活動理論
活動理論はハヴィガースト(R.JHavighurst)が提唱しました。
「望ましい老化とは、可能な限り中年期のときの活動を保持することであり、退職などで活動を放棄せざるを得ない場合は、代わりの活動を見つけ出すことによって活動性を維持すること」という考え方です。
離脱理論
離脱理論はカミング(E.Cumming)とヘンリー(W.Henry)が提唱しました。
「高齢者は自ら社会からの離脱を望み、社会は離脱しやすいようなシステムを用意して高齢者を解放するべき。高齢者が社会から離れていくのは自然なこと」という考え方です。
老年的超越理論
老年的超越理論はスウェーデンの社会老年学者トレンスタム(L.Tornstam)が提唱しました。
離脱理論、精神分析、禅を取り入れ、「加齢とともに、物質的・合理的(経済的)な視点から、神秘的・超越的な視点に移行するので、喪失はあっても心理的には安定を保つことが可能である」という考え方です。
社会情緒的選択理論
社会的情緒的選択理論はスタンフォード大学の心理学者カーステンセン(L.Carstensen)が提唱しました。
社会情緒的選択理論は、「人生の残り時間が少なくなると、交際の範囲を狭めて、自分の持つ資源を情動的に満足できるような目標や活動に注ぎ込むようになる」という考え方です。
補償を伴う選択的最適化(SOC)理論
SOC(Selective Optimization with Compensation)理論は、バルテス(P.Baltes)が提唱した高齢期の自己制御方略に関する理論です。
加齢に伴う喪失に対する適応的発達のあり方として、獲得を最大化し、喪失を最小化するために自己の資源を最適化するとされています。
若い頃には可能であったことが上手くできなくなったときに、若い頃よりも目標を下げる行為
O:資源の最適化(Optimization)
選んだ目標に対して、自分の持っている時間や身体的能力といった資源を効率よく割り振ること
C:補償(Compensation)
他者からの助けを利用したり、これまで使っていなかった補助的な機器や技術を利用したりすること
ハヴィガーストの「活動理論」と、カミング&ヘンリーの「離脱理論」の中間にあるような理論ですね。
コンボイモデル
コンボイ(護衛艦)とは、その人の関係者を含めた集合体で三重の階層的な構造を成し、このコンボイに乗って人は人生航路を進んでいくと捉えます。
ソーシャルコンボイは、個人を中心とした多層的な社会的ネットワークです。
A:安定して持続する役割に依存しない人々
B:時の流れとともに変化し、やや役割依存的な人々
C:最も役割の影響を受ける人々
過去問
第1回(追試)問33
高齢期に関する理論とその理論が重視する高齢期の心理的適応の組合せについて、誤っているものを1つ選べ。
① 活動理論 ― 中年期の活動水準を維持すること
② 離脱理論 ― 社会的活動から徐々に引退すること
③ 老年的超越論 ― 物質的で合理的な世界観を捨て、宇宙的な世界観を持つこと
④ 社会情緒的選択理論 ― 情緒的安定のために他者からの知識獲得を行うこと
⑤ 補償を伴う選択的最適化(SOC)理論 ― 喪失を補償すべく領域を選択し、そこでの活動を最適化すること
① 活動理論 ― 中年期の活動水準を維持すること
正しいです。
② 離脱理論 ― 社会的活動から徐々に引退すること
正しいです。
③ 老年的超越論 ― 物質的で合理的な世界観を捨て、宇宙的な世界観を持つこと
正しいです。
④ 社会情緒的選択理論 ― 情緒的安定のために他者からの知識獲得を行うこと
誤りです。社会情緒的選択理論は、「人生の残り時間が少なくなると、交際の範囲を狭めて、自分の持つ資源を情動的に満足できるような目標や活動に注ぎ込むようになる」という考え方です。
⑤ 補償を伴う選択的最適化(SOC)理論 ― 喪失を補償すべく領域を選択し、そこでの活動を最適化すること
正しいです。S(選択)O(最適化)C(補償)理論です。
第1回 問125
高齢期の心理学的適応について、正しいものを2つ選べ。
① ソーシャルコンボイを維持又は補償できるかということは適応を左右する要因の1つである。
② 退職後は以前の高い活動性や社会的関係から、いかに速やかに離脱できるかによって左右される。
③ 能力低下への補償として、活動領域を選択的に限定し、従来とは異なる代替方略を用いることが有効である。
④ 未来志向的に自身のこれからを熟考させることが、自身の過去への関心を促し回想させるよりも有効とされている。
⑤ 適応が不安定になる1つの要因として、高齢期になると流動性知能に比べて結晶性知能が著しく低下することが挙げられる。
① ソーシャルコンボイを維持又は補償できるかということは適応を左右する要因の1つである。
正しいです。高齢期ではコンボイの成員が減少したりするので、維持や補償ができるかというのは適応を左右する要因です。
② 退職後は以前の高い活動性や社会的関係から、いかに速やかに離脱できるかによって左右される。
誤りです。「離脱理論」っぽい考え方ですが、必ずしも正しいものではありません。
③ 能力低下への補償として、活動領域を選択的に限定し、従来とは異なる代替方略を用いることが有効である。
正しいです。「SOC理論」の考え方になっています。
④ 未来志向的に自身のこれからを熟考させることが、自身の過去への関心を促し回想させるよりも有効とされている。
誤りです。Butlerは高齢期の回想には重要な機能がありパーソナリティの再構築などある種の適応に導く働きがあることを指摘しています。
高齢者への回想法という心理療法もありますし。
⑤ 適応が不安定になる1つの要因として、高齢期になると流動性知能に比べて結晶性知能が著しく低下することが挙げられる。
誤りです。高齢期になると結晶性知能に比べて流動性知能が著しく低下します。
次の記事
次からは、健康心理学に入っていきます。
コメント
たびたび失礼します
第1回 問125 の設問文について、
「高齢期の心理学的適応について、正しいものを1つ選べ。」
とありますが、「2つ選べ」の誤記ではないでしょうか?
ありがとうございますm(__)m
訂正しましたー。