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【知覚心理学】共感覚、奥行き知覚、錯視、錯覚

知覚心理学 知覚&認知
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知覚心理学とは

知覚心理学は、視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、深部感覚、内臓感覚、運動感覚、平衡感覚、時間知覚などの人間の知覚を研究する学問です。

知覚の中でも特に「視覚」を研究対象にしています。

知覚心理学の元祖と呼ばれるゲシュタルト心理学、そして密接に関係している心理物理学を見ていきましょう。

ゲシュタルト心理学

知覚を研究対象にした心理学といえば、ゲシュタルト心理学です。

ゲシュタルト心理学では、知覚の体制化(図と地の概念、プレグナンツの法則)というような視覚に関する法則が見出されています。

知覚の体制化は、視覚情報はまとまって捉えられるということでしたね。

心理物理学

心理物理学は知覚心理学と密接に関わっています。

詳細は以下の記事で。

【心理物理学】弁別閾とフェヒナーの法則
心理物理学(精神物理学)は、ドイツのライプチヒ大学の物理学教授であったフェヒナー(G.T.Fechner)によって開発された、心と身体の依存関係を調べる学問です。弁別閾心理物理学では、外的な刺激と内的な感覚の対応関係を測定...

様々な知覚

共感覚

共感覚とは、ある1つの刺激に対して通常1つの感覚として感じるはずが同時に別の感覚も生じることです。

例えば、文字に色が見えるとか、音に色を感じるとか。

このような感覚は詳しいメカニズムは分かっていませんが、成人よりも特に児童に生じやすい感覚です。

錯視

ミュラー・リヤー(Müller-Lyer)錯視

ミュラー・リヤー(Müller-Lyer)錯視は、以下の有名な図形です。

ミュラー・リヤー(Müller-Lyer)錯視

どう考えても下が長く見えますが、実は同じ長さというあれです。

ミュラー・リヤー(Müller-Lyer)錯視

エビングハウス錯視

エビングハウス錯視

オレンジ色のマルの大きさは、どう見ても左側の方が大きく見えます。

でも同じ大きさです。

エビングハウスは、あの「心理学の過去は長いが歴史は短い」の人です。

ヴント錯視

ヴント錯視

2本の赤線は平行線ですが、少し内側に引っ張られて見えませんか?

ヴントは、世界初の心理学実験室を開設したヴィルヘルム・ヴントですね。

へリング錯視

へリング錯視

こちらは、2本の赤い平行線が膨らんで見えますよね?

へリング錯視は、ドイツの心理学者エヴァルト・ヘリングにより1861年に報告されました。

ポンゾ錯視

ポンゾ錯視

2つのオレンジ色のマルは同じ大きさですが、線に近い方が大きく見えます。

地平線に近い月が異様に大きく見えるアレです。

ポンゾ錯視は、イタリアの心理学者マリオ・ポンゾによって1913年に報告されました。

奥行き知覚

人間の視覚は、網膜に投射される像は2次元の平面画像なのに3次元の世界を知覚できます。

写真やテレビなども平面画像なのに奥行きを知覚していますね。

奥行きの知覚に利用される手がかりは、単眼性のものと両眼性のものに分けられます。

単眼性

陰影:陰影は奥行きを感じさせます
重なり:ある対象が別の対象の一部を覆っている場合に、覆っている面は覆われている面よりも手前に、覆われている面は背後に知覚されます
相対的大きさ:対象の大きさを知っている場合に、見えている大きさを手がかりにその対象までの距離を推測します
線遠近法:平行線は遠ざかるほど、その幅が狭くなり一点に収束します
大気遠近法:遠くにあるモノはぼやけたり色がかすんで見えたり明瞭度が低下します
きめの勾配:一様な模様が広がっているとき、遠くにあるほどきめが細かくなります
運動視差:移動している観察者が対象を注視するとき、注視対象よりも遠くにあるモノは観察者と同じ方向に移動しているように見え、注視対象よりも近くにあるモノは観察者とは逆方向に動いているように見えます

両眼性

両眼視差…人間の眼は左右に離れているので左右の目の網膜には少しずれて投影され、この差を脳内で処理することで奥行きを知覚します
輻輳:両目で一点を凝視するときに、動眼筋の緊張度が奥行き手がかりとなります

輻輳(ふくそう)とは、寄り集まることですね。シュテルンの輻輳説は覚えてますか?

幻覚

幻覚には、視覚的な幻視、聴覚的な幻聴、嗅覚的な幻嗅、身体感覚や皮膚感覚による体感幻覚などがあります。

アルコールや薬物などで意識が朦朧としているときに幻覚は起こりますが、意識がはっきりしているときでも統合失調症などの場合は幻覚が起こります。

ナルコレプシー(過眠症)の患者には、入眠時幻覚と呼ばれる寝入りばなに出現する幻覚があります。

過去問

第1回(追試)問4

ゲシュタルト心理学において中心的に研究され、現在も継続して研究されているものとして、最も適切なものを1つ選べ。
① 学習
② 感情
③ 態度
④ 知覚
⑤ 集団特性

選択肢④が正解です。

第1回 問150

Müller-Lyer 錯視の図形に関して、矢羽根(斜線)の角度が錯視量にどのように影響を与えるのかを調べるために実験を行うことになった。
矢羽根が内側に向いた内向図形を標準刺激、矢羽根が外側を向いた外向図形を比較刺激とし、この2つの刺激を接するように横に並べて呈示する。
標準刺激の主線(水平線分)の長さは90mm、比較刺激の主線の長さは可変、標準刺激も比較刺激も矢羽根の長さは30mm、矢羽根の角度は15°、30°、45°、60°とした。
実験参加者は標準刺激の主線の長さと主観的に同じ長さになるように、比較刺激の主線の長さを調整する。
この実験を行う方法として、正しいものを1つ選べ。
① 標準刺激の位置を左に固定する。
② 矢羽根の角度が異なる刺激をランダムに呈示する。
③ 主線の太さを矢羽根の角度によってランダムに変化させる。
④ 図形の背景の色を矢羽根の角度によってランダムに変化させる。

この実験の意味は、以下のような図形で長さが同じになるように被験者が比較刺激の方の長さを調整するというものです。

ミュラー・リヤー(Müller-Lyer)錯視

① 標準刺激の位置を左に固定する。
間違いです。標準刺激が左か右かでもしかしたら被験者への刺激が異なる可能性があるので、固定するのは好ましくありません。

② 矢羽根の角度が異なる刺激をランダムに呈示する。
これが正解です。矢羽根の角度が錯視量にどのように影響を与えるのかを調べるわけですから。

③ 主線の太さを矢羽根の角度によってランダムに変化させる。
間違いです。主線の太さは関係ありません。

④ 図形の背景の色を矢羽根の角度によってランダムに変化させる。
間違いです。背景色は関係ありません。

第3回 問6

奥行きの知覚における両眼性の手がかりとして、正しいものを1つ選べ。
① 陰影
② 輻輳
③ 重なり
④ 線遠近法
⑤ きめの勾配

単眼性の手がかりはいろいろありますが、両眼性の手がかりといえば輻輳か両眼視差です。

① 陰影
間違いです。単眼性です。

② 輻輳
これが正解、両眼性です。

③ 重なり
間違いです。単眼性です。

④ 線遠近法
間違いです。単眼性です。

⑤ きめの勾配
間違いです。単眼性です。

第3回 問47

知覚や意識について、誤っているものを1つ選べ。
① 共感覚は、成人より児童に生じやすい。
② 幻覚は、意識清明時にも意識障害時にも生じる。
③ 入眠時幻覚がみられる場合は、統合失調症が疑われる。
④ 事故などで、四肢を急に切断した場合、ないはずの四肢の存在を感じることがある。

① 共感覚は、成人より児童に生じやすい。
正しいです。

② 幻覚は、意識清明時にも意識障害時にも生じる。
正しいです。

③ 入眠時幻覚がみられる場合は、統合失調症が疑われる。
間違いです。入眠時幻覚と言えば統合失調症ではなくナルコレプシーです。

④ 事故などで、四肢を急に切断した場合、ないはずの四肢の存在を感じることがある。
正しいです。

第4回 問12

知覚の老化の説明として正しいものを1つ選べ。
① 温度感覚の閾値が下がる。
② 嗅覚の識別機能が低下する。
③ 高音域に先行して低音域の聴取が困難になる。
④ 近方視力が低下する一方、遠方視力は保たれる。
⑤ 明所から暗所への移動後における視覚の順応時間が短くなる。

① 温度感覚の閾値が下がる。
間違いです。閾値が上がって鈍感になります。

② 嗅覚の識別機能が低下する。
正しいです。

③ 高音域に先行して低音域の聴取が困難になる。
間違いです。高音域から聞き取れなくなります。モスキート音とか。

④ 近方視力が低下する一方、遠方視力は保たれる。
間違いです。遠方視力が保たれるわけではありません。

⑤ 明所から暗所への移動後における視覚の順応時間が短くなる。
間違いです。明所から暗所への移動による順応のことを暗順応といいますが、順応時間は長くなりなかなか順応できなくなります。

第4回 問124

ヒトの知覚の特徴として 最も適切なものを1つ選べ。
① 欠損した情報を補わずに知覚する。
② 感覚刺激が継続して提示される場合、感度は一定である。
③ 音を聞いて色を感じ取るなど、一つの物理的刺激によって複数の感覚知覚が生じることがある。
④ 対象の特性を保持して知覚できるのは、対象からの感覚器官に与えられる刺激作用が変化しない場合である。

① 欠損した情報を補わずに知覚する。
間違いです。欠損を補いながら知覚します。下の図が「知覚心理学」と読めるのは、視覚情報を補っているからです。

視覚情報の補完

② 感覚刺激が継続して提示される場合、感度は一定である。
間違いです。感覚刺激が継続すると馴れてしまって(馴化)感度は低下します。
馴れてしまう「馴化」が起こります。同じニオイに晒されるといつの間にか感じなくなります。

③ 音を聞いて色を感じ取るなど、一つの物理的刺激によって複数の感覚知覚が生じることがある。
正しいです。これを共感覚と言います。

④ 対象の特性を保持して知覚できるのは、対象からの感覚器官に与えられる刺激作用が変化しない場合である。
間違いです。刺激作用が変化しないと馴化によって知覚しにくくなっていきます。

次の記事

次は、様々な錯覚を見ていきましょう。

【知覚心理学】マガーク効果、マッカロー効果、フラッシュラグ効果、マッハバンド、ストループ効果
マガーク効果マガーク効果は、マガーク(H.McGurk)とマクドナルド(J.MacDonald)によって報告されました。この効果は、特定の音節を発音する口の動きに、別の音声を重ねた映像を呈示した場合に、視覚情報・聴覚情報の...

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