回想法とは
回想法は、1960年代にアメリカの精神科医バトラー(R.Butler)が提唱し、認知症の方へのアプロ―チとして注目されています。
昔の懐かしい写真や音楽などを見たり聞いたりしながら、昔の経験や思い出に触れて語り合う心理療法です。
回想による人生の振り返りの過程を過去の再評価と再構成につなげ、過去を現在に生かすという特徴があります。
回想法は個人で行うこともありますが、グループで行うことが多く、自身を安定させたり自尊感情を高めるなどの個人的効果だけでなく、対人関係を促進させるなどの社会的効果の両方が期待されます。
実施にあたっては、高齢者の人生の歴史に関心を寄せて耳を傾け慎み深い聞き手になることが重要です。
認知症ケア技法であるユマニチュードとも通じていますね。
例えばアルツハイマー型認知症であれば、近似記憶から障害されるため過去の記憶は保たれていることも多いので、回想法が効果的です。
僕のじいちゃんは「わしの若いころは・・・」と戦争中の体験をよく語ってくれたんだ。これも回想法の効果があったんだね。
過去問
第2回 問89
認知症の高齢者への回想法について、正しいものを1つ選べ。
① 行動の変容を目標とする。
② 個人面接では実施しない。
③ 昔の物品を手掛かりにする。
④ 一定の間隔をあけて繰り返す。
⑤ 認知に焦点を当てたアプローチである。
① 行動の変容を目標とする。
間違いです。行動の変容は目標としません。
② 個人面接では実施しない。
間違いです。回想法はグループで行うことが多いですが、個人でも行われます。
③ 昔の物品を手掛かりにする。
これが正解です。昔の写真や思い出の品などを手掛かりにして回想してもらいます。
④ 一定の間隔をあけて繰り返す。
間違いです。回想法に決められた頻度はありません。
⑤ 認知に焦点を当てたアプローチである。
間違いです。認知に焦点を当てません。
第3回 問22
Alzheimer型認知症の患者に対して公認心理師が実施するものとして、不適切なものを1つ選べ。
① ADAS
② 回想法
③ COGNISTAT
④ ケアプラン原案の作成
⑤ 認知症ケアパスへの参加
① ADAS
適切です。ADAS(Alzheimer’s Disease Assessment Scale)は、記憶を中心とする認知機能検査のことです。
② 回想法
適切です。回想法は、認知症患者に対して効果が期待されます。
③ COGNISTAT
適切です。COGNISTAT(コグニスタット)は、認知機能を多面的に評価します。
④ ケアプラン原案の作成
不適切です。ケアプラン原案の作成は、公認心理師ではなくケアマネの仕事です。
⑤ 認知症ケアパスへの参加
適切です。認知症ケアパスは厚生労働省の認知症施策です。
認知症の地域連携や職務連携が規定されており、公認心理師も参加できます。
次の記事
次は、集団精神療法についてです。
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