症状
記憶障害は次のような症状として表れます。
・大切なものをどこにしまったかわからなくなる
・他人が自分のものを盗ったという
・作り話をする
・何度も同じことを繰り返して質問する
・新しいことを覚えられなくなる
記憶検査
医学的リハビリテーション
環境調整
記憶への負担が少ない環境を作り、記憶しやすくします。
反復訓練
PQRST法(Preview予習、Question質問、Read精読、State記述、Testテスト)などがあります。
ペグ法
覚えたいものを「ペグ(釘)」で固定しておく方法です。
例えば、以下のパーソナリティ理論の内容を覚えたいとします。
ギルフォード(J.P.Guilford):13因子
クロニンジャー(C.R.Cloninger):7因子
ペグ法ではまず数字をモノに見立てます(見え方でも音でも、なんでもいいです)。
3:耳
6:ろくでなし
7:斧
キャッテルはキャット(猫)として、猫がろくでなしにロウソクを垂らされているとイメージして覚えます。
ギルフォードは耳にロウソクを垂らされているイメージで覚えます。
クロニンジャーは忍者が斧を振り回しているイメージで覚えます。
この記憶術のすごいところは、最初はイメージを思い出さないと数字が出てきませんが、何度も思い出しているうちにイメージを飛ばしても思い出せるという点です。
外的代償法
メモリーノート、手帳、リスト、アラーム、ICレコーダーなどの補助具を用いて記憶機能を補います。
領域特異的な知識の学習
日常的機能に関係ある情報の獲得に焦点をあてた方法で、人名学習、新しい語彙の獲得等に用いられます。
手がかり漸減法
用語の定義を示した後、1文字ずつ追加して、正しく反応できるまで続け、その後、手がかりが1文字ずつ取り去られ、最終的には手がかりなしで正しい反応が得られるようにする方法です。
コルサコフ症候群
ビタミンB1の欠乏が原因で起こるのがウェルニッケ脳症で、主要な症状は、眼筋麻痺、失調、精神障害ですが、こちらに末梢神経症状が加わったものがコルサコフ(Korsakoff)病と呼ばれます。
コルサコフ症候群では、最初の「記銘」の障害が大きいとされ、「保持」がある程度保たれています。
前向性健忘&逆向性健忘
前向性健忘:新しい記憶の障害(健忘患者の典型像)
逆行性健忘:古い記憶の障害(失われる期間は数時間~数十年)古い記憶が保たれ新しい記憶であるほど障害が顕著
このような時間による記憶成績の差を時間的勾配と呼びます。
過去問
第2回 問84
脳損傷後に記憶障害を呈する者に対して、スケジュール管理のためのメモリーノートの使用を勧めることがある。
これに該当するリハビリテーション手法として、正しいものを1つ選べ。
① 環境調整
② 反復訓練
③ 外的代償法
④ 内的記憶戦略法
⑤ 領域特異的知識の学習
選択肢③の外的代償法が正解です。メモリーノート以外にも手帳、リスト、アラーム、ICレコーダーなどの補助具を用いるのが外的代償法です。
第1回(追試)問9
記憶障害について、正しいものを1つ選べ。
① WMS-R は記憶障害の性質を分析できる。
② Korsakoff 症候群は記憶の保持ができない。
③ 獲得された過去の記憶が想起できないことを前向性健忘という。
④ 想起障害は手がかりによって思い出すことができる場合を指す。
⑤ 体験が想起できないエピソード記憶障害は潜在記憶の障害である。
① WMS-R は記憶障害の性質を分析できる。
正しいです。WMS-R(Wechsler Memory Scale-Revised)はウェクスラー記憶検査です。
② Korsakoff 症候群は記憶の保持ができない。
誤りです。コルサコフ症候群では記憶保持はある程度できます。
③ 獲得された過去の記憶が想起できないことを前向性健忘という。
誤りです。これは逆行性健忘です。
④ 想起障害は手がかりによって思い出すことができる場合を指す。
誤りです。認知症等の想起障害では手がかりを示されたとしても想起できることはありません。
⑤ 体験が想起できないエピソード記憶障害は潜在記憶の障害である。
誤りです。エピソード記憶は顕在記憶(記憶にあることが意識される記憶)です。
意味記憶やエピソード記憶は顕在記憶、手続き記憶は潜在記憶です。
次の記事
次は、言語障害について。
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