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【知能検査】検査の基本とフリン効果

知能検査 心理検査
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知能検査と言えば、田中ビネー知能検査ウェクスラー式知能検査が有名で、知能指数IQだけでなく総合評価のために子供から成人まで幅広く用いられます。

ここではそんな知能検査の実施方法の基本について見ていきましょう。

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知能検査の基本

知能検査だけでなく心理検査の多くには著作権があるため、質問紙などをコピーしたりネットに公開したりしてはいけません。

このブログにも一切掲載されていないのはそのためです。

検査について、被験者に事前に説明し、検査者と被験者はラポール(信頼関係)を形成することが重要です。

知能検査といえば検査者は画一的にマニュアル通りに接するだけと思われがちですが、信頼関係を形成することが重要なんですね。

検査中は、被験者が疲れているようであれば、検査のマニュアルに反しない範囲で適宜休憩をとるなどの対応も必要です。

集団式知能検査

集団式知能検査といえば、日本では文部科学省が行っている「全国学力・学習状況調査」などがあります。

知能検査はもともと、知能程度が大体等しい児童を集めて学級を編成すれば教育する上で効果が上がるのではないかと考えたというのが始まりで、世界初の知能検査は1905年に開発されたビネー式知能検査でした。

集団的知能検査は、1917年に第一次世界大戦に参戦したアメリカで、陸軍検査(アーミーテスト)が作られます。

そのアーミーテストに結果によって兵士の配置を決めたりしました。

ということで、集団式知能検査は第一次世界大戦という戦争をきっかけに広まっていきます。

有名なアメリカ軍部の集団知能検査としてはヤーキーズ(R.M.Yerkes)らが1918年に開発したアーミーテストがあります。

ヤーキーズは、英語を母国語とする兵士たちの知能水準を言語機能で測定する「α式検査」と、英語の読解能力が十分でない移民・外国人の知能水準を計測する「β式検査」を作成しました。

ウェクスラー式知能検査で見られる言語性IQや動作性IQ(第四版では廃止されましたが)という枠組みは、これらα検査とβ検査の名残です。

フリン効果

1984年、ニュージーランドオタゴ大学のジェームズ・フリン(J.R.Flynn)教授は「人間の知能指数(IQ)は年々上昇し続ける」という研究論文を発表し、この現象は「フリン効果」と呼ばれています。

フリン教授は知能テストの換算表が数年ごとに改定されなければならないことに着目し、研究を始めます。

代表的な知能検査であるビネー式知能検査ウェクスラー式知能検査の結果を元に、様々な国や年齢の人のIQを調査し「14カ国におけるIQの大幅上昇」という論文で示しました。

このフリン効果は、難しい課題に関する検査ほどIQの上昇幅が大きく、結晶性知能のような知識よりも、容易に学習できないような流動性知能において効果が表れるとされています。

アンダーアチーバー&オーバーアチーバー

アンダーアチーバーとオーバーアチーバーの意味を押さえておきましょう。

アンダーアチーバー:知能検査の結果から期待される成績よりも学業成績がはるかに悪い者
オーバーアチーバー:知能検査の結果から期待される成績よりも学業成績がはるかに良い者

アンダーアチーバーの原因としては、身体的要因、性格要因、家庭環境、学校環境など様々です。

過去問

第3回 問89

知能検査の実施について、最も適切なものを1つ選べ。
① 検査者が十分に習熟していない検査を用いることを控えた。
② 被検査者に求められたため、検査用紙をコピーして渡した。
③ 客観的情報を収集するために、被検査者とのラポール形成を避けた。
④ 被検査者が検査に対する先入観や恐怖心を抱かないように、事前に検査について説明することを控えた。
⑤ 実施時間が時間を超え、被検査者が疲れている様子であったが、そのまま続けて全ての検査項目を実施した。

① 検査者が十分に習熟していない検査を用いることを控えた。
これはその通りですね。検査する側がその検査に習熟していないのであれば、その検査を用いることを控えるべきです。

② 被検査者に求められたため、検査用紙をコピーして渡した。
これはダメです。心理検査の多くは著作権保護のため検査用紙や記録用紙をコピーして使用することが禁じられています。
このブログの記事にも検査用紙の写真などを掲載していないのは、そのためです。

③ 客観的情報を収集するために、被検査者とのラポール形成を避けた。
間違いです。検査は機械的に行うのではなく被検査者がリラックスして臨めるよう被検査者との間でラポールを形成することが重要となります。

④ 被検査者が検査に対する先入観や恐怖心を抱かないように、事前に検査について説明することを控えた。
間違いです。事前の検査説明は必須で、検査の目的や検査結果の使用方法、秘密保持等についてインフォームドコンセントが必要です。

⑤ 実施時間が時間を超え、被検査者が疲れている様子であったが、そのまま続けて全ての検査項目を実施した。
間違いです。疲れたまま検査を進めると本来の被験者の能力などが検査に反映されない可能性があるので、適宜休憩をとるなどの対応を行います。

第2回 問87

知能検査における Flynn効果について、正しいものを1つ選べ。
① 中高年ではみられない。
② 平均IQが徐々に低下する現象である。
③ 欧米諸国では効果が認められていない。
④ ウェクスラー式知能検査のみで検出される。
⑤ 流動性知能は結晶性知能より、この効果の影響を強く受ける。

① 中高年ではみられない。
間違いです。フリン効果は中高年でもみられます。

② 平均IQが徐々に低下する現象である。
間違いです。平均IQが徐々に上昇する現象です。

③ 欧米諸国では効果が認められていない。
間違いです。欧米諸国を含む多くの国々で効果が認められています。

④ ウェクスラー式知能検査のみで検出される。
間違いです。ウェクスラー式知能検査のみではなく、ビネー式知能検査でも検出されます。

⑤ 流動性知能は結晶性知能より、この効果の影響を強く受ける。
正しいです。フリン効果は結晶性知能より流動性知能において効果が表れるとされています。

第2回 問123

知能検査を含む集団式の能力テストについて、適切なものを1つ選べ。
① 個別で実施することはできない。
② 第二次世界大戦を機に兵士の選抜のために開発された。
③ 学校での成績の予測妥当性は相関係数にして 0.60 を超える。
④ 学習障害や発達の遅れのスクリーニングとして使うことができる。

① 個別で実施することはできない。
間違いです。集団式の能力テストは集団で実施する必要はなく、個別にテストを受けてもOKです。

② 第二次世界大戦を機に兵士の選抜のために開発された。
間違いです。第二次世界大戦以前の第一次世界大戦のころに開発されています。

③ 学校での成績の予測妥当性は相関係数にして 0.60 を超える。
間違いです。知能検査で測れる「知能」は、学校での成績とはほとんど相関がありません。

④ 学習障害や発達の遅れのスクリーニングとして使うことができる。
正しいです。

第1回(追試)問66

中学校の担任教師が担当する5名の生徒について、日常の様子と知能検査の結果を参照して次のように考えている。
Aは怠学傾向がみられそもそも勉強に関心が向いていない。
Bは知能指数が高いにもかかわらず学力が向上しない。
Cの学力が向上しない理由は知能指数の低さにありそうだ。
Dは知能指数が低いことに加え、注意散漫で授業に集中できない。
Eは知能指数が低いにもかかわらず学力が高い。
5名の生徒のうち、アンダーアチーバーが疑われる生徒として、最も適切なものを1つ選べ。

① A
怠けるだけの怠学傾向はアンダーアチーバーではありません。

② B
これが正解、アンダーアチーバーです。

③ C
知能指数が低くて学力が向上しないのは普通のこと、アンダーアチーバーではありません。

④ D
これもアンダーアチーバーではありません。

⑤ E
これはオーバーアチーバーの説明です。

第2回 問125

病院において、公認心理師が医師から心理検査を含むアセスメントを依頼された場合、その結果を報告する際の留意点として、不適切なものを1つ選べ。
① 依頼された際の目的に応えられるように、情報を整理し報告する。
② 心理的側面のみでなく、生物学的側面や社会環境も統合して報告する。
③ クライエントの処遇や治療方針を決めるための参考になるよう配慮する。
④ 心理検査の結果を他の情報と照合することはせず、心理検査からの客観的報告にとどめる。

① 依頼された際の目的に応えられるように、情報を整理し報告する。
正しいです。

② 心理的側面のみでなく、生物学的側面や社会環境も統合して報告する。
正しいです。

③ クライエントの処遇や治療方針を決めるための参考になるよう配慮する。
正しいです。

④ 心理検査の結果を他の情報と照合することはせず、心理検査からの客観的報告にとどめる。
間違いです。他の情報と照合することをしないことが客観的報告にはなりません。

次の記事

次は、知能検査の中でも認知用に特化した「認知症検査」について。

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