心理学の3大巨頭と呼ばれる、フロイト、ユング、アドラーを紹介します。
そして、第4の巨頭も。
S.フロイト@オーストリア
精神分析学
ジークムント・フロイト(S.Freud)はオーストリアの精神分析学者で、「無意識」の重要性に気づき、精神分析学を創始しました。
精神分析学は20世紀の心理学の三大潮流の一角です。
エス・自我・超自我
心理学の始まりと言われるヴントの要素主義が「意識」を研究対象にしたのに対して、フロイトは「無意識」に着目し、心を「意識、前意識、無意識」の3つの分け、のちに「エス(イド)、自我(エゴ)、超自我(スーパーエゴ)」の3層に分けて考えました。
エスは本能、自我は本能を抑えながら実生活に適応する心の動き(防衛機制など)、超自我は良心的に生きようとする道徳心などです。
ジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイト(A.Freud)は自我心理学を提唱しています。
自由連想法&夢分析
フロイトの無意識に着目する精神分析学は、自由連想法や夢分析に特徴づけられます。
自由連想法は、ある言葉を与えられた時に心に浮かぶままの自由な考えを連想していく心理療法、夢分析は、夢には無意識が現れると考え夢を分析の対象にします。
防衛機制(適応機制)
防衛機制はフロイトが考え出した概念で、娘のアンナ・フロイト(A.Freud)や児童分析のメラニー・クラインに受け継がれていきます。
ジークムント・フロイトの娘であるアンナ・フロイトは「遊戯療法」で有名ですね。遊戯療法は、精神分析の児童版である「児童分析」から始まっています。
防衛機制は、心が傷つくことを避けるための無意識の心の働きです。
この防衛機制によって我々は、不安やストレスから身を守っています。
例えば人間は欲求を無意識に「抑圧」します。
この抑圧も防衛機制の一種です。
そして、精神分析学では、夢分析などを用いて抑圧された無意識を意識化します。
精神分析論の防衛機制に関する実験的研究の結果を基盤に発展した心理検査に、「P-Fスタディ」があります。
この検査は、欲求不満場面の絵を見せてその反応を分析します。
P:Picture(絵)、F:Frustration(欲求不満)の頭文字をとっています。
そのままですね。
C.G.ユング@スイス
フロイトの弟子であったカール・グスタフ・ユング(C.G.Jung)は、意見の違いでフロイトと決別しています。
ユング心理学(分析心理学)
ユングは無意識の根底には人類の祖先から受け継がれている「集合的無意識」があると考えました。
感情や記憶が保存されている個人的無意識と、その奥に人類共通の記憶が保存されている集合的無意識があると考えたのです。
類型論「内向型」「外向型」
ユングと言えば、パーソナリティ理論(類型論)です。
ユングは人間には外向性と内向性があると考えました。
興味や関心など、心的エネルギーが外に向かうのが外向性、自分の内面に向かうのが内向性です。
さらに、人間の心を「思考」「感情」「感覚」「直観」の4タイプに分類しました。
詳しくは以下のパーソナリティ理論で。
A.アドラー@オーストリア
アドラー心理学(個人心理学)
アルフレッド・アドラー(A.Adler)は、フロイトの共同研究者でしたが、決別し「個人心理学」を提唱します。
個人心理学では、5つの前提「個人の主体性」「全体論」「目的論」「認知論」「対人関係論」を謳っています。
ここでは、フロイトとの対比で「目的論」と「対人関係論」に着目して見ていきましょう。
目的論
フロイトが人間行動の「原因」を研究したのに対し、アドラーは「目的」に着目しました。
人は「原因」によって行動するのではなく、「目的」によって行動していると考えるのがアドラー心理学です。
例えば、親が子どもを叱るとき、子どもが悪いことをしたという原因によって叱っていると考えるのがフロイト、子どもの教育という目的のために叱っていると考えるのがアドラーです。
対人関係論
アドラー心理学は、2013年に出版された「嫌われる勇気」で紹介され有名になりました。
この本で紹介されている「人間の悩みはすべて対人関係の悩みである」というアドラーの考え方に現れているように、アドラー心理学には人間関係で悩まないための秘訣が盛り込まれています。
例えば、「世界中に自分以外の人間がいない」と想像してみてください。
すると、今ある悩みのほとんどが無くなりませんか?
人間関係で悩まないための秘訣を見ていきましょう。
・承認欲求に支配されない
・競争意識を排除する
・課題の分離
まずは、他者に認められたいという承認欲求と競争意識を捨てましょう。
承認欲求というと、マズローの欲求階層説の上から2番目のやつだね。
「他人が自分をどう思うか」という考えに対しては、常に「どうでもよい」と思うこと。
なぜならそれは、どうすることもできない他人の課題であり、自分の課題ではないからです。
これが「課題の分離」、まさに嫌われる勇気。
このように考えることで、スッと肩の荷がおりますよね。
第4の巨頭:V.E.フランクル@オーストリア
ヴィクトール・エミール・フランクル(V.E.Frankl)は、フロイトやアドラーから心理学を学びます。
最終的には師匠であるアドラーと考え方の相違で決別していますが。
アドラーがフロイトと決別し「個人心理学」を確立したように、フランクルもアドラーと決別し独自の心理学を深めていきます。
フランクルの特徴は、「生きる意味」を満たすことが生きる力になると考えた点です。
これはナチス収容所での地獄の生活の中で見出した、彼の理論です。
フロイトもアドラーもフランクルも、オーストリア出身のユダヤ人でした。
フランクルの収容所生活は以下の記事で読んでみてください。
過去問
第3回 問16
精神分析理論の防衛機制に関する実験的研究の結果を基盤に発展した心理検査として、最も適切なものを1つ選べ。
① SCT
② TAT
③ MMPI
④ P-F スタディ
⑤ ロールシャッハ・テスト
これは、選択肢④「P-Fスタディ」ですね。欲求不満に対して防衛機制が働く仕組みを分析します。
次の記事
それでは、いよいよここから「心理検査」に入っていきます。
上の過去問の選択肢で出て来たSCT、TAT、MMPI、ロールシャッハテストなど全て学びましょう。
まずは、フロイトの精神分析理論の防衛機制に関する実験的研究の結果を基盤に発展した「P-Fスタディ」から。
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