サーカディアンリズムとは
地球上の生物が生まれながらにして持っている生体リズムは体内時計と呼ばれ、その中でもおよそ24時間周期のリズムをサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれます。
「概日」リズムとはおおよそ24時間という意味で、実際は25時間くらいになっています。
生物は地球の自転による24時間周期の昼夜変化に同調して、ほぼ1日の周期で体内環境を積極的に変化させ、人間においても体温やホルモン分泌などからだの基本的な機能は約24時間のサーカディアンリズムを示すことがわかっています。
加齢により体内時計の発振するサーカディアンリズムも変化を受け、高齢者では体内時計の前進により深部体温がより早い時刻に低下し、より早い時刻から上昇するようになるため、夜早くに眠たくなり、朝早くに目覚めてしまいます。
このようなサーカディアンリズムは視床下部の視交叉上核によって司られていると考えられています。
サーカディアンリズムの障害
生理機能の時間的秩序が乱れる時差飛行や夜間勤務では様々な障害が発生し「時差ぼけ」や「非同期症候群」などがあります。
また、リズム同調が障害される疾患としては「睡眠相後退症候群」や「非24時間睡眠覚醒リズム症候群」があります。
睡眠相前進症候群:夕方の眠気や早朝覚醒
非24時間睡眠覚醒リズム症候群:昼夜変化に同調した睡眠覚醒リズムを維持できず就寝と起床の時刻が遅れていく
レム睡眠&ノンレム睡眠
人の睡眠は、入眠後にレム睡眠とノンレム睡眠を90分周期で繰り返します。
レム睡眠
レム睡眠は、脳が起きていて身体が寝ている状態で夢を見ます。
本来覚醒しているはずの脳波を示しているのに眠っているという点で「逆説睡眠」とも呼ばれます。
現在では逆説睡眠という呼び方は使わないようです。
ノンレム睡眠
ノンレム睡眠は、体が起きていて脳が寝ている状態です。
脳波
β波:覚醒していて緊張状態のときはβ波が出現
θ波:レム睡眠に入るとθ波が出現
δ波:深い睡眠時にδ波が出現
ナルコレプシー
ナルコレプシーは、夜間に十分に眠ったとしても昼間に突然我慢できないほどの強い眠気に襲われ眠ってしまう睡眠障害です。
症状
以下の4症状が特徴的です。
入眠時幻覚:入眠後まもなく体験される現実感のある幻覚
情動脱力発作:笑ったり驚いたり等の陽性の強い情動の変化に伴って起こる全身の脱力
睡眠麻痺:いわゆる金縛り
メカニズム
神経ペプチドの一種である「オレキシン」は、ナルコレプシーと密接にかかわっており、オレキシンが少ないことでナルコレプシーの症状が出現します。
治療
睡眠発作を抑えるために精神刺激薬(メチルフェニデート、ぺモリン、ピプラドロール等)があります。
過去問
第3回 問86
ヒトのサーカディアンリズムと睡眠について、正しいものを1つ選べ。
① 加齢による影響を受けない。
② メラトニンは、光刺激で分泌が低下する。
③ 時計中枢は、視床下部の室傍核に存在する。
④ 睡眠相遅延(後退)症候群は、夕方から強い眠気が出る。
⑤ ノンレム睡眠とレム睡眠は、約 45 分の周期で出現する。
① 加齢による影響を受けない。
誤りです。加齢によりサーカディアンリズムは実時間よりも前進していきます。
② メラトニンは、光刺激で分泌が低下する。
正しいです。催眠作用のあるメラトニンは光刺激で分泌が低下します。
③ 時計中枢は、視床下部の室傍核に存在する。
誤りです。時計中枢は室傍核ではなく視床下部の視交叉上核です。
④ 睡眠相遅延(後退)症候群は、夕方から強い眠気が出る。
誤りです。これは睡眠相前進症候群の説明です。
睡眠相後退症候群は入眠困難と覚醒困難が慢性的に持続します。
⑤ ノンレム睡眠とレム睡眠は、約 45 分の周期で出現する。
誤りです。90分周期と言われています。
第1回(追試)問99
睡眠について、正しいものを1つ選べ。
① 夢を見るのはノンレム睡眠である。
② ノンレム睡眠は逆説睡眠とも呼ばれる。
③ 陰茎の勃起が起こるのはレム睡眠である。
④ 全身の骨格筋が緊張するのはレム睡眠である。
⑤ ノンレム睡眠は脳波によって第1期から第6期に分けられる。
① 夢を見るのはノンレム睡眠である。
誤りです。夢を見るのはレム睡眠です。
② ノンレム睡眠は逆説睡眠とも呼ばれる。
誤りです。逆説睡眠はレム睡眠のことです。
レム睡眠は本来覚醒しているはずの脳波を示しているのに眠っているという逆説的な睡眠です。
③ 陰茎の勃起が起こるのはレム睡眠である。
正しいです。勃起はレム睡眠と連動して起こることが知られています。
④ 全身の骨格筋が緊張するのはレム睡眠である。
誤りです。全身の骨格筋が緊張するのはレム睡眠ではなくノンレム睡眠です。
⑤ ノンレム睡眠は脳波によって第1期から第6期に分けられる。
誤りです。ノンレム睡眠は全4期で構成されています。
第1回 問10
成人の脳波について、正しいものを1つ選べ。
① α波は閉眼で抑制される。
② α波は前頭部に優位である。
③ β波はレム睡眠で抑制される。
④ δ波は覚醒時に増加する。
⑤ θ波は認知症で増加する。
① α波は閉眼で抑制される。
間違いです。α波は閉眼で増加します。
② α波は前頭部に優位である。
間違いです。α波は後頭部に優位です。
③ β波はレム睡眠で抑制される。
間違いです。睡眠時は様々な周波数が混在します。
④ δ波は覚醒時に増加する。
間違いです。δ波は、深い睡眠時に増加します。
⑤ θ波は認知症で増加する。
これが正解です。高齢になるとα波が減少してθ波が増加します。
第2回 問100
ナルコレプシーについて、正しいものを1つ選べ。
① 入眠時に起こる幻覚が特徴である。
② 治療には中枢神経遮断薬が用いられる。
③ 脳脊髄液中のオレキシン濃度の上昇が特徴である。
④ 笑いや驚きによって誘発される睡眠麻痺が特徴である。
⑤ 耐え難い眠気による睡眠の持続は通常2時間から3時間である。
① 入眠時に起こる幻覚が特徴である。
正しいです。ナルコレプシーといえば入眠時幻覚です。
② 治療には中枢神経遮断薬が用いられる。
誤りです。睡眠発作を抑えるために精神刺激薬が用いられます。
③ 脳脊髄液中のオレキシン濃度の上昇が特徴である。
誤りです。ナルコレプシーはオレキシンの欠損によってもたらされます。
④ 笑いや驚きによって誘発される睡眠麻痺が特徴である。
誤りです。笑いや驚きなどの陽性の強い情動の変化に伴って起こる全身の脱力を情動脱力発作といいます。睡眠麻痺は金縛りのことです。
⑤ 耐え難い眠気による睡眠の持続は通常2時間から3時間である。
誤りです。通常は10~20分くらい眠ると目が覚めてサッパリすることが特徴的で、1時間を超えることは稀です。
次の記事
次は、五感による知覚について。
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