ゲシュタルト療法は、ドイツ出身の精神分析医フレデリック・パールズ(F.Perls)と、その妻でゲシュタルト心理学者のローラ・パールズ(L.Perls)によって創始された、ゲシュタルト心理学に基づいた心理療法です。
ホメオスタシス
ゲシュタルト心理学は、ゲシュタルト(全体)を捉えるという特徴がありましたね。
ゲシュタルト心理学に基づいているということで、ゲシュタルト療法でも体全体の恒常性である「ホメオスタシス」を機能させることを目指します。
ホメオスタシスは、体に傷を負っても自然に治るような、元に戻ろうとする力ですね。
身体の声に耳を傾けることで自分の真の欲求、感情に気づくことで、人間に本来備わっているホメオスタシスが働き、無理をせず、自分らしい生き方をすることができるようになります。
今を生きる
ゲシュタルト療法では、未完結な問題や悩みに対して、再体験を通しての「今ここ」での「気づき」を得ることを重視します。
セラピーでは、過去に何か問題があったという見方をするのではなく、「今ここ」で自分が何をしているのかに注意を向けます。
以下のようにグループワークで実施されることが多いです。
マインドフルネスとも共通してますね。
グループワーク
ゲシュタルト心理学は、集団力学誕生の契機となりました。
その流れを受けているゲシュタルト療法でも、集団力学を活用しグループワークが実施されます。
ゲシュタルト療法は、レヴィンの「場の理論」の影響を受けており、グループという「場」を大切にし、グループで考え方や人生経験の違う人たちと影響し合うことを経験します。
図と地
ゲシュタルト心理学といえば、仮現運動や恒常性など「知覚」を研究していましたが、その中に「図と地」という概念があります。
視野に二つの領域が存在するとき、一方の領域には形だけが見え、もう一つの領域は背景を形成します。
この形の部分を「図」、背景の部分を「地」といいます。
上の図はルビンの壺ですが、真ん中の壺に注意を向けると、白い部分が「図」、黒い部分が「地」になります。しかし、黒い部分が顔に見えてしまうと、黒い部分が「図」、白い部分が「地」になります。
このように、ゲシュタルト療法では、意識的にどこに注意を向けるかによって、意識されずに「地」となっていた部分を、意識の前面である「図」に反転させるプロセスを重視します。
技法
エンプティチェア
エンプティチェアは、2つの椅子を向かい合わせに設置して一方の椅子に座り、あなたが理解できない人、理解に苦しむ人を思い浮かべその人に対する不満や不満をぶつけます。
次に反対側の椅子に座り、その思い浮かべた人になりきってその人からどう映っているかを話します。
1人で一人二役をこなし意見をぶつけ合うことで、相手が自分をどのように見ているか客観視することができます。
ドリームワーク
ドリームワークでは、頻繁に見る夢について、自分自身が夢の一部になったつもりで思いつくまま話します。
夢に登場してくる人物や物事にクライエントがなりきって演じ、言葉や行動を使って夢を表現していきます。
過去問
第4回 問81
A.Ellisが創始した心理療法として最も適切なものを1つ選べ
① 行動療法
② 精神分析療法
③ ゲシュタルト療法
④ 論理情動行動療法
⑤ クライエント中心療法
① 行動療法
間違いです。行動療法といえば、アイゼンクです。
② 精神分析療法
間違いです。精神分析療法といえば、フロイトです。
③ ゲシュタルト療法
間違いです。ゲシュタルト療法といえば、パールズ夫妻です。
④ 論理情動行動療法
これが正解です。エリスといえば論理療法ですが、のちに「論理情動行動療法」と呼ばれるようになりました。
⑤ クライエント中心療法
間違いです。クライエント中心療法といえば、ロジャースです。
第4回 問4
心的過程の”全体”や”場”を重んじ集団力学誕生の契機となった心理学の考え方として最も適切なものを1つ選べ。
① 構成心理学
② 比較心理学
③ 行動主義心理学
④ 新行動主義心理学
⑤ ゲシュタルト心理学
「全体」といえばゲシュタルト、レヴィンの「場の理論」「集団力学」に影響を与えたのも、選択肢⑤「ゲシュタルト心理学」です。ゲシュタルト療法ではグループワークが行われますが、それは元になっているゲシュタルト療法が集団力学の契機となっているからです。
次の記事
次は、心理面接について。
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