安全文化とは
「安全文化」という考え方が安全対策や事故の問題の中で語られるようになったきっかけは、1986年の旧ソ連ウクライナで発生したチェルノブイリ原子力発電所事故です。
1996年にIAEA(国際原子力機関)より安全文化の定義や組織の安全文化の測定法が提案されました。
IAEAによると、安全文化とは「安全にかかわる諸問題に対して最優先で臨み、その重要性に応じた注意や気配りを払うという組織や関係者個人の態度、特性の集合体」とされています。
この定義をもとにジェームズ・リーズン(J.T.Reason)は、下記の4つの安全文化を規定しました。
安全文化4要素
報告する文化
自己のエラーやニアミスを率直に報告しようとする文化です。
正義の文化
不可欠な安全関連情報の提供を奨励し、そうでない場合を制裁する信頼関係に基づく文化です。
柔軟な文化
状況に応じて組織形態を変化させるなど組織自身を再構成できる文化です。
学習する文化
安全情報システムから正しい結論を導き出す意思と能力、大きな改革を実施する意思をもつ文化です。
過去問
第1回(追試)問123
J.T.Reasonが提唱している安全文化の構成要素として、正しいものを1つ選べ。
① 組織の命令形態を堅持する。
② エラーやミスは影響度の高いものを報告する。
③ 過去に起こったエラーやミスから学ぶことを重視する。
④ 安全に関する規則違反や不安全行動については処罰しない。
① 組織の命令形態を堅持する。
間違いです。柔軟な文化は「状況に応じて組織形態を変化させるなど組織自身を再構成できる文化」です。
② エラーやミスは影響度の高いものを報告する。
間違いです。報告する文化は「自己のエラーやニアミスを率直に報告しようとする文化」です。
③ 過去に起こったエラーやミスから学ぶことを重視する。
正しいです。これは「学習する文化」です。
④ 安全に関する規則違反や不安全行動については処罰しない。
間違いです。正義の文化は「不可欠な安全関連情報の提供を奨励し、そうでない場合を制裁する信頼関係に基づく文化」です。
第5回 問50
J.T.Reasonが提唱している安全文化の構成要素を表す内容として、不適切なものを1つ選べ。
① 自らのエラーを率直に報告する。
② 定められた指揮系統に厳密に従う。
③ 不可欠な安全関連情報を提供する。
④ 安全に関する情報を基に正しい結論を導き出す。
① 自らのエラーを率直に報告する。
これは「報告の文化」です。
② 定められた指揮系統に厳密に従う。
これが誤りなので、正解です。「柔軟な文化」の逆の内容になっています。
③ 不可欠な安全関連情報を提供する。
これは「正義の文化」です。
④ 安全に関する情報を基に正しい結論を導き出す。
これは「学習する文化」です。
次の記事
次は、組織におけるリスクマネジメントについて。
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