生物心理社会モデルとは
1977年にジョージ・エンゲル(G.Engel)によって提唱された生物心理社会モデル(BPSモデル)は、人間を生物的側面(Biological)、心理的側面(Psychological)、社会的側面(Social)から統合的に捉えようとするモデルです。
これら3つの側面は互いに影響をし合い、我々の健康や病気に影響していると考えます。
WHOの国際生活機能分類ICFや精神障害の診断・統計マニュアルDSM-5にも共通の考え方が含まれていますね。
この生物心理社会モデルが登場する前は、生物医学モデル(Biomedical Model)が主流でした。
このモデルでは、病気の原因から疾患・障害まで直線的な因果関係が想定されており、原因が特定できない慢性の病気などについては十分に説明できないといった問題点がありました。
生物心理社会モデルは、このような生物医学モデルへの批判として誕生しました。
過去問
第2回 問78
生物心理社会モデルについて、適切なものを1つ選べ。
① スピリチュアリティを最も重視するモデルである。
② クライエントを包括的に理解する上で有用なモデルである。
③ 医療技術の高度化を促進するために考案されたモデルである。
④ 生物生態学的モデルへの批判を背景に生まれたモデルである。
⑤ クライエントの健康や疾病に責任を持つのは医療従事者とみなすモデルである。
① スピリチュアリティを最も重視するモデルである。
間違いです。生物・心理・社会の3つを重視します。
② クライエントを包括的に理解する上で有用なモデルである。
これが正解です。
③ 医療技術の高度化を促進するために考案されたモデルである。
間違いです。疾病を生物的要因だけでなく、個人の心理的要因や社会的要因を含めて総合的に判断するモデルなので、医療技術の高度化を促進するために考案されたモデルではありません。
④ 生物生態学的モデルへの批判を背景に生まれたモデルである。
間違いです。生物心理社会モデルは、生物生態学的モデルではなく、生物医学モデルへの批判として誕生しました。
⑤ クライエントの健康や疾病に責任を持つのは医療従事者とみなすモデルである。
間違いです。医学的な側面だけではなく、心理的側面および社会的側面からのアプローチを行う必要がありますので、医療従事者だけが健康や疾病に責任を持つわけではありません。
第3回 問130
生物心理社会モデルに共通する考え方を含んでいるものとして、適切なものを2つ選べ。
① DSM-5
② HTPテスト
③ 洞察の三角形
④ Cannon-Bard 説
⑤ 国際生活機能分類(ICF)
① DSM-5
正しいです。
② HTPテスト
間違いです。HTP(Tree-House-Person)テストは、バック(J.N.Buck)によって考案された家と樹木と人物を描くパーソナリティ検査です。
③ 洞察の三角形
間違いです。洞察の三角形は時間と転移関係を精神分析的に表したもので以下の三角形です。
・クライエントの過去(親との関係)
・クライエントの現在の日常場面における人間関係(転移外の現在の関係)
・面接室でまさに「今・ここ」でクライエント‐セラピスト関係において生じているもの(転移関係)
④ Cannon-Bard 説
間違いです。キャノンバード説は脳が刺激を知覚することで感情体験と身体反応が同時に喚起されると主張する説(感情の中枢起源説)です。
⑤ 国際生活機能分類(ICF)
正しいです。
第5回 問38
生物心理社会モデルに関する説明として、誤っているものを1つ選べ。
① 心理的要因には、感情が含まれる。
② 生物的要因には、遺伝が含まれる。
③ 社会的要因には、対処行動が含まれる。
④ 多職種連携の枠組みとして用いられる。
⑤ 生物医学モデルへの批判から提案されたモデルである。
選択肢③が誤りです。
次の記事
次は、社会心理学の様々な理論について。
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