汎適応症候群
セリエ(H.Selye)は、生体が外部からストレスを受けたとき、これらの刺激に適応しようとして生体に一定の反応が起こることを発見し、これを「汎適応症候群」と名付けました。
汎適応症候群は、ストレスに適応するためのHPA軸(視床下部、下垂体、副腎)の一連の反応です。
大脳皮質がストレスを認識
視床下部→副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン
下垂体前葉→副腎皮質刺激ホルモン
副腎皮質→コルチゾール分泌→甲状腺ホルモン増強(代謝の促進)、抗炎症、免疫力低下
コルチゾールは別名ストレスホルモンと呼ばれますね。
ストレスコーピング
セリエ(H.Selye)のストレス理論を引き継ぎ研究を深めていったのが、アメリカの心理学者リチャード・ラザルス(R.S.Lazarus)です。
セリエのストレス理論は主に身体に焦点を当てていましたが、ラザルスは心理学的な見地からストレスコーピング理論を構築しました。
ラザルス(R.S.Lazarus)とフォルクマン(S.Folkman)はトランスアクショナルモデルを提唱し、先行条件のストレッサー、それに対する認知的評価、ストレスコーピング、ストレス反応、再評価という過程が考えられています。
ストレッサーとはストレス源のこと、そのストレッサーをどのように認知し評価するか、そして、そのストレスへの対処法であるストレスコーピング、これが重要です。
詳しくは以下のページで。
バーンアウト
過度のストレスを受けながら仕事を頑張りすぎて燃え尽きてしまうバーンアウトについて。
詳しくは以下の記事で。
ストレス関連障害
ストレス関連障害として、「急性ストレス障害」と「PTSD」を覚えておきましょう。
外傷後ストレス障害(PTSD):症状が4週間以上持続
詳細は以下の記事で。
過去問
第1回(追試)問100
ストレス反応について、正しいものを1つ選べ。
① 甲状腺ホルモンは代謝を促進する。
② コルチゾールは肝臓における糖分解を促進する。
③ コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)は下垂体後葉を刺激する。
④ ストレスに長期間暴露され、疲弊状態になると免疫系が活性化される。
⑤ ストレス反応の第1段階は短時間で終わる視床下部からのホルモン分泌である。
① 甲状腺ホルモンは代謝を促進する。
正しいです。
② コルチゾールは肝臓における糖分解を促進する。
誤りです。コルチゾールは糖分解ではなく糖新生を促進します。
③ コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)は下垂体後葉を刺激する。
誤りです。下垂体後葉ではなく下垂体前葉です。
④ ストレスに長期間暴露され、疲弊状態になると免疫系が活性化される。
誤りです。免疫が低下します。
⑤ ストレス反応の第1段階は短時間で終わる視床下部からのホルモン分泌である。
誤りです。神経系の伝達速度は速いですが、内分泌系(ホルモン分泌)は血液の循環に伴って全身に広がるのでゆっくりとした作用です。
第2回 問119
ストレス反応について、誤っているものを1つ選べ。
① 身体的ストレス反応は、中枢神経系に引き続き内分泌系に現れる。
② 身体的ストレス反応には、交感神経系と副交感神経系の両方が関わる。
③ 心身症とは、発症や経過に身体的ストレス反応が関わる身体疾患である。
④ ストレッサーの種類によって、心身に生じるストレス反応の内容も決まる。
⑤ 心理的ストレス反応には、抑うつ、不安、怒りなどのネガティブな感情が含まれる。
選択肢④が誤りです。
第5回 問96
ストレス状況で副腎髄質から分泌が促進されるホルモンとして、最も適切なものを1つ選べ。
① インスリン
② メラトニン
③ アドレナリン
④ コルチゾール
⑤ サイロキシン
ストレスを受けた時に、副腎皮質から分泌されるのがコルチゾール、副腎髄質から分泌されるのがアドレナリンです。ということで、選択肢③が正解です。
第1回(追試)問112
コーピングについて、誤っているものを1つ選べ。
① ストレスフルな事態に対して行う認知的行動的努力である。
② ストレスフルな事態そのものに焦点を当てたコーピングを問題焦点型コーピングという。
③ ストレスフルな事態を過度に脅威的だと評価すると、選択できるコーピングの幅が狭くなる。
④ 事態に応じて柔軟に適切なコーピングを選択できることはストレスマネジメントの重要な側面である。
⑤ 解決が困難な事態では、問題焦点型コーピングが情動焦点型コーピングよりもストレス反応の低減効果が大きい。
選択肢⑤が誤りです。
第1回 問95
ストレスコーピングについて、正しいものを1つ選べ。
① 状況が変わっても、以前成功したコーピングを実行した方がよい。
② ストレッサーに対して多くの種類のコーピングを用いない方がよい。
③ コーピングを続けているうちに疲労が蓄積することを、コーピングのコストという。
④ コーピングの結果は、二次的評価というプロセスによって、それ以降の状況の評価に影響を与える。
⑤ 一時的に生じたネガティブな感情を改善するコーピングは、慢性的なストレス反応の改善には効果がない。
① 状況が変わっても、以前成功したコーピングを実行した方がよい。
誤りです。状況が変わったら、その状況に合わせたコーピングを用いなければなりません。
② ストレッサーに対して多くの種類のコーピングを用いない方がよい。
誤りです。ストレッサーの種類は多様ですので、様々な種類のコーピングを用います。
③ コーピングを続けているうちに疲労が蓄積することを、コーピングのコストという。
正しいです。
④ コーピングの結果は、二次的評価というプロセスによって、それ以降の状況の評価に影響を与える。
誤りです。二次的評価はストレッサーに対して対処可能かどうかを判定する評価なので、二次的評価の後にコーピングが実施されます。
⑤ 一時的に生じたネガティブな感情を改善するコーピングは、慢性的なストレス反応の改善には効果がない。
誤りです。慢性的なストレス反応の改善にも効果があります。
第5回 問10
R.S.LazarusとS.Folkmanによるトランスアクショナルモデル<transactional model>の説明として、適切なものを1つ選べ。
① パニック発作は、身体感覚への破局的な解釈によって生じる。
② 抑うつは、自己・世界・未来に対する否定的な認知によって生じる。
③ 無気力は、自らの行動と結果に対する非随伴性の認知によって生じる。
④ ストレス反応は、ストレッサーに対する認知的評価とコーピングによって決定される。
⑤ 回避反応は、レスポンデント条件づけとオペラント条件づけの原理によって形成される。
選択肢④が正解です。
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