犯罪被害者を救済する法律は以下の3つ。
1980年 犯罪被害者給付金支給法
2000年 犯罪被害者保護法
2004年 犯罪被害者等基本法
この中でも「犯罪被害者給付金支給法」は、1980年からある古い法律で、給付金の支給によって犯罪被害者を救済する仕組みは昔からありました。
その後、犯罪被害者の刑事手続における負担の軽減を目的に「犯罪被害者保護法」ができ、2004年には「犯罪被害者等基本法」によって体系的に保護されるようになりました。
総合的な法律相談を行う日本司法支援センター(法テラス)は、「総合法律支援法」に規定されています。
犯罪被害者等基本法
第二条(定義)
2 この法律において「犯罪被害者等」とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族をいう。
3 この法律において「犯罪被害者等のための施策」とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、再び平穏な生活を営むことができるよう支援し、及び犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるようにするための施策をいう。
第八条(犯罪被害者等基本計画)
2 犯罪被害者等基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 総合的かつ長期的に講ずべき犯罪被害者等のための施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等のための施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、犯罪被害者等基本計画の案につき閣議の決定を求めなければならない。
4 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、犯罪被害者等基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、犯罪被害者等基本計画の変更について準用する。
第二十四条
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 犯罪被害者等基本計画の案を作成すること。
二 前号に掲げるもののほか、犯罪被害者等のための施策に関する重要事項について審議するとともに、犯罪被害者等のための施策の実施を推進し、並びにその実施の状況を検証し、評価し、及び監視し、並びに当該施策の在り方に関し関係行政機関に意見を述べること。
犯罪被害者等施策推進会議は内閣府に設置することを覚えておきましょう。
第二十五条(組織)
第二十六条(会長)
2 会長は、会務を総理する。
3 会長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員がその職務を代理する。
第二十七条(委員)
一 国家公安委員会委員長
二 国家公安委員会委員長以外の国務大臣のうちから、内閣総理大臣が指定する者
三 犯罪被害者等の支援等に関し優れた識見を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する者
2 前項第三号の委員は、非常勤とする。
第二十八条(委員の任期)
前条第一項第三号の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 前条第一項第三号の委員は、再任されることができる。
犯罪被害者給付金支給法
第四条
一 遺族給付金 犯罪行為により死亡した者の第一順位遺族(次条第三項及び第四項の規定による第一順位の遺族をいう。)
二 重傷病給付金 犯罪行為により重傷病を負つた者
三 障害給付金 犯罪行為により障害が残つた者
つまり、給付金を受けられるのは、遺族、重傷、後遺症の場合です。
第二十三条(犯罪被害者等早期援助団体)
この犯罪被害者等早期援助団体は「被害者支援センター」と呼ばれ、都道府県公安委員会から指定を受けます。
犯罪被害者保護法
犯罪被害者保護法には、刑事裁判の優先傍聴、刑事記録の閲覧・コピー、損害賠償命令等の制度が定めています。
第二条(公判手続の傍聴)
第三条(被害者等による公判記録の閲覧及び謄写)
2 裁判所は、前項の規定により謄写をさせる場合において、謄写した訴訟記録の使用目的を制限し、その他適当と認める条件を付することができる。
3 第一項の規定により訴訟記録を閲覧し又は謄写した者は、閲覧又は謄写により知り得た事項を用いるに当たり、不当に関係人の名誉若しくは生活の平穏を害し、又は捜査若しくは公判に支障を生じさせることのないよう注意しなければならない。
日本司法支援センター(法テラス)
日本司法支援センター(法テラス)は、総合法律支援法に基づき、独立行政法人の枠組みに従って設立された法人で、総合法律支援に関する事業を迅速かつ適切に行うことを目的としています。
法律によってトラブル解決へと進む道を指し示すことで、相談する方々のモヤモヤとした心に光を「照らす」場という意味が込められています。冒頭の画像は法テラスのロゴマークです。
以下のような形の寄付を受け付けています。
一般寄付
法テラスは特定公益増進法人に指定されていますので、法テラスに寄附することで税制上(所得税、相続税、法人税)の優遇措置を受けることができます。
また、個人(納税者)から法テラスに寄附した場合は、特定寄附金として所得税の寄附金控除の対象となります。
贖罪寄付
道路交通法違反、覚せい剤取締法違反など「被害者のいない刑事事件」や「被害者に対する弁償ができない刑事事件」などの場合に、被疑者・被告人が事件への反省の気持ちを表すために、公的な団体等に対して行う寄附です。
更生寄付
保護観察中の方や保護観察を終了した人が、犯した罪の重さを認識し、悔悟の情を深めるとともに、再び罪を犯さない決意を長く持ち続けるため、被害者等が被害弁償金を受けとられないなどの事情があるときはそれに代わるものとして、また、被害者のいない事件においては再び犯罪をしないための決意を表明するという趣旨です。
過去問
第2回 問135
犯罪被害者等基本法について、正しいものを2つ選べ。
① 犯罪等とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為を指し、交通事故も含まれる。
② 犯罪被害者等とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族であり、日本国籍を有する者をいう。
③ 犯罪被害者等基本計画の案を作成するなどの事務をつかさどる犯罪被害者等施策推進会議は、内閣府に置く。
④ 犯罪被害者等のための施策とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、社会に復帰できるための支援の施策である。
⑤ 犯罪被害者等のための施策は、警察等刑事司法機関に事件が係属したときから、必要な支援等を受けることができるよう講ぜられる。
① 犯罪等とは、犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為を指し、交通事故も含まれる。
正しいです。
② 犯罪被害者等とは、犯罪等により害を被った者及びその家族又は遺族であり、日本国籍を有する者をいう。
間違いです。日本国籍に限定してはいません。
③ 犯罪被害者等基本計画の案を作成するなどの事務をつかさどる犯罪被害者等施策推進会議は、内閣府に置く。
正しいです。
④ 犯罪被害者等のための施策とは、犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、社会に復帰できるための支援の施策である。
間違いです。このように限定していません。
⑤ 犯罪被害者等のための施策は、警察等刑事司法機関に事件が係属したときから、必要な支援等を受けることができるよう講ぜられる。
間違いです。このように限定していません。
犯罪被害者等基本法はかなり幅広い救済を規定しています。
第4回 問45
犯罪被害者等基本法に関する記述として誤っているものを1つ選べ。
① 犯罪被害者等のための政策は、犯罪被害者等が被害を受けた時から3年間までの間に講ぜられる。
② 犯罪被害者等が心理的外傷から回復できるよう、 適切な保健医療サービスや福祉サービスを提供する。
③ 犯罪被害者等のための 施策は、国、地方公共団体、その他の関係機関、民間の団体等との連携の下、実施する。
④ 刑事事件の捜査や公判等の過程における犯罪被害者等の負担が軽減されるよう 専門的知識や技能を有する職員を配置する。
⑤ 教育・広報 活動を通じて 犯罪被害者等が置かれている状況や 犯罪被害者等の名誉や生活の平穏への配慮について国民の理解を深める。
選択肢①が誤りです。
第1回 問148
40歳の女性A。Aには二人の息子がいたが、Aの長男が交通事故の巻き込まれて急死した。
事故から半年が経過しても、涙が出て何も手につかない状態が続いている。
Aの状態を案じた夫に連れられて、カウンセリングルームに来室した。
カウンセリングの中で、Aは「加害者を苦しめ続けてやる。自分はこんなに悲しみに暮れている。息子が亡くなったのに平気な顔で生活している夫の神経が信じられない」などと繰り返し語っている。
このときのAへの支援の在り方として、最も適切なものを1つ選べ。
① 加害者を苦しめ続けたいというAの気持ちを否定しない。
② Aの安心を優先させるため「私はあなたを全部理解できる」という。
③ Aの話が堂々巡りになっているため、将来のことに話題を変える。
④ カウンセリングでよくなった担当事例を紹介して、Aを勇気づける。
⑤ Aの考えに同調し「確かにご主人の神経は信じられませんね」と言う。
選択肢①が正解です。
第3回 問53
被害者支援の制度について、正しいものを2つ選べ。
① 被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している。
② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる。
③ 財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される。
④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる。
⑤ 日本司法支援センター(法テラス)は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄附を受けない。
① 被害者支援センターは、法務省が各都道府県に設置している。
誤りです。法務省ではなく公安委員会です。
② 受刑者の仮釈放審理に当たって、被害者は意見を述べることができる。
正しいです。更生保護法第38条の「被害者等の意見等の聴取」に規定されています。
③ 財産犯の被害に対して、一定の基準で犯罪被害者等給付金が支給される。
誤りです。財産の被害ではなく「死亡・重症・後遺症」の場合です。犯罪被害者給付金支給法に定められています。
④ 刑事事件の犯罪被害者は、裁判所に公判記録の閲覧及び謄写を求めることができる。
正しいです。
⑤ 日本司法支援センター(法テラス)は、被疑者・被告人がしょく罪の気持ちを表すための寄附を受けない。
誤りです。受け付けます(贖罪寄付といいます)。
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次からは、災害心理学に入っていきます。
はじめに、DMATやDPATなどの災害派遣チームについて知りましょう。
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