P-Fスタディとは
ローゼンツァイク(S.Rosenzweig)によって開発された「P-Fスタディ」は、欲求不満場面のイラストを見て、その場面の人がどう発言するかを想像する投影法による性格検査です。
実施方法
24枚の欲求不満場面のイラストを見て、その場面の人がどう発言するかを想像します。
フラストレーションを生じさせる相手方の発言に対して、もう一方の人物がどう返答するか、被検者に、絵のなかの吹き出しに書き入れてもらいます。
イラストには2種類あります。
②超自我阻害場面:フラストレーションの原因が自己の内部にある
結果の評価
アグレッションの分類
P-Fスタディの結果は、アグレッションが指標となります。
アグレッションは「攻撃性」というより「主張性」と捉えましょう。
被検者の反応は、アグレッションの方向3種類(他責、自責、無責)と、アグレッションの型3種類(障害優位型、自我防衛型、要求固執型)からマトリックスを作成し、計9分類になります。
他責的:他者を責める傾向→「投射」
自責的:自分を責める傾向→「置き換え」「感情分離」「反動形成」
無責的:誰も責めない傾向→「抑圧」
「無責」という表現から「攻撃性が無い」と考えるのではなく「回避している」と捉えます、つまり抑圧です。
このように、防衛機制の原理が働いていることがわかります。
障害優位型:障害の指摘に重点を置く反応型
自我防衛型:自我を強調する反応型
要求固執型:問題解決を重視する反応型
アグレッションの型 | ||||
---|---|---|---|---|
障害優位 | 自我防衛 | 要求固執 | ||
アグレッションの方向 | 他責的 | 他責逡巡反応E´ | 他罰反応E | 他責固執反応e |
自責的 | 自責逡巡反応I´ | 自罰反応I | 自責固執反応i | |
無責的 | 無責逡巡反応M´ | 無罰反応M | 無責固執反応m |
GCRの評価
GCR(Group Conformity Rate)は集団順応度や集団一致度と呼ばれ、一般の回答とどの程度一致しているかを測る指標です。
GCRが低すぎる場合は適応の困難さが、GCRが高すぎる場合は過剰適応が示唆されます。
ロールシャッハテストでもP反応(平凡反応)が設定されていましたね。
一般的な反応とどの程度一致しているかというのは、その人のパーソナリティを知る上で重要です。
反応転移分析
反応転移分析とは、検査の前半と後半の反応の質を比べることです。
P-Fスタディなどの投影法の心理検査は、被検者の心理に大きな影響を与えますので、前半と後半の反応の出現状態を比較することで、検査中に起こった被検者の心理的変化を捉えることができます。
例えば、検査の最初のほうは常識的な反応を示し、後半になると検査の疲れや心理的負担から変わった反応を示す等です。
超自我因子
P-Fスタディのイラストは「自我阻害場面」と「超自我阻害場面」の2つに分けられますが、超自我阻害場面で出現しうる2つの反応には大きな意味があるとされ、それぞれが特殊因子として分析されます。
超自我評点I:自分の非を認めるが避けられない状況のせいにし本質的は自分の失敗を認めない反応(自罰反応の変形)
先ほどの9分類とこの2分類を合わせて計11分類になります。
アグレッションの型 | ||||
---|---|---|---|---|
障害優位 | 自我防衛 | 要求固執 | ||
アグレッションの方向 | 他責的 | 他責逡巡反応E´ | 他罰反応E 超自我評点E |
他責固執反応e |
自責的 | 自責逡巡反応I´ | 自罰反応I 超自我評点I |
自責固執反応i | |
無責的 | 無責逡巡反応M´ | 無罰反応M | 無責固執反応m |
このように、P-Fスタディでは、自我、超自我、防衛機制、転移分析などフロイトの精神分析学にでてくるキーワードが満載です。それを元にしているから当然です。
過去問
第3回 問16
精神分析理論の防衛機制に関する実験的研究の結果を基盤に発展した心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① SCT
② TAT
③ MMPI
④ P-F スタディ
⑤ ロールシャッハ・テスト
選択肢④が正解です。
第1回 問17
P-F スタディの実施と解釈について、正しいものを1つ選べ。
① 葛藤場面は、自我の退行場面と超自我が阻害される場面とで構成される。
② 攻撃性の方向が内外ともに向けられずに回避される反応を無責傾向と解釈する。
③ 依存性と攻撃性の方向とパターンを分類及び記号化して、社会的関係の特徴を把握する検査である。
④ 他者との葛藤状況における言語反応を、愛着関係の方向とパターンとに分類及び記号化して解釈する。
⑤ 欲求不満を来す状況について、もしも自分であったらという想定における被検者の言語反応を分類及び記号化して解釈する。
① 葛藤場面は、自我の退行場面と超自我が阻害される場面とで構成される。
間違いです。P-Fスタディでは24種類の場面が見せられ、それらは「自我阻害場面」と「超自我阻害場面」に分けられるのでした。「自我退行場面」ではありません。
② 攻撃性の方向が内外ともに向けられずに回避される反応を無責傾向と解釈する。
これが正解です。他責的、自責的、無責的の3種類ありましたが、無責的というのは抑圧によって攻撃性の方向が内外ともに向けられずに回避される傾向を表しています。
③ 依存性と攻撃性の方向とパターンを分類及び記号化して、社会的関係の特徴を把握する検査である。
間違いです。P-Fスタディは「攻撃性(アグレッション)」の方向とパターンを分類及び記号化しますが、「依存性」は扱いません。
④ 他者との葛藤状況における言語反応を、愛着関係の方向とパターンとに分類及び記号化して解釈する。
間違いです。愛着関係ではなく「攻撃性」の方向とパターンです。
⑤ 欲求不満を来す状況について、もしも自分であったらという想定における被検者の言語反応を分類及び記号化して解釈する。
間違いです。「もしも自分であったら」という想定ではなく、「絵の中の人物ならどう答えるか」を回答します。
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次は、同じ投影法の性格検査である「バウムテスト」です。
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