更生保護制度の概要は以下の記事で。
ここでは公認心理師国家試験に出題されやすい、保護観察中の一般遵守事項と特別遵守事項について見ていきましょう。
更生保護法第51条
保護観察対象者は、一般遵守事項のほか、遵守すべき特別の事項(特別遵守事項)が定められたときは、これを遵守しなければならない
医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づく特定の犯罪的傾向を改善するための体系化された手順による処遇として法務大臣が定めるものを受けること(専門的処遇プログラム)
一般遵守事項
一般遵守事項はすべての保護観察対象者が遵守しなければならないもので以下の通りです。
②保護観察官及び保護司による指導監督を誠実に受けること
③保護観察に付されたときは、速やかに、住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長にその届出をすること
④届出をした住居に居住すること
⑤転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を受けること
特別遵守事項
特別遵守事項は、個々の保護観察対象者ごとに、それぞれの問題性に応じて定められ、例えば以下の専門的処遇プログラムを受ける等があります。
・覚せい剤事犯者処遇プログラム
・暴力防止プログラム
・飲酒運転防止プログラム
過去問
第2回 問113
更生保護の業務及び制度として、誤っているものを1つ選べ。
① 収容期間を満了して矯正施設を出所した人に対する緊急の保護制度
② 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に対する医療観察制度
③ 社会内処遇を円滑にするための地域社会の理解や協力を求める犯罪予防活動
④ 施設内処遇を受けている人を収容期間満了前に社会内処遇を受けさせる仮釈放制度
⑤ 緊急通報への迅速な対応ができるように地域的に定められた範囲を巡回監視する活動
① 収容期間を満了して矯正施設を出所した人に対する緊急の保護制度
正しいです。これは更生緊急保護のことです。
② 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った人に対する医療観察制度
正しいです。
③ 社会内処遇を円滑にするための地域社会の理解や協力を求める犯罪予防活動
正しいです。
④ 施設内処遇を受けている人を収容期間満了前に社会内処遇を受けさせる仮釈放制度
正しいです。
⑤ 緊急通報への迅速な対応ができるように地域的に定められた範囲を巡回監視する活動
誤りです。巡回監視活動は警察官の役割です。
警察法第2条には「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ることをもつてその責務とする」と規定されています。
第1回 問56
保護観察制度について、正しいものを2つ選べ。
① 保護観察の特別遵守事項は変更されることがある。
② 刑事施設からの仮釈放の許可は保護観察所長の決定による。
③ 保護観察処分に付された少年は少年院送致になることはない。
④ 保護観察中に転居する場合、同一都道府県内であれば保護観察所長に届け出る必要はない。
⑤ 少年院仮退院者の保護観察を継続する必要がなくなった場合、地方更生保護委員会が退院を検討する。
① 保護観察の特別遵守事項は変更されることがある。
正しいです。特別遵守事項は個々に定められるものですから変更されることもあります。
② 刑事施設からの仮釈放の許可は保護観察所長の決定による。
間違いです。仮釈放の許可は地方更生保護委員会が行います。
③ 保護観察処分に付された少年は少年院送致になることはない。
間違いです。遵守事項が守られない場合などは少年院送致になることがあります。
④ 保護観察中に転居する場合、同一都道府県内であれば保護観察所長に届け出る必要はない。
間違いです。7日以上の転居や旅行は保護観察所長に届け出なければなりません。
⑤ 少年院仮退院者の保護観察を継続する必要がなくなった場合、地方更生保護委員会が退院を検討する。
正しいです。
第1回(追試)問115
保護観察において受講が義務付けられた、医学、心理学、教育学、社会学その他の専門的知識に基づく、特定の犯罪傾向を改善するための体系化された手順による専門的処遇プログラムに該当しないものを1つ選べ。
① 暴力防止プログラム
② 飲酒運転防止プログラム
③ 性犯罪者処遇プログラム
④ 暴力団離脱指導プログラム
⑤ 薬物再乱用防止プログラム
選択肢④が正解です。
第3回 問67
21歳の男性A。
Aは実母Bと二人暮らしであった。
ひきこもりがちの無職生活を送っていたが、インターネットで知り合った人物から覚醒剤を購入し、使用したことが発覚して有罪判決となった。
初犯であり、BがAを支える旨を陳述したことから保護観察付執行猶予となった。
保護観察官がAに対して行う処遇の在り方として、最も適切なものを1つ選べ。
① 自助の責任を踏まえつつ、Aへの補導援護を行う。
② Bに面接を行うことにより、Aの行状の把握に努める。
③ Aが一般遵守事項や特別遵守事項を遵守するよう、Bに指導監督を依頼する。
④ 改善更生の在り方に問題があっても、Aに対する特別遵守事項を変更することはできない。
⑤ 就労・覚醒剤に関する特別遵守事項が遵守されない場合、Aへの補導援護を行うことはできない。
① 自助の責任を踏まえつつ、Aへの補導援護を行う。
正しいです。
② Bに面接を行うことにより、Aの行状の把握に努める。
誤りです。Aに直接面接します。
③ Aが一般遵守事項や特別遵守事項を遵守するよう、Bに指導監督を依頼する。
誤りです。保護観察官が指導監督します。
④ 改善更生の在り方に問題があっても、Aに対する特別遵守事項を変更することはできない。
誤りです。特別遵守事項は変更できます。
⑤ 就労・覚醒剤に関する特別遵守事項が遵守されない場合、Aへの補導援護を行うことはできない。
誤りです。特別遵守事項が遵守されるよう、さらに補導援護を行います。
第3回 問123
保護観察所の業務として、不適切なものを1つ選べ。
① 精神保健観察を実施する。
② 仮釈放者に対する保護観察を実施する。
③ 遵守事項違反による仮釈放の取消しを行う。
④ 保護観察に付された者に対する恩赦の上申を行う。
⑤ 少年院に入院中の少年に対する生活環境の調整を実施する。
選択肢③が誤りです。仮釈放の許し・取消しは、地方更生保護委員会が行います。
第4回 問24
保護観察所において生活環境の調整が開始される時期として、正しいものを1つ選べ。
① 家庭裁判所の審判が開始される時点
② 医療及び観察等の審判が開始される時点
③ 矯正施設から身上調査書を受理した時点
④ 矯正施設において仮釈放(仮退院)の審査を始めた時点
⑤ 矯正施設から仮釈放仮退院を許すべき旨の申し出が行われた時点
選択肢③が正解です。
仮釈放に至る手続きは
(1)矯正施設(=刑務所)の長から(保護観察所が)身上調査書を受理
(2)保護観察所で生活環境調整を開始
(3)法定期間の経過
(4)地方更生保護委員会による審理
(5)仮釈放の許可
(6)仮釈放
第4回 問69
16歳の男子A、高校1年生。
万引きにより逮捕され、少年鑑別所に収容された後、家庭裁判所の審判により保護観察処分となった。
Aは、審判終了後すぐに 母親Bとともに保護観察所に来た。
Aの居住する地域を担当している保護観察官Cが、初回の面接を行うことになった。
審判直後であり、家庭裁判所からは、氏名、年齢、非行名、遵守事項に関する意見など、最小限の情報が届いている。
Cの初回面接における対応方針として、最も適切なものを1つ選べ。
① 特別遵守事項を設定する
② 担当する保護司が同席できるよう手配する
③ 保護処分の決定に対する抗告について説明する
④ 関係構築を優先し、家族関係や生育歴についての質問は控える
⑤ 裁判所において既に 確認されているため、事件内容についての質問は控える
選択肢①が正解です。
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次は、裁判員制度について。
裁判員にえらばれたことある?
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