注意が必要なのは、リフィーディング症候群です。
リフィーディング症候群とは、慢性的な栄養障害がある状態に対して、急激に栄養補給を行うと発症する代謝性の合併症です。
飢餓状態が長く続いたあとに急に栄養補給されると、心不全や呼吸不全、腎不全、肝機能障害ほか多彩な症状を呈することがありますので、点滴などで急激に栄養補給してはいけません。
神経性過食症
神経性過食症は、大量の食べものを短時間で次から次へと摂取し、その後、意図的な嘔吐や下剤の服用など、食べ過ぎを埋め合わせる行為を繰り返し行うことが特徴です。
過食性障害
過食性障害は、過食が特徴ですが、その後に食べ過ぎを埋め合わせようとする嘔吐などを行うことはありません。
過去問
第1回 問101
神経性無食欲症について、正しいものを1つ選べ。
① 経過中の死亡はまれである。
② 通常、心理療法によって十分な治療効果が得られる。
③ 入院治療では、心理療法は可能な限り早期に開始する。
④ 経管栄養で体重を増やせば、その後も維持されることが多い。
⑤ 患者自身は体重低下に困っていないため、治療関係を築くことが難しい。
選択肢⑤が正解です。
第1回(追試)問27
神経性無食欲症について、正しいものを1つ選べ。
① 主な死因は自殺である。
② 摂食制限型は衝動性が高い。
③ 有病率の男女比は約1:2である。
④ 体重と体型に関する自己認識の障害がある。
⑤ WHO の基準で Body Mass Index(BMI)17 kg/m2 は、成人では最重度のやせである。
① 主な死因は自殺である。
誤りです。主な死因は電解質異常および伴う不整脈、栄養不足による衰弱死などです。神経性大食欲症における主な死因としては自殺です。
② 摂食制限型は衝動性が高い。
誤りです。神経性大食欲症では衝動行為を伴う例が多いですが、摂食制限型では衝動性はあまり見られません。
③ 有病率の男女比は約1:2である。
誤りです。1:20で圧倒的に女性が多いです。
④ 体重と体型に関する自己認識の障害がある。
正しいです。
⑤ WHO の基準で Body Mass Index(BMI)17 kg/m2 は、成人では最重度のやせである。
誤りです。BMI17は軽度です。
第3回 問69
16歳の女子A、高校1年生。
Aは、食欲不振、るい痩のため1週間前から入院中である。
高校に入学し、陸上部に入部した後から食事摂取量を減らすようになった。
さらに、毎朝6時から走り込みを始めたところ、4か月前から月経がなくなり、1か月前から倦怠感を強く自覚するようになった。
入院後も食事摂取量は少なく、「太ると良い記録が出せない」と食事を摂ることへの不安を訴える。
中学校までは適応上の問題は特になく、学業成績も良好であった。
自己誘発嘔吐や下剤の乱用はない。
身長は159 cm、体重は 30 kg、BMI は 11.9 である。
公認心理師のAへの支援として、不適切なものを1つ選べ。
① 食事へのこだわりを外在化する。
② Aの家族に治療への参加を促す。
③ 部活動への葛藤について傾聴する。
④ 栄養士の助力を得て食事日記を付けることを勧める。
⑤ 点滴を受けて、栄養状態を速やかに改善するように勧める。
選択肢⑤が不適切です。速やかな栄養改善はリフィーディング症候群を引き起こします。

BMI=11.9でよく生きてますね。カリスマさんはBMI=15.0で骨と皮だけになりましたから。
第3回 問104
神経性やせ症/神経性無食欲症の病態や治療について、正しいものを1つ選べ。
① うつ病が合併することは少ない。
② 未治療時は、しばしば頻脈を呈する。
③ 無月経にならないことが特徴である。
④ 心理社会的要因に加え、遺伝的要因も発症に関与する。
⑤ 未治療時に、しばしばリフィーディング症候群を発症する。
① うつ病が合併することは少ない。
誤りです。うつ病を合併することがあります。
② 未治療時は、しばしば頻脈を呈する。
誤りです。頻脈ではなく徐脈です。
③ 無月経にならないことが特徴である。
誤りです。無月経になります。
④ 心理社会的要因に加え、遺伝的要因も発症に関与する。
正しいです。
⑤ 未治療時に、しばしばリフィーディング症候群を発症する。
誤りです。リフィーディング症候群は、未治療時ではなく治療時(栄養補給時)に発症します。
リフィーディング症候群とは、慢性的な栄養障害がある状態に対して、急激に栄養補給を行うと発症する代謝性の合併症です。
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次は、双極性障害です。

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