カリスマが生まれた直後からの成長過程を見ていきましょう。
ところどころで赤ちゃんカリスマの写真が挿入されます。
乳児期の成長
生後1~2か月
・共同注意(二項関係):他の人と同じように物体や人物に対して注意を向ける
・社会的微笑:人の顔を見て笑顔を見せること
生後3~4か月
生後8~10か月
・参照視:母親の顔を見て(絶対OKってわかっていて)確認する
・社会的参照:母親の表情を手がかりに自分の行動を決める
ここからは共同注意について、詳しく見ていきましょう。
共同注意 by ブルーナー
共同注意とは、他の人と同じように物体や人物に対して注意を向けたり、アイコンタクトや指差しによって他者の注意を特定の物や出来事に向けることです。
共同注意はブルーナー(J.S.Bruner)が提唱した概念で、以下の2段階あります。
第一段階(生後2か月~)
生後2ヶ月頃の乳児が大人と視線を合わせることから共同注意が始まります。
この時期には乳児の視線が他者の顔、特に目をしっかりとらえ「社会的微笑」が出現してきます。
二者の視線が出会う単純な共同注意と呼ばれる共同注意の原型です。
このころは、自分と母親、自分とモノ、というような二項関係が中心です。
第二段階(生後9か月~)
大人が指さした対象を子どもも一緒に見るといった、外界の対象への注意を相手と共有する行動がみられるようになり、この段階では自分-対象-他者の3者間での三項関係になってきます。
子どもは自分の注意を対象物と大人にしっかり配分させることができ、こうした他者への注意の配分を明確に伴う共同注意行動を「意図共有的共同注意」と呼びます。
これで共同注意が完成です。
このような三項関係の共同注意行動として以下の3点を押さえておきましょう。
参照視:母親の方を見て確認する(OKと分かっていても)
社会的参照:対象に対する評価を大人の表情などを見て参考にする
乳児の心理学的研究手法
馴化−脱馴化法
乳幼児は、同じ刺激を繰り返し呈示しているとはじめは興味を持っていても次第に興味が低下し注視時間が短くなります。
これを馴化(じゅんか)と言います。
刺激を別のものに変えて呈示すると刺激に対する注視時間は長くなります。
これを脱馴化と言います。
このような馴化と脱馴化を繰り返すことで2つの異なる刺激を弁別できているかどうかを観察し、記憶や概念形成などを測定します。
①おしゃぶりを吸うと音声Aが流れる
②繰り返して馴化(吸いつき反応低下)させる
③音声Bに変えて吸いつき反応がどう変化するか
④脱馴化(吸いつき反応増加)した場合は音声Aと音声Bを聞き分けている
スティルフェイス実験
スティルフェイス実験は母親が突然無表情(スティルフェイス)になったときの乳児の反応を見る実験です。
乳児の社会的随伴性を調べることができます。
<実験の流れ>
①子ども(乳児)に反応して協調的だった母親
②母親が突然に能面のような無表情に
子どもが視線や笑顔の減少(スティルフェイス効果)を示すかどうか
③子どもはすぐに母親の注意を引こうとする
④子どもの視線や笑顔の減少
⑤子どもはたまらなくなり泣き出す
この実験で、生まれて数カ月の赤ちゃんでも、母親の反応を気にしていることがわかります。
たったこれだけのこと(無表情)で、赤ちゃんは必死になって母親の気を引こうとします。
子どもにとって虐待の影響がいかに大きいか、わかります。
年間20万件の児童虐待のうち、10万件以上が心理的虐待です。
心理的虐待によって愛着障害を形成する理由が分かるような気がします。
選好注視法
選好注視法は、乳幼児に2種類の刺激を同時に呈示し、各刺激への注視時間の差を観察する実験法です。
乳児には「興味あるものや好きなものを見つめる」という反応特性があります。
この特性を利用し、生後1週目の新生児であっても無地の図形よりもある程度複雑なパターンをより注視することを示しました。
パターンの複雑さなどを指標として、乳児の弁別能力を測定します。
①乳児に、以下のようなグレーの下地に一部縦じまが含まれる図形を見せる
②乳児が注視する箇所を確認する
③縦じまを注視していたら、グレーと縦じまを弁別できていることがわかる
この場合は、グレーと縦じまの2つの刺激を「同時に」呈示していることがポイントです。
期待違反法
期待違反法では、乳児が知っていることとは異なる事象を呈示して、乳児がどれだけ興味や驚きを示し長く注視するかを見ます。
乳児が期待する状況(期待条件)と乳児が意外と感じる状況(期待違反条件)を設定し、いずれの条件がより注視するかを測る実験法です。
乳児が、起こり得ない不思議な事象や自分の期待を裏切る事象への選択的な注視行動を行うことを活用した方法です。
①乳児に人形を2体見せて、隠す
②再び見せた時に1体になっている
③乳児が「?」状態になったら、2体が1体になったと思っている
④演算能力や対象の永続性を獲得している
ピアジェの発達理論では、感覚運動期の特徴は「対象の永続性」の獲得でしたね。
過去問
第2回 問108
共同注意行動の例として、誤っているものを1つ選べ。
① 指さし(pointing)
② クーイング(cooing)
③ 参照視(referential looking)
④ 相手に物を手渡す行動(giving)
⑤ 相手に物を見せる行動(showing)
選択肢②が誤りです。
第1回(追試)問40
言語の音韻面の発達について、最も適切なものを1つ選べ。
① 生後すぐの新生児には、クーイングと呼ばれる発声がみられる。
② 1歳に達するまでに、徐々に非母語の音韻に対する弁別力は弱くなる。
③ 2歳までに言語の音韻的な側面についてのメタ言語的な理解が始まる。
④ 種々の韻律的特徴を持つジャーゴンが出現した後に、音節を反復する基準喃語が生じてくる。
① 生後すぐの新生児には、クーイングと呼ばれる発声がみられる。
誤りです。クーイングは生後1~2か月くらいからです。
② 1歳に達するまでに、徐々に非母語の音韻に対する弁別力は弱くなる。
これが正解です。
③ 2歳までに言語の音韻的な側面についてのメタ言語的な理解が始まる。
誤りです。メタ言語は、5~6歳で発達します。
メタ言語とは言葉を客観的に見ること、例えばこの表現は動詞であるとか言語を客観的に捉えるのがメタ言語です。
④ 種々の韻律的特徴を持つジャーゴンが出現した後に、音節を反復する基準喃語が生じてくる。
誤りです。ジャーゴンとはわけのわからないちんぷんかんぷんな言葉のことで、基準喃語より後です。
第2回 問14
乳幼児の社会的参照について、正しいものを1つ選べ。
① 心の理論の成立後に生じてくる。
② 共同注意の出現よりも遅れて1歳以降に現れ始める。
③ 自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じる。
④ 自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為である。
⑤ 乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失する。
社会的参照の出現時期は生後8~10か月くらいからです。
① 心の理論の成立後に生じてくる。
誤りです。心の理論とは、相手の気持ちを推測する能力で、4から5歳ごろに急激に発達します。
② 共同注意の出現よりも遅れて1歳以降に現れ始める。
誤りです。共同注意よりも遅れて、生後8~10か月くらいから表れ始めます。
③ 自己、他者、状況・事物という三項関係の中で生じる。
正しいです。
④ 自分の得た知識を他者に伝達しようとする行為である。
誤りです。社会的参照は母親の表情を手がかりに自分の行動を決めることです。
⑤ 乳幼児期以降、徐々にその頻度は減り、やがて消失する。
誤りです。社会的参照は消失せず、大人になってもあります。
第3回 問136
1歳の女児A。Aは離婚した母親Bと共に、Bの実家で祖父母や叔母と住んでいる。
実家の敷地内には、伯父夫婦やいとこが住んでいる家もある。
昼過ぎから深夜にかけて仕事に出ているBに代わり、祖父母や叔母がときどき農作業の手を休めて、Aの世話をしている。
いとこたちが学校や幼稚園から帰宅すると、Aは年長のいとこに見守られ、ときには抱っこされながら、夕食までの時間を過ごしている。
Aに対する養育の解釈として、最も適切なものを1つ選べ。
① クーイング
② コーチング
③ マザリーズ
④ ミラーリング
⑤ アロマザリング
① クーイング
クーイングは、生まれて数か月の赤ちゃんの「アー」「ウー」といった発声のことです。
② コーチング
コーチングとは、相手の内にある力を引き出し、その人の成長を支え、育てるための技術です。
③ マザリーズ
マザリーズとは、母親が赤ちゃんに話しかけるときの声が、高めのトーンになるなど、乳幼児に対して声掛けするときの話し方です。
④ ミラーリング
ミラーリングとは、相手と同じような振舞いをする(相手にとっての鏡になる)ことで、相手に親しみを持たせるための手法です。
⑤ アロマザリング
これが正解、アロマザリングは、母親以外の祖父母や保育園など、社会で子育てを分担することです。
第1回 問31
生後6か月ごろまでの乳児が示す発達的特徴について、不適切なものを1つ選べ。
① 対面する他者の視線方向を目で追う傾向がある。
② 目鼻口が正しい場所にある顔図形を選好する傾向がある。
③ 他児の泣き声を聞くと、つられるように泣き出すことがある。
④ 曖昧な状況で養育者の表情を見てからその後の行動を開始するようになる。
⑤ 目の前で舌を出す動作を繰り返し見せると、同じような顔の動きをすることがある。
① 対面する他者の視線方向を目で追う傾向がある。
正しいです。共同注意は生後6か月ごろまでに起こります。
② 目鼻口が正しい場所にある顔図形を選好する傾向がある。
正しいです。
③ 他児の泣き声を聞くと、つられるように泣き出すことがある。
正しいです。つられ泣きの現象です。
④ 曖昧な状況で養育者の表情を見てからその後の行動を開始するようになる。
これが正解です。これは社会的参照と呼ばれ、1歳頃になります。
⑤ 目の前で舌を出す動作を繰り返し見せると、同じような顔の動きをすることがある。
正しいです。
第1回 問85
コミュニケーションと言語の発達について、正しいものを1つ選べ。
① 発達初期に出現する語彙は、動詞や形容詞が名詞よりも多い。
② 語彙の増加は、初語の出現から就学まで概ね均質なスピードで進む。
③ 指さしは、リーチングなどとともに生後6か月頃から頻繁に観察されるようになる。
④ 生後9~10か月頃からみられる、対象に対する注意を他者と共有する行動を共同注意と呼ぶ。
⑤ クーイングとは、乳児期の後半からみられる「ババババ」などの同じ音を繰り返し発声することをいう。
① 発達初期に出現する語彙は、動詞や形容詞が名詞よりも多い。
誤りです。「ママ(母)」「プップー(車)」などの名詞が多いです。
ちなみにカリスマさんが生まれたころによく言っていた言葉は「パーポープ?(大丈夫?)」だったみたい・・・。
② 語彙の増加は、初語の出現から就学まで概ね均質なスピードで進む。
誤りです。1歳後半から2歳前半が「語彙爆発」の時期と言われていますので均質なスピードで進みません。
③ 指さしは、リーチングなどとともに生後6か月頃から頻繁に観察されるようになる。
誤りです。指さしは生後9~10か月後、リーチング(興味を持ったものに手を伸ばし触れようとする行為)は生後6か月後に見られ始めます。
④ 生後9~10か月頃からみられる、対象に対する注意を他者と共有する行動を共同注意と呼ぶ。
正しいです。母親の目を追う等の共同注意は生後2か月ごろから見られますが、対象に対する注意を他者と共有する共同注意は生後9か月頃から見られます。
⑤ クーイングとは、乳児期の後半からみられる「ババババ」などの同じ音を繰り返し発声することをいう。
誤りです。これは喃語の説明です。クーイングとは、乳児期初期からみられる「あー」「うー」といった独特の発声のことです。
第1回 問43
乳児期の発達に関する心理学的研究手法について、正しいものを1つ選べ。
① 馴化−脱馴化法は、異なる刺激を次々と呈示し、乳児の関心の変化を確かめる。
② スティルフェイス実験は、他者との相互作用において、乳児がどれだけ無表情になるかを見る。
③ 選好注視法は、乳児に2つの視覚刺激を交互に続けて呈示し、どちらに対して長く注視するかを見る。
④ 期待違反法は、乳児が知っていることとは異なる事象を呈示して、乳児がどれだけ興味や驚きを示し、長く注視するかを見る。
① 馴化−脱馴化法は、異なる刺激を次々と呈示し、乳児の関心の変化を確かめる。
誤りです。異なる刺激を次々と呈示するのではなく、馴れた刺激とそれ以外の刺激を弁別する能力を判定する実験法です。
② スティルフェイス実験は、他者との相互作用において、乳児がどれだけ無表情になるかを見る。
誤りです。スティルフェイス実験は母親が突然無表情になったときの乳児の反応を見る実験です。
③ 選好注視法は、乳児に2つの視覚刺激を交互に続けて呈示し、どちらに対して長く注視するかを見る。
誤りです。選好注視法は、乳幼児に2種類の刺激を同時に呈示し、各刺激への注視時間の差を観察する実験法です。
④ 期待違反法は、乳児が知っていることとは異なる事象を呈示して、乳児がどれだけ興味や驚きを示し、長く注視するかを見る。
これが正解です。
第3回 問36
乳児期の認知発達に関する研究手法である馴化・脱馴化法について、不適切なものを1つ選べ。
① 乳児の弁別能力の発達を調べることができる。
② 吸てつ(sucking)反応の変化を指標とすることができる。
③ 刺激に対する注視時間の回復を指標とすることができる。
④ 乳児の再認記憶の有無を確かめるために使うことができる。
⑤ 実験手法の1つとして、乳児に対して2つの刺激を同時に対呈示することができる。
① 乳児の弁別能力の発達を調べることができる。
正しいです。
② 吸てつ(sucking)反応の変化を指標とすることができる。
正しいです。指などで乳児の口に触れると吸い付こうとする反応を指します。
その吸い付こうとする反応の違いを指標にすることができます。
③ 刺激に対する注視時間の回復を指標とすることができる。
正しいです。
④ 乳児の再認記憶の有無を確かめるために使うことができる。
正しいです。選好注視法の内容に見えますが馴化・脱馴化法でもできます。
⑤ 実験手法の1つとして、乳児に対して2つの刺激を同時に対呈示することができる。
誤りです。刺激を繰り返して呈示して馴化させた後に新しい刺激を呈示したときの反応を見るので、2つの刺激を対呈示することはできません。
第1回(追試)問111
青年期の特徴として、不適切なものを1つ選べ。
① 心理的離乳
② 直観的思考
③ モラトリアム
④ 2次性徴の発現
⑤ 発育のスパート
① 心理的離乳
正しいです。心理的離乳は青年期前期頃に生じる、親からの心理的自立の獲得です。
② 直観的思考
誤りです。直観的思考は幼児期~児童期です。
③ モラトリアム
正しいです。エリクソンは青年期を心理社会的モラトリアムと表現しました。
④ 2次性徴の発現
正しいです。第二次性徴は、思春期になってから現れる性器以外のからだの各部分に見られる男女の特徴のことです。
⑤ 発育のスパート
正しいです。思春期の急激な身長の伸びは「成長(発育)スパート」と呼ばれています。
第5回 問60
乳児50名を対象として、視覚認知機能を調べる実験を行った。まず、実験画面上に図形Aを繰り返し呈示したところ、乳児は最初は画面を長く注視したが、その後、注視時間は減っていった。注視時間が半減したところで、画面上に図形Bを提示したところ、乳児の画面の注視時間が回復して長くなった。一方、異なる乳児50名を対象として、同様に画面上に図形Aを繰り返し提示し、注視時間が半減したところで、画面上に図形Cを提示した場合は、乳児の画面の注視時間は回復しなかった。この2つの実験結果から解釈される乳児期の視覚認知機能の性質として、最も適切なものを1つ選べ。
① 図形Cよりも図形Bを選好注視する。
② 図形Bには馴化し、図形Cには脱馴化する。
③ 図形Bよりも図形Cに強い親近性選好を示す。
④ 図形Aの後に、図形Cよりも図形Bの出現を期待する。
⑤ 図形Aと図形Bは区別するが、図形Aと図形Cは区別しない。
馴化−脱馴化法の実験の意味を理解していれば易しいですね。選択肢⑤が正解です。
第4回 問61
5歳の男児 A、幼稚園児。
Aが4歳の時に、おやつが準備されるのを待てずに手が出てしまう。
1歳下の弟との兄弟喧嘩が激しいと言ったことを母親が心配し、教育センターの公認心理師に 相談するために来所した。
Aには、母子関係の問題や発達的なつまずきは認められなかったため、月に一度の相談で経過を見ていたところ、 5歳の誕生日を過ぎた頃から、弟との喧嘩が減った。おやつもすぐに食べずに待てるようになったとのことである。
Aの状態の背景に考えられる心理的発達として、 最も適切なものを1つ選べ。
① 共同注意
② 自己制御
③ 脱中心化
④ メタ認知
⑤ アタッチメント
選択肢②が正解です。
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発達障害だと思ったら実は愛着理論だったってことも。
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